姉妹とは・後日談

朝餉を終えて暫く何もする事がなかった為、書物でも読もうかと考えていたら、小姓が葉月に声をかけてきた。
何やら小寺の家老が播州から進物を持って来たので、その挨拶に訪れたのだとか。
その辺りは一葉が双葉を代役にでもして表へ出させるので、その間に双葉には申し訳ないが書物を借りる事にした。

「…………」

だが再び葉月は歩みを止める事になった。
朝は姉の、今は妹の部屋の前で。

双「剣丞…さま、ぁ…」

何処か火照ったような甘い声。
そんな妹の声を今まで聞いた事がない。
言われた剣丞本人は尾張に帰っていないが。

「(まさか双葉が、あの剣丞に恋焦がれているとは…)」

仮にも剣丞は久遠の夫。
自ら想う分にはいいと、双葉は気持ちを抑えきれなかったのだろう。
事が事だけに入らないほうがいいのだろうが、そんな葉月の背後に一つの影。

一「…葉月?」
「っ!?」

この瞬間、葉月は声を上げなかった自分を褒めたいと思ったとか。
振り返ると何処かいぶかし気にした一葉がいた。
お互い口を開かないまま先に動いたのは一葉で、葉月が開けずにいた襖をあろう事か開けて入る。

「ね、姉さん!?」
一「…………」
双「あ……」

慌てて追いかけるも、事情を知らない一葉が双葉の姿を見てしまい固まった。

一「…………」
双「…………」
一「ああ、その……すまん」

何処か揺らいだ瞳が合う。

双「お、お姉……様…?」
「あの…あたしも…いる、んだけど…」
双「は、葉月お姉様…」

非常に気まずい空気の中、一葉は播州からやって来た家老の話をした。

一「いつものように代役を頼みたいと思ったのだが…」
「あ、その…お邪魔…だったか……なんて…」

葉月に至っては誰もいない明後日の方向を向いている。




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