姉妹とは

「いるんでしょ、幽」
幽「はいはい、ここにおりますよー」

縁側から庭を眺めていた葉月が声をかける。
何処からともなく現れた幽は、いつもと相変わらず飄々としていた。

「屋敷から姉さんの気配がしないんだけど」
幽「おや。気付いておられましたか」
「あたしだって一応武士の端くれだよ」

我らの将軍は、またもや屋敷を抜け出しては街のゴロツキから金銭を巻き上げているらしい。
呆れた姉だ。
妹の義秋、双葉は箱入り娘となっていて。

幽「公方様と双葉様の間にお生まれの葉月様は、さぞかし苦労されましょう」
「幽だって苦労してるのに。いつもありがとう」
幽「突然何をおっしゃいますか葉月様。それがしは役目を担っているだけの事」

当然の事をしているだけ、と言いたいのだろう。

「なら、これからもよろしく頼むよ」
幽「御意」




その数刻後、戻って来た一葉に会いたいと言う長田と名乗った人物を待たせている間、一葉は面倒な事を葉月に言った。

「あたしが一葉の代わりをやれって?」
一「うむ。いつも双葉が代役をしているからな。偶には葉月がしてもよかろうて」
「だからって何であたしが…」

一葉はどうするのかと聞けば、自分は小姓にでもなりきるのだとか。
どうも面倒事は味方をも巻き込んで盛大に自爆でもしないとわかってくれないらしい。
しかし葉月は乗り気ではなかった。

一「そこまで拒む理由を聞いてもよいか?」
「双葉で気付かないようじゃあ、それまでの相手だったと言うだけじゃない」
一「言うのう」
「あたしの出る幕じゃないってだけだよ」

葉月の言葉に「だが一理ある」と言いながら、結局は双葉に代役を任せる事になった。
なったものの…




.
2/4ページ