【ご都合主義シリーズ】超年下彼氏に溺愛される話6の続きの続きの続き
職場の懇親会でみいひが自分のような体型を抱き心地が良さそうと言ったのを聞いて、抱いて欲しくなり、仕事の悩みの相談を装いバーに連れ出し強いカクテルで酔わせてラブホテルに連れ込んで、勢いで押し切りみいひを抱いた
感じるみいひがかわいくて満たされたのも束の間、目が覚めるとみいひはいなくて部屋はシンとして冷えていた
とりあえず、ホテルに着いて早々に宮崎の名刺をみいひの名刺入れから出して預かっておいたのは良かった
仕事の要件なら事務所の電話でいつでも話せるのにわざわざ名刺なんて渡して下心見え見えだ
それはさておき、順番は狂ってしまったがみいひに付き合って欲しいとちゃんと伝えようと思った
しかし、
みいひは、年上の自分が距離を取って良人を守ってあげなければという考えと、体を繋げてしまって今までよりももっと良人を求めてしまう気持ちとの板挟みに苦しんでいるところに、良人と新卒女子職員が仕事のやり取りをしながら笑い合っているのを見て、嫉妬に心乱され
良人のことを考えなくて済むように近隣支店の営業マン宮崎とホテルに行ってしまう
その帰り、みいひがホテルから出て来るのを待っていた良人は、自分は体を繋げられたことうれしかったのにみいひさんは違ったんですねと責めた後、悲しい目をして去って行ってしまった
みいひは仕事に燃えていた
良人のいるこの支店に異動してきた半年前は入れられるだけ新規の訪問を入れていた
良人が、そんなに入れたら潰れますよと心配してくれたことがあるくらいに
しかし、最近はある程度、顧客が定着してきたので新規の訪問は減らしていた
が、ここ数日は半年前と同じように目いっぱい新規の訪問を入れている
忙しければ良人のことを考えないで済む
高田さん(新卒女子職員)と良人が業務連絡で話しながら笑い合っているのを見ないで済む
没頭というよりは逃避であったが顧客は着々と増え、問い合わせや手続きに追われる日々
直行直帰も極力増やし、ほぼ職場にいない日々
宮崎さんから連絡があって、みいひさんって体の関係になっても彼女ヅラして連絡してきたりしないんですねと言われたりなんだり
自由でいいなって思ったタイプですか?さみしいなって思ったタイプですか?って言ったりなんだり
それどっちが正解なんですか、こわいなもう(笑)
え、別に審査とかじゃないし(笑)
とか
あぁ、この表面を滑る余裕感が大人の恋愛ってやつなのかしら
とか思いながら、職場に戻ったら、デスクの上に良人からのメモがあった
「報告書のことで確認があります」
良人のデスクを見るが良人はいない
帰社して来てからでいいかと事務処理していたが良人は戻らない
就業間近になって係長がホワイトボードの良人の欄に「直帰」と書いていた
じゃあ明日だなと思っていたら、翌日出社したらホワイトボードは「直行」に変わっていた
まずいよね、どんどん締日近付いてるよね、言われてすぐ直せる間違いなのかな?時間掛かるやつだったら締め切りに間に合わなくなるよね?
