夏侯三姉妹の事情

朝起きて鏡を見て、すぐに冬蘭の仕業とわかった春蘭。
そのままの勢いで部屋を飛び出したのだった。
もしかしたら既に誰かに見られている可能性がある。
主の華琳は勿論の事、桂花に見られると得意の嫌味を言われるのが目に見える。

………………それだけはっ!!

「と、とにかく!冬蘭を見かけたら捜していたと伝えてくれ!」
「(それやとまた逃げると思うんやけどなあ…)けどウチはこれから仕事があるさかい。見かけたらでええか?」
「む。すまんな」

後ろ手に振り立ち去る霞。
すると背後で誰かの気配がして振りかえると、そこには秋蘭。

「……姉者、またか」
「しゅうらああん…」

何とも情けない魏の大剣、夏侯惇。
しかし、それも姉妹の間柄と言うべきか。
何があったか内容を言うまでもなく、すぐに状況が理解出来る。

「しかし、いくら悪戯好きとは言え…幼少の時から何も変わらないな、冬蘭は」

昔を懐かしむ秋蘭に春蘭もさっきまでの勢いが失われていく。

「だ、だけど…今回のは一段と酷過ぎではないか…」
「……」
「秋蘭?」
「ん、ああ、そうだな。だが、その前に顔を洗って来たらどうだ?」

流石にいつまでもそのままというわけにもいかない。
姉を見かねた一人の妹は背中を押した。
そして春蘭が去った後、秋蘭は言った。

「いつまでも隠れてないで出て来ないか、冬蘭」
「あれ、バレてた?」

物影から出て来たのは春蘭が捜していた冬蘭だった。

「当たり前だ。何年の付き合いだと思っている」
「んー、春姉はともかく今度は秋姉にも見つからないようにしないといけないか」

この時、秋蘭は思った。
その力を何故戦場で使わないのだろうと。

「冬蘭」
「何?秋姉」
「いつまで子供でいるつもりなんだ。昔とはわけが違うぞ」




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