その名が君を変える

一「本来は明るく活発な子じゃったのに、まだ幼かった余が気付き、駆け付けた時は…既に遅かった」

子供だった昔と言えど、将軍の地位を持った一葉が来れば皆頭を下げた。
しかし、その妹となればどうだ。
双葉は寺に預けられ、何の対処もない紅葉はこの仕打ち。
姉妹三人で暮らした記憶は、今と比べて殆どないに等しい。

一『人として外道な行いをしている事に気付かんか?次も妹にこのような事をしてみろ』

その時は貴様らの頸を斬り落としてくれる。

子供らしからぬ気迫に、その場にいた者は息を詰まらせたとか。
一葉が昔を思い出していると、紅葉が近寄って来た。

「一葉姉」
一「……なんじゃ?」

自身を落ち着かせる為に一度目を閉じ、間を空けてから聞いた。
しかし紅葉の口からは一葉にとって予想しなかった言葉が出た。

「一葉姉は悪くないよ。私が駄目な子だったから、一葉姉と双葉姉に迷惑かけて「やめぬか」……」

少し強い口調で制止した。

一「何が駄目だ?何が迷惑だ?そのような言葉、もう一度言ってみよ。次は余とて怒るぞ」
「……ごめん…なさい…」

消えそうな声で謝罪する紅葉を見て、少し言い過ぎたかと後悔した。
昔の明るかった頃はこうではなかったのに。

『私、一葉姉よりも強くなるよ!一葉姉と双葉姉を守れるように!』

一「…余が言いたいのはな、紅葉を迷惑な存在だなんて一度も思っておらん。余らは姉妹であろう。むしろ迷惑をかけるべきじゃ」
「……」
一「久遠、剣丞。"紅葉"は嫌味を込めて付けられた呼び名だと余は思っておる。言いたい事はわかるな?」
久「うむ」
剣「ああ。一葉なら、もっといい名前を付ける」
一「ふっ、よくわかっておるの。しかし"これ"がないと何と呼んでよいのかわからん」

通称がないと何とも言えない。
正式に決まるまで紅葉とは呼んでいるが…いかんせん、よく思えないのも事実。




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