総務に番号を聞いて良人の業務携帯に連絡した
「おつかれさまです、大谷です」
「おつかれさまです」
「報告書の件なんですけど、お時間あります時、打ち合せお願いしたいのですが、いつでしたらよろしいですか?」
「そうですね、今日でしたら、就業時間あたりであれば」
「わかりました では、お待ちしております」
はぁ、なんか知らんが久々に電話で良人の声聞いて鼓膜が勝手に喜んでるし
就業時間間際、またホワイトボードの良人の欄に「直帰」の文字
終礼が終わりほとんどの職員が帰った後、ほどなくして良人が戻って来た
とりあえず、こちらのミスなのだろうから、こちらから馳せ参じた
「金井さん(良人の名字)、おつかれさまです お忙しい中、お時間頂きすみません 報告書、何か間違いなどありましたでしょうか?」
「おつかれさまです」
なんか満足気で、さわやかな良人
「大谷さん、ちょっと報告書のことで今一度確認なんですが、この訪問回数の欄なんですけど、訪問何回目っていう表記と、何回目訪問っていう表記が混在してるんですよ」
「え (細か)(しかし、なんか雑な性格が出た感じのやつで恥ずいな)(とりあえず時間取ってもらってるんだから、真面目にいこう) すみません、10分頂けますか? 修正します」
「わかりました 終わったら声掛けてください 私も確認しますんで」
みいひが自席に戻り急いで修正しているのを満足そうに見守る良人
5分後
「金井さん、お待たせしました 修正しました」
「わかりました じゃあ、一緒に画面見て確認しましょうか 上からいきますよ うん、うん、はい、はい、合ってる、合ってる、大丈夫、大丈夫、はい、はい、はい オッケ おつかれさまです」
「ありがとうございます! すみません、お引き止めしちゃって おつかれさまでした」
「いえいえ、確認できて良かったですね おつかれさまでした」
「(なんなの上から目線かわいー)」
みいひがタイムカードを切って帰ろうとすると業務携帯に着信があり、画面を見ると先日、顧客を紹介してくれた近隣支店の営業マン宮崎だった
「はい 大谷です 宮崎さん、おつかれさまです 先日、ご紹介頂いたお客様の件でなにかありましたでしょうか?」
「いや、特にそういうことでもないんですけど、ちょっとお食事でもどうかなって」
「あ、、(この前の流れだと、またホテルとか誘われるのかな?告白とかされたりしないよね、ホテル行っておいて告白断るとかいう変な流れになったら面倒だな)」
とか考えてたら「確認あります」とメモが差し出されて、見ると良人だった
「すみません、宮崎さん、ちょっと一旦保留音流れます」
「金井さん?」
「確認あるんで残ってください」
「え? あ はい わかりました 宮崎さんお待たせしました すみません、ちょっと報告書の確認で残ることになりまして、次回またよろしくお願いいたします 失礼いたします」
「すみません、また表記が統一できてないとこなどありましたでしょうか?」
「そうじゃないんですけど、ちょっと帰りながらいいですか」
「? はい」
良人が自分のデスクに戻り鞄を持って出入口に向かったので、みいひも退社の支度をして後に続いた
外に出て、先に歩く良人の顔を斜め後ろから伺うが表情からは何も読み取れない
横に並んで「なんなんですか?」という意味で顔を見ると
良人は見られていることを知りながらもみいひを見ず
「ちょっと付き合って欲しいところがあるんで」
前を向いたまま言い駅に向かった
駅に着くとタクシー乗り場に行きタクシーのドアが開くと
「どうぞ」
とみいひに先に乗るよう促した
どうぞって何よ?私、タクシー乗りたいって一言も言ってないし、とみいひは思ったが、よくわからない空気なので下手を踏まぬように黙って乗った
良人が行き先の住所を告げてタクシーは店でもなんでもないところで止まった
先に降りた良人に続きタクシーを降りると良人は目の前のアパートの一室の鍵を開け
「どうぞ?」
とみいひを中へと入るよう促す
どうぞってここどこよ、とか思いつつ良人を見ると
「俺んちなんで大丈夫です」
と
職場では自分のこと私って言うけど、プライベートでは俺呼びなのねとちょっと萌えつつも
あなたんちだと何が大丈夫なの?とか思うが
みいひはとりあえず中に入ってみた
「おじゃまします」
部屋中がほんのり良人のにおいで充満しているようで、ふくいくと吸い込んだ
良人も入ると照明を点け玄関の鍵を施錠した
「よいしょ」
とか言いながら靴を脱いで奥の部屋の照明を点ける
ベッドの横にサイドテーブル代わりのように置いてあるガラスのテーブルを部屋の真ん中にずらして、座布団を一つ置いて
