ﾉﾌﾞ「…どうした、恐れたか？」

その刃はノブナガを斬る事はなかった。
ノブナガが憎くないと言えば嘘になる。
だけど…

「憎いよ…凄く憎い……けど、こんなっ…！」

こんな事をヨシテルは望んでいない筈だから。

ﾉﾌﾞ「…甘いな」
「それでもいいよ…私は。きっと、どこかの誰かに…似たんだろうね」

その誰かさんは、先に逝ってしまったけど。

ﾉﾌﾞ「…言っておったぞ」




ﾖｼ『ノアには人を斬れない。この乱世には珍しく、そして甘い。けれど、それがあの子の優しさ。だが、そんなノアは…




私にとって友であり、誇れる存在でもある』




「……、…」
ﾉﾌﾞ「最期の最後まで、お前を信じていたんじゃな」

ノアの横を通り過ぎたノブナガに続き、ヒデヨシとトシイエも行く。

「(将軍と……友達……)」

これ以上にない嬉しい言葉だった。

「私も…ヨシテルと友達でいられた事を…誇りに思うよ…！」

力の抜けた手から刀が滑り落ちる。

「ヨシテル…！ヨシテルっ…！」

血の気を失い、冷たくなったヨシテルの体を抱き締めた。

「ぅ……ああっ…！」

激しくなる雨がノアの嗚咽（おえつ）を掻き消す。
雨はいつまでも、強く降り続いた。




END