その名が君を変える

一「久遠はどうだ?」
久「わ、我か!?我は……む、難しいな。そもそも我よりも身近にいる人物がよいのではないか?」
一「双葉と幽か。双葉は兎も角、幽はむしろ余に『これ以上妹君に妙な通称を付けるのはやめて下され』と言われての」

いきなり通称を考えろと言われても、そうすぐには出てこないだろう。
それに今まで一葉が新しい通称を何度か提案したが、主に幽から却下されてきた。
こうして久遠と一葉が話している間、紅葉は隅でその様子を見ていた剣丞に恐る恐る近付いて行く。

「…あの……剣丞、さん」
剣「どうしたの?」
「…」

黙り込んでしまった紅葉に優しく微笑んだ剣丞は「ゆっくりでいいよ」と言いながら頭を撫でた。

「…?」
剣「あ、ごめん。癖みたいなもので」
久&一「……」
剣「…何か、ごめんなさい」

自然と撫でていた手と感じた二つの視線。
久遠は呆れた表情で、一葉に至っては何処か驚いたようだった。
それは紅葉の反応が僅かながらにあったのだ。
そしてそれに気付いたのは一葉だけ。
感情や表現を抑え込むようになってから、暫く見ていなかった変化がそこにあった。

一「(ほう…これなら…)剣丞、お主なら何と付ける?」
剣「お、俺!?」

久遠の次に話を振られた剣丞だったが、すぐに考え始めた。
二人の姉には"葉"が付いている。
それなら。




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