「どうぞ」
と促す
「じゃ、失礼して」
と座る
良人は玄関の方のキッチンに戻って
「うちビールしかないですけど、いいですか~?」
とみいひのいる奥の部屋に向かって言う
「じゃあ、ビールで~」
とみいひはキッチンに向かって言う
良人はみいひの前にビールを1本置くとキッチンに戻って何やら電子レンジに掛けた
しばらくして
「どうぞ」
と肉じゃがと取り皿をガラスのテーブルに置いた
玄関の方に浴室や脱衣所があるのだろう
良人はもうTシャツとハーフパンツに着替えていた
「(わ~ かわい~)」
職場でのスーツ姿しか見たことがないみいひは、初めて見る良人のリラックスウエアに悶えた
「みいひさんも着替えますか? 俺ので良ければ貸しますよ?」
「え、いいの?」 ←すんなり受け入れることじゃない(笑)
「もちろん、もちろん」 ←普通、初めて部屋に入れた職場の人に部屋着に着替えることは勧めないので、全然もちろんじゃない
良人はこっち使ってくださいと脱衣所に案内してくれて、自分が着てるのと同じTシャツとハーフパンツを渡してくれた
着替えると洗剤のにおいと、そこはかとない良人のにおいに包まれてすごく落ち着いた
ハーフパンツがだいぶ緩いので紐を目一杯締めて結んだ
「ありがと なんか落ち着くわ」
「いえいえ 良かったですね」
満足気な良人
「じゃ、乾杯しましょうか」
「そだね」
「おつかれさまでーす」
「おつかれさまー」
「これ食べてくださいね」
肉じゃがの皿を押し出してくれる良人
「ありがと え、もしかして、自分で作ったの?」
みいひが取り皿に肉じゃがをよそいながら言うと
「もちろん」 ←別にもちろんでも何でもない
「えー すごいじゃん おいしそー」
「簡単ですよ」
とか言いながら余裕振るかわいい良人
「いただきまーす ん! これはうまい」
「良かったですね」
なんか知らんが一緒に喜んでくれる良人
ぐぴっとビールを飲んでいる
「うん このうまさ、良い嫁になるね(笑)」
「嫁かい(笑)」
「あはははは(ノリツッコミとかするんだ かわいー)」
「大谷さんも練習すれば作れるようになりますよ」
「(いや もう作れるんだが あ、さっき私がすごいって言ったから、私は作れないと思ったのか 褒められを全面的に受け入れてるのなんかかわいー)」
みいひがにっこり目で笑って良人の目を見ると、良人の顔がちょっと赤くなった
「(やばいな 普段、仕事の時は顔に出さないしクールにしてるけど、プライベートの良人君こんなか かわい過ぎる)」
良人は照れたのをごまかすようにグピっとビールを飲む
「ところで、こんな状況であれですけど、確認ってなんでしたっけ?」
「あ~」
「報告書だと締め切り明後日ですよね すぐ、直せるやつだといいですけど(汗)」
「あ それは大丈夫です 特に直すとこないんで」
「え? あ? そうなんですか? 確認あるって報告書じゃないんですね」
「じゃないです」
「えっと? そしたら、、 なんでしょう すみません、まだ仕事が未熟過ぎて自分で気付けてないです(汗)」
「あのですね、、」
「はい」
「宮崎さんでしたっけ? あの訳わかんない人」
「あー、宮崎さん? 近隣支店の (訳わかんなくはないけど)」
「近隣支店だかなんだか知らんけど」
「はは(汗笑) (なんか宮崎さんに対してトゲあるなぁ)」
「あの人、客の紹介エサにホテル連れ込むとかヤバい奴ですよ」
「あ~ それは、なんて言うか、別に無理強いされた訳じゃないんで」
「じゃ、なんなんですか? 行きたくて行ったと」
「え~ っと、そういうことでもないんだけど、、」
「じゃあ、どういうことなんですか」
「(説明しづら、、)」
「どっちも行こうとしてないなら行かないですよね 普通 今日だって、客のアフターケアの話装って、誘おうとしてましたよね、あの変な人」
「(変な人ではないが) あれは、私が宮崎さんから電話といえばそういうことかなって勝手に思い込んじゃっただけで、、」
「とにかく、あいつヤバいっすよ もう仕事の話って言われても行っちゃだめですよ? 危ないから」
「(え 子ども諭すみたいに言ってくれるの? なんか、ほっこしするー) 危ないっていうか、私、高校生とか処女とかじゃないし、おばちゃんだし、大丈夫だよ どうなっちゃっても」
「、、」
みいひの目を見ながら考えてるような顔をしてる良人
「?」
「、、」
「え? あ そんな深刻な話じゃないから大丈夫だからね? 大丈夫だよ 心配してくれてありがと」
笑顔を作って見せると良人は深い瞳でじっと見ている
