姉妹とは・後日談

「…珍しい事もあるんだね」

長い廊下を一人で歩いている葉月は、ふと思った。
それは数日前から朝餉あさげの仕度をしている双葉の事。
決して料理が下手というわけでもなく寧ろ上手なほう。
そんな双葉が力を入れてまで更に料理に熱中しているのだ。

「ま、考えられるのは…前に尾張から来たあの人だろうけど」

思い出すのは久遠の隣にいた男性。
わけあって久遠と共に行動していて、現在は夫婦になっていると聞いた。

「名前は確か……新田剣丞、だったかしら」

見送る時だって表の門まで行ったぐらいだ。
あの双葉がまさか…

「……ん?」

葉月が姉の一葉の寝室前を通った時だった。
確かこの時間は双葉が一葉を起こしに行っている筈…なのだが。

一「良いではないか。幼い頃はこうして二人一緒に…」
双「幼い頃はお寺に預けられていましたから、私お姉様と一緒の布団で寝た覚えなどございません…っ」
「…………」

ぴたり、と動きを止めてしまった葉月。
何だか聞いてはいけないものを聞いてしまっている気がした。
この時代は女性が多く、ましてやそのような気が全くないとも限らない。
例えそれが家族、姉妹であっても。
そして葉月が動きを止めた理由はもう一つある。
それは今の内容で、一葉と一緒に寝た相手が自分に当てまるから。
とは言っても決してやましい意味で寝たのではなく、ただ純粋に普通に寝ただけだ。

一「はて、そうであったか。なら改めて、幼い頃に温めきれなかった姉妹の絆をば…」
双「ひゃぁああーっ!!」
「っ、姉さん!何してんの!!」

葉月とて恥じらいはあるが、このまま可愛い妹が姉の犠牲になるのを見過ごせなかった。
しかし中ではそのような行為ではなく、やはり一葉がいつもの冗談をかましていただけだったが。




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