夏侯三姉妹の事情

曹操が納める魏の国。
黄巾党の残党の後始末から新たな盗賊の討伐。
城に残った者は新兵の訓練や街の警邏。
それらに追われながらも、いつもと変わらない日々を送っていた。

「とぉおおおおらぁああああん!!!!」

そう、いつもと変わらない日々を。









ドタドタと荒い音を立てながら、その人物は城中を走り回っていた。
すると向かいから張遼事、しあ出会でくわす。

「お、何や何や?惇ちゃん何をそない慌てとる……ん…」

霞は走って来た人物、春蘭を見て固まった。

「おお、霞か!冬蘭を見なかったか!?」
「だっははは!!」
「笑うなあ!!」
「い、いや!だって、なあ?あっはは!!」
「だっても何もないだろう!私が一番わかっている!」

突然笑い転げる霞。
原因は春蘭の顔に書かれている落書きだ。
両頬に猫の髭のようなものが三本づつ極太に書かれているだけならまだしも…
額にはでかでかと【脳筋】、挙句には両目をこれでもかと塗りたくられていた。
つまりは…顔面真っ黒。
最早これが春蘭とわかるのは服装と口調だけだろうと思うぐらいに。

「あっはは…ああ、すまん。せやけどあのお譲も相変わらずやなあ。んで?」
「は?何が「んで?」だ?」
「何でここに来るまでに洗い落とさなかったんやろうと思ったんやけど」
「…………あ」




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