共依存



平穏な幸せを表面に纏って、根底にはいつも満たされない思いが流れていた

結婚はとうに諦めていた

適齢期と言われる時期を逃し、晩婚と言われる時期も逃し、出産を諦めたとしての結婚のタイミングも逃し

今からでは相手は二週目の人ばかりだ

一度目の結婚で現実を知り、自分が求めるものは何かの最小公約数を明確にした人を相手に私で成立する気がしない

特別な事はなくていい、当たり前の日常の中に穏やかな幸せを感じましょうと言われたら、この私の中に渦巻く赤黒い欲望はどうなってしまうのか

とても静かにしてくれていそうにない


仕事のチームのメンバーの吐き出しをバイザーとして受け止め、来週からまた頑張れそうですの言葉を聞き、ひとまず安堵し帰宅の電車に乗る

神経から来る目の疲れを休めようとしばらく目を閉じた後、最寄り駅のアナウンスを聞き目を開けると、窓ガラスに落ちくぼんだ目をした疲れた自分が映っていた

なんか老けたな

余計に疲れが増した気がした

自分へのご褒美が必要だとスーパーで割引シールを探しながら物色した

清算を終え外に出て、二手に分かれる道を街灯のない近道へ歩き出すと

「ちなつさん」

後ろから声を掛けられた

「え?」

振り向くと職場の契約社員の田崎君だった

「あー 田崎君 あれ? 家、こっちじゃなかったよね」

「あ、覚えててくれたんですか? そうなんすけど、引っ越したんです」

「あ、そーなの? 奇遇じゃん ここのスーパー結構安いしおすすめだよ」

「ふふ、ちなつさんプライベートでもそんな親切なの? ね、安いですね、今、俺も買ってきました」

「あ、そうなんだ 気付かなかった」

「ところで、ちなつさん、そっち暗いから危ないですよ こっちから行きましょ」

「大丈夫 いつも通ってるし」

「駄目ですって、女性は力弱いんだから、何かあったら危ないでしょ」

「え、女性のジャンルに私も入れてくれてるの?(笑)」

「何言ってんすか 女性でしかないでしょ 危ないからこっち行きましょ」

街灯のある方の道を一緒に歩いた

「俺がいない日でもこっち歩くんですよ? いいですか?」

「う~ん」

「いかにもこっち歩かなそうな返事じゃん 駄目だよ? 約束して」

「はいはい、わかったよ」

「もう、怪しいなぁ」

「はは(笑) てか、まだ田崎君もこっち?」

「うん、こっち」

しばらく歩いてもまだ「じゃ、俺こっちなんで、お疲れさました」とならない

しまいにゃ、うちに着いてしまい

「あ、私ここだから、お疲れさま」

と言うと

「あ、俺もここです」

とシレっと言う

「え? あ? ここ? 一緒じゃん!」

「そっすねー」

あんまり驚いてない

「せっかくだから、一緒にご飯食べませんか?」

「え、うち、ちょっと汚いし無理」

「じゃあ、うち来ます?」

「え、 や、 悪いし、いいよ」

いきなり男の人の部屋に行くのもどうかなとか思って断ると

「俺、信用ないってことですか?」

とか急に真面目に言うから、や、そういうことじゃなくて、とかなんとか、誤魔化し切れず結局、信用してくれてるなら断る理由ないですよね?と、一緒にご飯を食べることになってしまった

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