あぁ、そうだね、君はそういう子だね
こういう時はこれが正解かなとか答えたりしない
でも、なにも言わなくてもあなたの気持ちがわかる気がする
自分を粗末にしてるのかなとか、本当は傷付いてるのかなとか、胸を痛めたり、もっと自分を大切にしてくださいとか思ってるんだよね
「大丈夫だよ ありがとう」
きれいな心で思ってくれた気持ちがうれしくて、良人の目に目で笑い掛けた
「みいひさん、いつもそうやって自分より人のこと考えて、、 どうなっちゃってもいいってことなんてないんだから、もう危ないことしちゃだめですよ? 約束できますか?」
みいひは、自分より自分を心配してくれてる良人のマジレスが、ツンと胸に染みて、涙がじわっとしてしまった
「約束?」
「約束」
涙が浮かんだ無垢な目で目を見て言うみいひに良人は子どもを諭すように言った
続く
感じるみいひがかわいくて満たされたのも束の間、目が覚めるとみいひはいなくて部屋はシンとして冷えていた
とりあえず、ホテルに着いて早々に宮崎の名刺をみいひの名刺入れから出して預かっておいたのは良かった
仕事の要件なら事務所の電話でいつでも話せるのにわざわざ名刺なんて渡して下心見え見えだ
それはさておき、順番は狂ってしまったがみいひに付き合って欲しいとちゃんと伝えようと思った
しかし、
みいひは、年上の自分が距離を取って良人を守ってあげなければという考えと、体を繋げてしまって今までよりももっと良人を求めてしまう気持ちとの板挟みに苦しんでいるところに、良人と新卒女子職員が仕事のやり取りをしながら笑い合っているのを見て、嫉妬に心乱され
良人のことを考えなくて済むように近隣支店の営業マン宮崎とホテルに行ってしまう
その帰り、みいひがホテルから出て来るのを待っていた良人は、自分は体を繋げられたことうれしかったのにみいひさんは違ったんですねと責めた後、悲しい目をして去って行ってしまった
みいひは仕事に燃えていた
良人のいるこの支店に異動してきた半年前は入れられるだけ新規の訪問を入れていた
良人が、そんなに入れたら潰れますよと心配してくれたことがあるくらいに
しかし、最近はある程度、顧客が定着してきたので新規の訪問は減らしていた
が、ここ数日は半年前と同じように目いっぱい新規の訪問を入れている
忙しければ良人のことを考えないで済む
高田さん(新卒女子職員)と良人が業務連絡で話しながら笑い合っているのを見ないで済む
没頭というよりは逃避であったが顧客は着々と増え、問い合わせや手続きに追われる日々
直行直帰も極力増やし、ほぼ職場にいない日々
宮崎さんから連絡があって、みいひさんって体の関係になっても彼女ヅラして連絡してきたりしないんですねと言われたりなんだり
自由でいいなって思ったタイプですか?さみしいなって思ったタイプですか?って言ったりなんだり
それどっちが正解なんですか、こわいなもう(笑)
え、別に審査とかじゃないし(笑)
とか
あぁ、この表面を滑る余裕感が大人の恋愛ってやつなのかしら
とか思いながら、職場に戻ったら、デスクの上に良人からのメモがあった
「報告書のことで確認があります」
良人のデスクを見るが良人はいない
帰社して来てからでいいかと事務処理していたが良人は戻らない
就業間近になって係長がホワイトボードの良人の欄に「直帰」と書いていた
じゃあ明日だなと思っていたら、翌日出社したらホワイトボードは「直行」に変わっていた
まずいよね、どんどん締日近付いてるよね、言われてすぐ直せる間違いなのかな?時間掛かるやつだったら締め切りに間に合わなくなるよね?
総務に番号を聞いて良人の業務携帯に連絡した
「おつかれさまです、大谷です」
「おつかれさまです」
「報告書の件なんですけど、お時間あります時、打ち合せお願いしたいのですが、いつでしたらよろしいですか?」
「そうですね、今日でしたら、就業時間あたりであれば」
「わかりました では、お待ちしております」
はぁ、なんか知らんが久々に電話で良人の声聞いて鼓膜が勝手に喜んでるし
就業時間間際、またホワイトボードの良人の欄に「直帰」の文字
終礼が終わりほとんどの職員が帰った後、ほどなくして良人が戻って来た
とりあえず、こちらのミスなのだろうから、こちらから馳せ参じた
「金井さん(良人の名字)、おつかれさまです お忙しい中、お時間頂きすみません 報告書、何か間違いなどありましたでしょうか?」
「おつかれさまです」
なんか満足気で、さわやかな良人
「大谷さん、ちょっと報告書のことで今一度確認なんですが、この訪問回数の欄なんですけど、訪問何回目っていう表記と、何回目訪問っていう表記が混在してるんですよ」
