翡翠の薔薇18
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緊張で顔が強張るのを感じながら目の前にある地面から突き出た蔓を見ていた
視界いっぱいに散らばる光が見えるけどこれはいったい何だろう…?
それよりも今は後ろのドアが気になる
目の前の景色を見る限りどうやらこの通路の氷はなくなったみたいだ
とは言っても、この通路の寒さは変わらない
恐る恐る後ろを見てみるがドアが半分開いていること以外は何もいない
ただ同じように通路全体がきらきらと光っている
「………」
…何かあるかもしれない、だけど行かないと進まない
また、…あのピエロがいるかもしれない………でも……でも、行かないとギャリーが死んでしまう
いつの間にか動かないギャリーを強く握ってしまっていた
力を緩めようとした時このまま「痛いわよっ」なんて言って起きてくれたらいいな…、とかバカな事考えてしまう
結局力なんて緩めてやるもんか、なんて変な意地張ってわざと力を入れた
脇の下に腕をとおしてギャリーを引きずってドアに向かう
「…あんた、……重い…っ」
人を引きずりながらだと全く進まない…
短い距離を長い時間かけてやっとドアに手が届く所まで来た
半分開いているドアから中を覗くと本棚とか机や椅子はあるけどあの青い人形もピエロも何もない
「………」
怪しい
見るからに何も無いってのが怪し過ぎる
でもここしか道がないもんな…
「…うしっ」
行くか、何かあったらギャリーを差し出せばすべては解決…(殴
通れるようにドアを開けてギャリーを引きずって中に入る
部屋の中は流石にあの通路より暖かいと思う
悴み過ぎているのかよくわからないけど
ふと、風のような柔らかい空気の流れを感じた気がした
「……あー、冷気か」
振り返ってみると開けっ放しのドア
きっと通路の冷気が流れ込んできてるんだろう
ドアを閉めてまたギャリーを引きずって部屋の奥に行く
ギャリーを起こさなければいけないのもそうだけど…
その前に何かあってもいいように右の本棚の近くまで連れて行ったほうが少しでも安全だろう
「…ふぅーっ」
本棚の近くまで来て一息つく
何気なく下を見ると傷だらけの真っ赤な手
「……いつ怪我したんだ?」
たぶん…ドアノブを殴っているときにでもやっちゃったんだろうな
…あ、そしたらギャリーのコートとかドアに血がついちゃったかも
「いっか…」
やっちまった事は仕方ない
ファッションと命を天秤にかけたら誰でも後者でしょう
ちらりと隣を見るけど相変わらずギャリーはぐったりとして動かない
それにしても、と動かないギャリーを見て思ったこと
意外とギャリーの足が見た目より引きずってみると長いから予想より体力を削った気がする…
まず人を引きずる事なんて滅多にないことなんだけどなぁ…
寝かせてあげようと上着を脱いだところでハタと気づく
「………本……やべぇ…」
デザイアーと名乗った男…あのピエロから逃げる時に持って来た本がない
恐らくさっきの寒い通路に置いて来てしまったと思うが…
……いかん、よく覚えてない…(蹴
とりあえず本棚から一冊拝借しようかな
「……これでいっか」
目について取った本は”コーヒーの歴史”というタイトル
美術に関する本ならこの空間の本棚を調べた時にいろいろ見たけど、コーヒーについての本はこれが初めてだな
「…まぁ、いい夢みろや」
構わずその本に畳んだ上着を敷き枕代わりにする
今まで大変だったんだからせめて夢の中でいっぱいコーヒーを味わうといい
「あとは…温めてやんないと、だな」
何か掛け布団の代わりになる物があったらいいけど…
生憎上着は枕代わりに使ってるしギャリーはもうコート着てるけどこの部屋の温度じゃまだ温まらないだろうな
何もないだろうけど…何かあったらいいなぁ…
ぐるりと部屋を見る
何もないただの机に小さな椅子
青いような紫色の壁紙
やたらデカい何も描かれていない真っ白な作品
本棚は二つとも本がぎっしり
特に変わったところは何も…
「………ん?」
二つとも本がぎっしり?
あれ、確か一冊拝借してるはずでしょ?
「一冊くらい隙間があるハズじゃ…」
不審に思って本棚を見ると抜き取ったはずの本の場所に少し分厚い、黄ばんでいて古そうな本がある
「………」
見覚えしかない本をじっと見つめ手に取る
てきとうなページを開くと大きな何も描かれていない額縁だけの挿絵
その横に綺麗な字で説明らしきものが書いてある
”空間と絵画は ふたつで ひとつ
絵画ひとつだけでは意味しか生まず、
空間ひとつだけでは主張しか生まない
ふたつあり、ひとつになってこそ存在できるのである”
「…はあ?」
つまり、何が言いたい?(半ギレ状態
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