今から何年も前の話になる。
かつて華琳の母親が健在だった頃、一人の男がいた。
その男の真名は雷騎。
雷騎は華琳や春蘭、秋蘭よりもほんの数年だけ長く生きている。
当時は華琳がまだ幼かった事もあるのか、よく雷騎と一緒にいた。
その事から本当の兄妹のように仲が良く、また春蘭と秋蘭も「雷騎兄」「兄者」と慕っていた。
そんな雷騎が、ある日突然姿を消した。
何の音沙汰もなく、何の前触れもなく。
そしていつしか華琳がこう言った。









華『雷騎の事は忘れましょう』









あれから何年待っても、いつまで経っても雷騎は戻って来なかった。
待てば待つだけ、淡い期待を裏切られた瞬間の絶望は大きい。
それを知っている華琳だからこそ、そう言ったのだ。
裏切られるくらいなら、いっそ自ら忘れてしまえばいい。
そう…全ては雷騎の責任なんだと。




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