「え (細か)(しかし、なんか雑な性格が出た感じのやつで恥ずいな)(とりあえず時間取ってもらってるんだから、真面目にいこう) すみません、10分頂けますか? 修正します」
「わかりました 終わったら声掛けてください 私も確認しますんで」
みいひが自席に戻り急いで修正しているのを満足そうに見守る良人
5分後
「金井さん、お待たせしました 修正しました」
「わかりました じゃあ、一緒に画面見て確認しましょうか 上からいきますよ うん、うん、はい、はい、合ってる、合ってる、大丈夫、大丈夫、はい、はい、はい オッケ おつかれさまです」
「ありがとうございます! すみません、お引き止めしちゃって おつかれさまでした」
「いえいえ、確認できて良かったですね おつかれさまでした」
「(なんなの上から目線かわいー)」
みいひがタイムカードを切って帰ろうとすると業務携帯に着信があり、画面を見ると先日、顧客を紹介してくれた近隣支店の営業マン宮崎だった
「はい 大谷です 宮崎さん、おつかれさまです 先日、ご紹介頂いたお客様の件でなにかありましたでしょうか?」
「いや、特にそういうことでもないんですけど、ちょっとお食事でもどうかなって」
「あ、、(この前の流れだと、またホテルとか誘われるのかな?告白とかされたりしないよね、ホテル行っておいて告白断るとかいう変な流れになったら面倒だな)」
とか考えてたら「確認あります」とメモが差し出されて、見ると良人だった
「すみません、宮崎さん、ちょっと一旦保留音流れます」
「金井さん?」
「確認あるんで残ってください」
「え? あ はい わかりました 宮崎さんお待たせしました すみません、ちょっと報告書の確認で残ることになりまして、次回またよろしくお願いいたします 失礼いたします」
「すみません、また表記が統一できてないとこなどありましたでしょうか?」
「そうじゃないんですけど、ちょっと帰りながらいいですか」
「? はい」
良人が自分のデスクに戻り鞄を持って出入口に向かったので、みいひも退社の支度をして後に続いた
外に出て、先に歩く良人の顔を斜め後ろから伺うが表情からは何も読み取れない
横に並んで「なんなんですか?」という意味で顔を見ると
良人は見られていることを知りながらもみいひを見ず
「ちょっと付き合って欲しいところがあるんで」
前を向いたまま言い駅に向かった
駅に着くとタクシー乗り場に行きタクシーのドアが開くと
「どうぞ」
とみいひに先に乗るよう促した
どうぞって何よ?私、タクシー乗りたいって一言も言ってないし、とみいひは思ったが、よくわからない空気なので下手を踏まぬように黙って乗った
良人が行き先の住所を告げてタクシーは店でもなんでもないところで止まった
先に降りた良人に続きタクシーを降りると良人は目の前のアパートの一室の鍵を開け
「どうぞ?」
とみいひを中へと入るよう促す
どうぞってここどこよ、とか思いつつ良人を見ると
「俺んちなんで大丈夫です」
と
職場では自分のこと私って言うけど、プライベートでは俺呼びなのねとちょっと萌えつつも
あなたんちだと何が大丈夫なの?とか思うが
みいひはとりあえず中に入ってみた
「おじゃまします」
部屋中がほんのり良人のにおいで充満しているようで、ふくいくと吸い込んだ
良人も入ると照明を点け玄関の鍵を施錠した
「よいしょ」
とか言いながら靴を脱いで奥の部屋の照明を点ける
ベッドの横にサイドテーブル代わりのように置いてあるガラスのテーブルを部屋の真ん中にずらして、座布団を一つ置いて
「どうぞ」
と促す
「じゃ、失礼して」
と座る
良人は玄関の方のキッチンに戻って
「うちビールしかないですけど、いいですか~?」
とみいひのいる奥の部屋に向かって言う
「じゃあ、ビールで~」
とみいひはキッチンに向かって言う
良人はみいひの前にビールを1本置くとキッチンに戻って何やら電子レンジに掛けた
しばらくして
「どうぞ」
と肉じゃがと取り皿をガラスのテーブルに置いた
玄関の方に浴室や脱衣所があるのだろう
良人はもうTシャツとハーフパンツに着替えていた
「(わ~ かわい~)」
職場でのスーツ姿しか見たことがないみいひは、初めて見る良人のリラックスウエアに悶えた
「みいひさんも着替えますか? 俺ので良ければ貸しますよ?」
「え、いいの?」 ←すんなり受け入れることじゃない(笑)
「もちろん、もちろん」 ←普通、初めて部屋に入れた職場の人に部屋着に着替えることは勧めないので、全然もちろんじゃない
