しかしどう考えても身の危険を感じたし、あれは正当防衛だ。
むしろそうであってほしい。

男「待てって言ってんだろ！」
「っとに…しつこいなあ！」

乃愛の足は決して遅くはないが、相手もそれなりに早い。
いい加減に諦めてほしいと思っていた時、一人の男がこんな言葉を言った。

男「『黒髪の山賊狩り』なら逃げてんじゃねぇぞ！」
「はあ！？」

確かに乃愛の髪は黒い。
幼い頃から伸ばしてきたロングヘアーは腰辺りまである。
しかし、それと山賊狩りと何が関係しているのか。

「しまっ…！」

次第に木の生い茂る森へと入るも、どう振り切ろうかと考えながら走っていたのが仇となり、躓（つまづ）いて転びそうになる。
体勢を整えるも、追い付いた男達は乃愛を囲むようにして行く手を拒む。

男「さあ、観念しな」
「…誰が」

今、乃愛が持っているのはバイトへ持って行った鞄のみ。
中に入っている物は知れている。
不利な状況にどうする事も出来ない。
しかしそこに、男達の後ろの草陰から何かが飛び出して来る。

？「はあぁっ！」
男「な、何だお前…ぐはっ！」
「え…？」

飛び出して来たのは女性で、薙刀に似た長い武器を振るう。
乃愛が呆気に取られている間に、その女性は素早い動きで男達を倒していく。
峰打ちとは言え、痛そうな攻撃にほんの少しだけ同情した。




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