翡翠の薔薇19
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がりがりがり・・・・カスッーーー
「っぶねぇギリギリ…」
ちょうどインクが無くなったと同時にデカい絵は描き終えた
描き終えたが一瞬で部屋の様子が変わるわけではなかった
「……あとは、これを戻すくらい…だな」
また動きの鈍い体を動かして絵画を戻す
「あ、やべ」
一息ついて完成品を見ると額縁に血がついてしまっている
何か吹くものはないかとズボンのポケットやさらしに挿してある持ち物を探ってみると一枚の紙切れが出てきた
「ん…?」
こんな紙切れいつの間に持ってたんだ?
まだ血の止まらない手を服で拭いて紙をあまり汚さないように気を付ける
丁寧に二つ折りにされている紙を広げると何枚かの紙がひらひらと落ちた
手元に残った紙と落ちた紙を見てやっと思い出した
「…これか……」
ワタシが描いたイヴとギャリー
そしてギャリーが描いてくれたワタシ
3人で仲良く笑っている
まるで写真のような大切な一枚
残りの紙はまだ何も描かれていないけど3人をそれぞれ一人ずつまるで肖像画のように描くのもいいかもしれない
「…そうだ、メアリーも描いてあげなきゃ」
3人で思い出した
メアリーもここに入れてあげなきゃ仲間はずれみたいじゃないか
今すぐ描いてあげたいが手はまだ血が止まらないし感覚も戻ってきてない
早く温まってギャリーと一緒にどんなポーズでどの位置にするかを決めて…
「…メアリーに渡したい」
4人一緒に仲良く笑い転げている絵を完成させてコピーとかしたら人数分配れそう
「…その為にもまず…ギャリーを起こさなきゃね」
起きた時より口と頭は動くようになってきたが手足の感覚や動きは鈍い
汚してしまった額縁を拭くものと言ったらやっぱり布が一番最適
「しゃあない、冒険に汚れはつきものだし…」
特にお気に入りの服でもないから今着ているタンクトップで拭いてしまえ
時間をかけて拭き終えて無駄にデカい絵を見上げる
次に部屋を見渡すが特に何も起こらない
「……………まじかよ……」
この絵を描きながらコレがあっていればな、なんて心のどこかで思っていた
けど何も変化はなかった
じゃぁ、ただ、時間を無駄にしたってワケか
「…なんでだよ……」
こんな予想外で危険な展開の中で、唯一の希望だったのに…
時間の無駄遣いさせるくらいなら、最初から答え言ってくれりゃいいじゃんか!
「ややこしいんだよっ…このままじゃ、このままじゃ、ギャリー、ギャリー…」
出てくる涙を拭おうとしたけど血まみれの手じゃ涙拭いても血で濡れるし…意味ないや
「…こんなものっ!!」
もう怒りと焦りの感情が溢れでてくるのを止める気は毛頭ない
感情に任せて目の前の絵画、デカく描いた下手くそな暖炉の絵に血を塗りたくった
壁に掛けなおした絵の届く範囲まで、ちょうど暖炉の中の火を血で塗ってやろう
両手を紙に擦り付け、指先の傷が摩擦で痛いけど気にしない
とにかくこの絵に八つ当たりしないと気が済まない
「……はぁっ、はぁっ…はぁ…」
絵の暖炉の中を血まみれに塗りたくって、疲れた
両手を紙についたままの状態でズルズルとその場に座り込む
紙や額縁、壁を汚すけどどうでもいい
項垂れて目を閉じる、一度自分を落ち着かせるために長い溜息をついた
ーーーぱち、
小さいけど、何かが弾けるような音が聞こえた
よく耳を澄ませば部屋中にその音が響いている
目を開けてみると床、床につけている自分の手、左右からの灯りに照らされて手の間に向かって伸びている影
「!!」
勢いよく立ち上がるとバランスを崩して転んで尻餅をついた
そのままの状態で部屋を見渡すと左右に暖炉がある
「………」
左右の暖炉と目の前の自分が描いた暖炉の絵を何回か交互に見つめてあることに気が付いた
左右に出現した暖炉は白い煉瓦(レンガ)、牧は黒だからこれはたぶん炭なのか?
暖炉の火は赤
目の前の絵画も黒のペンしかなかったから色のついてないシンプルな暖炉に血で塗った赤い火
あと足りなかったのは色だったんだ…
「………そうだ……ギャリー……」
忘れかけていた最初の目的を思い出してギャリーの元へ向かう
運良く、現れた暖炉は本棚の近くだったから安心する
枕代わりにしていた本と上着を移動するあたりに投げ、次にギャリーを引きずる
そして無事、暖炉の傍に寝かせ直した後安堵の溜息をついて暖炉の灯りに照らされたギャリーの顔を見つめた
この後、最悪な選択を迫られるなんてこの時のワタシは考えられなかった
今思えばこの選択どちらを選んでもどっちが正しかったのか誰にも分らないものだ
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