良人はこっち使ってくださいと脱衣所に案内してくれて、自分が着てるのと同じTシャツとハーフパンツを渡してくれた
着替えると洗剤のにおいと、そこはかとない良人のにおいに包まれてすごく落ち着いた
ハーフパンツがだいぶ緩いので紐を目一杯締めて結んだ
「ありがと なんか落ち着くわ」
「いえいえ 良かったですね」
満足気な良人
「じゃ、乾杯しましょうか」
「そだね」
「おつかれさまでーす」
「おつかれさまー」
「これ食べてくださいね」
肉じゃがの皿を押し出してくれる良人
「ありがと え、もしかして、自分で作ったの?」
みいひが取り皿に肉じゃがをよそいながら言うと
「もちろん」 ←別にもちろんでも何でもない
「えー すごいじゃん おいしそー」
「簡単ですよ」
とか言いながら余裕振るかわいい良人
「いただきまーす ん! これはうまい」
「良かったですね」
なんか知らんが一緒に喜んでくれる良人
ぐぴっとビールを飲んでいる
「うん このうまさ、良い嫁になるね(笑)」
「嫁かい(笑)」
「あはははは(ノリツッコミとかするんだ かわいー)」
「大谷さんも練習すれば作れるようになりますよ」
「(いや もう作れるんだが あ、さっき私がすごいって言ったから、私は作れないと思ったのか 褒められを全面的に受け入れてるのなんかかわいー)」
みいひがにっこり目で笑って良人の目を見ると、良人の顔がちょっと赤くなった
「(やばいな 普段、仕事の時は顔に出さないしクールにしてるけど、プライベートの良人君こんなか かわい過ぎる)」
良人は照れたのをごまかすようにグピっとビールを飲む
「ところで、こんな状況であれですけど、確認ってなんでしたっけ?」
「あ~」
「報告書だと締め切り明後日ですよね すぐ、直せるやつだといいですけど(汗)」
「あ それは大丈夫です 特に直すとこないんで」
「え? あ? そうなんですか? 確認あるって報告書じゃないんですね」
「じゃないです」
「えっと? そしたら、、 なんでしょう すみません、まだ仕事が未熟過ぎて自分で気付けてないです(汗)」
「あのですね、、」
「はい」
「宮崎さんでしたっけ? あの訳わかんない人」
「あー、宮崎さん? 近隣支店の (訳わかんなくはないけど)」
「近隣支店だかなんだか知らんけど」
「はは(汗笑) (なんか宮崎さんに対してトゲあるなぁ)」
「あの人、客の紹介エサにホテル連れ込むとかヤバい奴ですよ」
「あ~ それは、なんて言うか、別に無理強いされた訳じゃないんで」
「じゃ、なんなんですか? 行きたくて行ったと」
「え~ っと、そういうことでもないんだけど、、」
「じゃあ、どういうことなんですか」
「(説明しづら、、)」
「どっちも行こうとしてないなら行かないですよね 普通 今日だって、客のアフターケアの話装って、誘おうとしてましたよね、あの変な人」
「(変な人ではないが) あれは、私が宮崎さんから電話といえばそういうことかなって勝手に思い込んじゃっただけで、、」
「とにかく、あいつヤバいっすよ もう仕事の話って言われても行っちゃだめですよ? 危ないから」
「(え 子ども諭すみたいに言ってくれるの? なんか、ほっこしするー) 危ないっていうか、私、高校生とか処女とかじゃないし、おばちゃんだし、大丈夫だよ どうなっちゃっても」
「、、」
みいひの目を見ながら考えてるような顔をしてる良人
「?」
「、、」
「え? あ そんな深刻な話じゃないから大丈夫だからね? 大丈夫だよ 心配してくれてありがと」
笑顔を作って見せると良人は深い瞳でじっと見ている
あぁ、そうだね、君はそういう子だね
こういう時はこれが正解かなとか答えたりしない
でも、なにも言わなくてもあなたの気持ちがわかる気がする
自分を粗末にしてるのかなとか、本当は傷付いてるのかなとか、胸を痛めたり、もっと自分を大切にしてくださいとか思ってるんだよね
「大丈夫だよ ありがとう」
きれいな心で思ってくれた気持ちがうれしくて、良人の目に目で笑い掛けた
「みいひさん、いつもそうやって自分より人のこと考えて、、 どうなっちゃってもいいってことなんてないんだから、もう危ないことしちゃだめですよ? 約束できますか?」
みいひは、自分より自分を心配してくれてる良人のマジレスが、ツンと胸に染みて、涙がじわっとしてしまった
「約束?」
「約束」
涙が浮かんだ無垢な目で目を見て言うみいひに良人は子どもを諭すように言った
続く
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