勿論の所、弦十郎の手ではどうしようもなく、翼とクリスと同じく側に置いてもらう事に。
そこには厳しい修行があったものの、少女は乃愛と名前を貰い、居場所も貰った。
これ以上にない幸せを手に入れた。
性格も少しずつ変わり、自ら意見も言えるようになった分、些細な事で翼やクリスと喧嘩してしまう事もあった。

『翼の意地悪ッ！』
翼『何もそんな言い方しなくてもいいだろッ！？』
ク『やめて二人とも…ッ！』
『クリスもそうッ！いつも翼の味方ばっかりして、私を除（の）け者にしてッ！』
ク『そんなつもりじゃ…』
翼『おいッ！何もクリスに当たらなくたって『もう放っておいてッ！』あ、乃愛ッ！？』

二人を突き放し、乃愛は走った。
影護（かげもり）の潜水艦は広く、翼とクリスは仲直りするべく必死になって捜した。
ようやくみつけた場所は…倉庫の奥の隅っこ。
膝を抱えて顔を隠していたが、二人が近付いて来た事には気付いていた。

翼『乃愛…悪かったよ…』
『…………』
翼『うう……クリスぅ…』

黙ったままの乃愛をどうしていいのかわからず、翼はクリスに助けを求める。

ク『あのね乃愛、少し前から私と翼が乃愛に言わなかった事があるのは…』

「これの為だったの」と、クリスは小さな箱を乃愛の前に出した。

『……これは？』
翼『もうすぐ、乃愛とオレ達が出逢った日になるだろ？だから内緒で、この日を乃愛の誕生日にしようって決めてたんだ』

一年前のこの日、見ず知らずの乃愛を助けてくれた。
名前と居場所を与えられ、今度は誕生日も祝ってくれる。
それを知った乃愛は、嬉しさのあまり声が出せないでいた。

ク『今までごめんね。本当は当日にしてあげたかったけど、今言わなかったら喧嘩したままになっちゃうから』

ゆっくりと箱を開けると、小さな花をモチーフにしたペンダントだった。

『、…謝るのは…あたしの、ほうだよ…ッ』

二人の気持ちを知らないで、突き放す言い方をしてしまった事を後悔した乃愛。
しかし翼とクリスのサプライズは、まだ終わっていなかった。

翼『それだけじゃないぞ。ほら、三人お揃いだッ！』

なんと翼は「どうせ乃愛がするなら、三人一緒がいいだろ？」 と、個人のお祝いをなぜか三人でしようと言い出したのだ。

ク『それじゃ誕生日じゃなくなるって言ったのに…』
翼『とか言いながら、クリスも買ってただろ？』
ク『…仲間外れは嫌』

なんやかんやでクリスも同じものを買っていた。
ちなみに三人の花は色違いで、翼は青、クリスは赤、乃愛は緑である。




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