どうして、こうなってしまったのだろう。
カシンの呪術によって体が操られ、己の精神が打ち負けてしまったヨシテル。
ノブナガを初めとする武将達を自らの手で倒し、挙げ句…









弟の義昭をも…









所変わって二条御所。
今はまだ昼間だと言うのに空は薄暗い。
数日前のあの事件から、一向に空が晴れる気配がないのだ。
ヨシテルはいくら剣聖と詠われていても、所詮は人の子。
空はまるで、今のヨシテルの心を表してるかのよう。

「………………」

そんな空をヨシテルは御所の庭を眺められる縁側から見上げていた。
その姿に"白"はどこにもなく、あるのは"黒"。

「…雨、か」

ゴロゴロと今にも雷が鳴りそうな天候に、ヨシテルはある部屋へと向かった。
その部屋には蝋燭（ろうそく）どころか灯りが一つもない。
あったのは部屋に似つかわしくない、鎖と血と…

「雨が降りそうですよ、ノア」

ノアと呼ばれた少女は、壁から繋がれた鎖によって両手を縛られていた。
抵抗したのか手首から血が滲（にじ）み、畳を赤黒く染めていた。




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