「乃愛」
「…華琳？」

庭に添えられている椅子に座っていた乃愛。
華琳は「こんな所にいたのね」と言いながら近づいて来る。
机を見ると、草で作った舟が数多く出来上がっていた。

「何をしているの？」
「ああ、これ？この前城下に行った時、子供達と約束したんだ」

次に会う時は楽しみにしててね、と乃愛は街の子供と話したそうだ。
この時代に合う遊びと言ったら、これぐらいしか思い浮かばなかった。

「器用なのね。でもこんなに…」

華琳が言うのも最もだった。
正確には数えていないが、ざっと見ても軽く20は超えている。
その中の一つを手に取った華琳は隅々まで見る。

「言ったからには守らないといけないでしょ。それに何でか、私を見ると子供達が駆け寄って来るのよ」
「ふふ…それだけ貴方が慕われていると言う事よ」
「…だといいな」

「よし出来た」と最後の一つを仕上げると、潰れない様に風呂敷に包む乃愛。
明日にでもすぐに持って行けるように。

「そう言えば華琳、私に何か用事でもあった？」
「あら、用がなければ話しかけてはいけないのかしら」
「そうじゃないけど…」

華琳の事だから何か重要なのではと思っていたらしい。
しかし当の本人は、休憩がてら通っただけだと言う。

「正直、貴方にも武があれば言う事なかったのだけれど」
「いきなり何？そんな事言われても困るよ…」

ない袖は振れぬって言うじゃん。




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