？「大丈夫ですか？」
「あ、はい。ありがとうございます」

見知らぬ女性から怪我はないかと心配される乃愛。
かすり傷一つないので、それに答えると「それはよかった」と返ってくる。

「あの…どちら様？」
？「っと、失礼しました。私は…姓は関、名は羽、字は雲長と申します」
「か…かん………はい？」

どうも耳の調子がおかしいと勘違いし出した乃愛は、もう一度名前を聞いてみる。
だが何度聞いても、彼女は"あの"関羽だと言うではないか。
でも何で女性になっているのか。

？「いたのだ！」
？「あ、愛紗ちゃん…待ってよ…！」

草を掻き分けて更に女性二人（うち一人は少女）が出て来た。
愛紗と呼ばれた関羽は二人に「遅いぞ」と言う。
…乃愛の目の前にいるのは関羽ではないのか？

「関羽…さん。一ついいかな？」
関「はい」
「貴女の名前は関羽さんじゃないの？さっき呼ばれたのは…」
？「お姉ちゃんは真名も知らないのだ？」
「真名って？」
？「えっとね、その人の本質そのものを現している神聖な名前の事だよ」

だから真なる名前。
それが真名。
それと許しを得た者以外が安易に真名を呼ぶと、その人を汚す行為となって罰せられても文句は言えないらしい。

「そうなんだ。じゃあ気をつけないとね。私は乃愛。二人の名前は？あ、真名じゃないほうね」

関羽がここにいる時点で何となく予想は出来ていた乃愛。
やはりと言うべきか、あの『劉備』に『張飛』が目の前にいる。
乃愛は確信した。
自分は何らかの理由でこの世界にトリップした。
しかも自分がいた時代よりも前の世界に。
しかし何故、目の前の三人は男性ではないのかが疑問だった。

劉「でも乃愛さんって、愛紗ちゃんと同じ髪なんだね」
張「服だけ変えて、後ろから見てもきっとわかんないのだ」
「長さも同じぐらいだし……ああ、そう言えば」
関「どうかされましたか？」

乃愛を襲おうとしていた三人に、例の名を呼ばれた事を思い出す。

「あの人達は私を『黒髪の山賊狩り』って言ってたけど、何か知ってる？」
劉「あっはは…」
張「それは愛紗の事なのだ」
「…関羽さんって山賊を狩ってたの？」
関「いや、あれは…」




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