ヒース・リヴィングトンの物語


テーブルシティ近郊の古い遺跡発掘現場。

「見てくれヒース!! ついに……ついに掘り当てたぞ!!」

埃まみれの泥の中から、ディイが宝物でも掲げるように持ち上げたのは、鈍い光を放つ小さな「ヨロイの破片」だった。
表面には、洗練された植物の蔦(ツタ)のような美しい彫模様。光の角度を変えれば、まるで極楽鳥の羽のようにうっすらと玉虫色に輝いている。

「これだよ! この高貴な意匠! 相棒(カルボウ)を紅蓮の騎士……グレンアルマに進化させる『いわいのよろい』だ!!」

息を荒くして目を輝かせるディイの横で、ヒースはまじまじとヨロイを覗き込んだ。

「へえ……すごく綺麗だね。彫刻も細かいし、玉虫色の光沢なんて高級感があるよ。……それに、禍々しい気配や嫌な重たさは全然感じないな」

ヒースはリヴィングトン家で「呪い」の気配には人一倍敏感に育っていたが、その目の前にあるヨロイからは、恐ろしい呪物の嫌な波動は一切伝わってこなかった。

(うーん……まあ、呪い独特の『嫌なプレッシャー』がないってことは、普通の古代遺物だよね? 8割方、ディイの言う通り『いわいのよろい』で間違いないんじゃないかな)

「だろ!? ヒースの『呪いセンサー』が反応しないなら100%安全だ! よーしカルボウ、お前の夢が叶うぞ!!」
「カルッ!」

テンション爆上がりのディイが、カルボウの頭上に大事そうにヨロイを掲げた。
ヨロイが光を放ち、カルボウの体を包み込む。

「来るぞ……! 黄金の兜を纏った、炎の騎士グレンアルマが……っ!」

手に汗握り、息を呑んで見守るディイとヒース。
眩い進化の光が収まり、そこに現れたのは——

ゴォッ!!!!

禍々しいまでに燃え盛る、深遠な青い炎を両腕に纏った、紫と黒の騎士だった。

「……」
「……」

シーーーーーンと静まり返る現場。
冷たい山風が、ふたりの間を吹き抜けていく。
そこに立っているのは、どう見ても「紅蓮の騎士(グレンアルマ)」ではなく、「怨念の剣士(ソウブレイズ)」だった。
両腕の青い炎の剣が、シャキーンと寒々しい音を立てている。

「……ねえ、ディイ」

ヒースが引きつった笑顔で、そっとディイの顔を覗き込む。

「グレンアルマって……腕から青い炎の剣生えてたっけ?」
「で、出るわけないだろ!! 『いわいのよろい』じゃなくて『のろいのよろい』じゃねーか!!! っていうかこれ、呪いの気配なかったんだろ!!?」

「カルッ!?」と当のソウブレイズも、自分の青い腕を見て「あれ?」という顔をしている。

「いやっ、でもホラ! 植物の蔦模様とか、角度で変わる玉虫色の輝きとか、すっごく品があって『呪い』っぽくなかったし! 8割方は祝いの品に見えたんだって!」
「残り2割の『のろい』が100%主張してきてんだよ!! どうすんだよ、俺の夢のグレンアルマが、なんか凄腕の暗殺者みたいになっちゃったじゃん!!」
「かっこいいよ! すごく似合ってるよソウブレイズ!!」
「慰めになってねぇええええ!!」

ギャーギャーと騒ぐふたりの横で、新しくソウブレイズになった相棒は、試し斬りとばかりに近くの岩を青い炎でスパッと綺麗にふたつに切り裂いて見せた。

「……あ、切れ味はバツグンみたいだよ、ディイ」
「そういう問題じゃねええええ!!」

夕暮れの遺跡に、男子ふたりの悲鳴とソウブレイズの困惑した鳴き声が虚しく響き渡るのだった。

(……そしてこの日の夜。帰宅したヒースは、トレニアおじい様から『見た目の品格に騙されるな』と、懇懇と厳しい“呪い見極め指導”を受けることになるのを、彼はまだ知らない——)



おまけ

ディイ「俺のグレンアルマが……」
ヒース「でも見て! 構えがすごく様になってるし、青い炎もクールだよ!」
ディイ「かっこいいけど! 俺がなりたかったのはキャノン砲ぶっ放す重騎士なの!!」
ヒース「じゃあ……手から剣を飛ばす練習してみる……?」
ディイ「そういうことじゃねえよ!!(涙)」
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