色んな意味で疲れた雷騎は、女の子が宗朗を連れて来るまで近くの椅子に座って待つ事にした。

「ほんと…道場は何処に行ったんだよ」

少し前に思っていた事を口にする。
あれだけ真面目に先代から受け継いだ道場を大事にしていた幼馴染みに何があったのか。
そう言えばもう一人の幼馴染みは…

千「あら、雷騎じゃない。久し振りね」

そう、徳川千。
雷騎や宗朗が「千姫」と呼んでいる女の子。
しかし振り返った雷騎は千を見て思わず顔が引き攣ってしまった。

「ああ、お久し振り…です……千姫。お、お変わりないよう…ですね」

服以外は。
さっきの子と同じじゃないか。

千「当たり前じゃない。今まで何処行ってたのよ」
「修行だよ。おかげでここに来るまで時間が掛かった」

皆は元気かと聞きたい所だが、さっきの女の子について聞く。

名前は柳生十兵衛。
空から降って来た謎の少女。
記憶がない。
何故か宗朗の事を「お兄ちゃん」と呼ぶ。
以上。

「何が『以上』だよ」
千「は？」
「いえ、何でもありません」

千姫に逆らうと恐ろしい事になり兼ねん。
それこそ嶽御雷（たけみかづち）をくらわされる。
…死ぬぞマジで。

「半蔵はどうしてる？」
千「半蔵？ああ、それなら」
半「おひい様！何処におられますか、おひい様ー！」
「…あんまり迷惑かけんなよ」

服部半蔵。
徳川家、千姫の身の回りの世話をするお庭番。
面倒見のいい人。

半「雷騎さん！？いつお帰りになられたんですか！？」
「ただいま半蔵。ついさっきだよ。しかし相変わらずだなお前も」
半「いえ、私が好きでやっている事ですから」
「で、千姫を探してるんじゃなかったのか？」
半「ああ、そうでした！」

ゴソゴソとして何処からか取り出したソレは、千姫や十兵衛の来ているメイド服と少し違うデザインの物。

半「言われていた物が出来上がりました」
千「うん。上等じゃない」

褒められたのが余程嬉しいのか体をくねらせている。
付け加えて言うならば、千姫の事が好きで好きでたまらないドMな半蔵。
ちょっとそっちの気があるんじゃないかと疑わざるを得ない時がある。




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