【ご都合主義シリーズ】超年下彼氏に溺愛される話3

仕事から帰ってシャワーを浴びた後、ダイニングテーブルに載せたスーパーの割引の寿司を前に、さて、どこから攻めようか

いかか、鯛か、

やっぱ、好きな海老とまぐろは後のお楽しみだよね、

とみいひが作戦を練っていると、

ブブー ブブー 

テーブルの端のスマホが振動した

良人だ、みいひは思う

みいひと良人とはあえてLINEもメールも交換していない

一応交換する?俺、自分の時間に入ると気付かなくて返事できないかもしれないけど、と良人が自分の連絡先を教えてくれようとした時、一瞬で切れの良い判断が天啓のように降りて来て、電話で連絡取れるからいいんじゃない?と答えたみいひであった

自称発達障害の良人が何かに向かうとそれ以外見えなくなる聞こえなくなることは想像がつくし、人はそれぞれ自分の時間も必要なんだから仕方ないという事も頭では理解できるのだが、連絡ツールがあると来るのを待ってしまいそうだし、もし自分が送って返事が来なかったら余計さみしくなってしまうのが目に見えていたので、交換するのが怖かったのだ

それで結果的に良人からの連絡は必ず電話ということになるのであった

「もしもし」

良人からの連絡をちょっとうれしく思いつつもそれは声には出さずにみいひが応えると

「みいひ! 今日着てた服、仕事に着て来ないで! いい? わかった?」

語気強めの良人

「今日?」

みいひは今日どんな服着てたっけ?と脱衣所の洗濯機のふちに裏返して掛けて汗を乾かしている服を見に行く

「あ、これか この半袖のブラウス?」

「そう それ」

「なんで?」

「露出し過ぎ」

「え? 夏だし普通じゃない?」

「いいよ、夏でも長袖で せめて7分袖とかで」

「確かに、肘から下、結構ホクロだかシミだかわかんないのいっぱいあって見苦しいっちゃ見苦しいもんね わかった もう着ない」

「うん、そうしよう それは家で着よう じゃ、ご飯でしょ? ご飯食べて」

「あ? うん じゃあね」

要件終わったら急に切ろうとする良人に面倒と思われないよう、みいひは最小限の言葉で応えて電話を切った


そんなことがあったと忘れていた数日後の休みの日

約束していたのに良人はみいひの部屋に来なかった

みいひは、初めは寝坊したのかなと思っていたが、昼を超えても午後になっても来ないので、具合でも悪いのかなと電話しようかと思ったけど、なんかに夢中になって後回しにされただけかもしれないし邪魔に思われるのもいやだから電話しないでいいやと思い、一人の休日を過ごすことにした

中途半端に寝ちゃうと夜寝るのが遅くなって休み明けの仕事が寝不足で辛くなるから、ポテチとビールで背徳感たっぷりに怠惰に過ごすコースも魅力的に思えたけど、アルコールで睡魔に襲われそうなのでやめておくことにした

良人が魚の煮付けの作り方を教えてくれるって言ってたから、もう口が煮付けの口になっていて、自分で作って食べてみようかと思ったけど、良人が教えてる自分に満足してそうに教える姿も見たい気もするし、教えてもらわないで結構上手に作れたと知ったらがっかりするような気もしたのでやめておいた

最近、仕事のストレスが半端ないので、散歩でストレス解消することにして、みいひはお気に入りのジャージで颯爽と出掛けていった


帰って来て、シャワーを浴びて、ご褒美のレモン生搾り蜂蜜入り炭酸水をかーっと飲んでいると良人から電話があって

「今日、行くの忘れてた」

と特に悪いと思ってなさそうな声

理由は何よ?と一瞬思ったみいひだが、面倒な女になるほどのいい男だろと調子に乗らせるのも癪だと思い、なんでもない振りをすることにして

「そうなんだ」

と応えた

「誰だって忘れることってあるもんね?」

と良人

「うん? まぁ、そうだけど(約束破って開き直るのはどうなの?)」

「みいひも約束忘れるもんね?」

「まぁ、それはあるけど(まずはあやまってもいいのでは?)」

「なに? なんか納得いかなそうじゃん」

「そう?(なんなの?この会話)」

「そりゃ、俺も約束忘れて悪いけど、みいひも約束忘れるもんね?」

「ちょ、よくわかんないんだけど、私、なんかした?」

「みいひ、約束忘れちゃうもんね?」

「だから、なにが? 意味わかんないんだけど?」

「みいひ、あの半袖、外で着ないって言ってたのに、昨日着ちゃってたもんね?」

「あ? あーー!」

「ね、みいひ忘れてたでしょ?」

「あー、昨日朝急いでて、手っ取り早く干してあったやつの中からテキトーに着て出たんだ」

「出たよ、この人」

「気を付ける気を付ける」

「その服、俺が預かろうか?」

「え いいよ 大丈夫」

「大丈夫じゃないでしょ? みいひ、また忘れちゃうから、俺が預かってあげる どうしても着たかったらうちに来た時着ればいいじゃん」

「なんで、そこまで あれ涼しいし着やすくていいんだって」

「ほらー! また着ようとしてるー!」

「なにがよ(なにが気に入らないんだって)(笑)」

「だから あの服は、露出し過ぎなんだって」

「ソバカスみたいのそんな見苦しいかな なんか落ち込む ごめん 汚いもん見せて」

「そうじゃなくて! みいひの二の腕白くてエロいの!」

「え?」

「男は二の腕はおっぱいと同じ肉質なんだよな~って目で見てるの! みいひの胸とか他の男が想像すんのムカつくの! 俺のみいひでエロい想像されたくないの!」

「え? えーーー」

「声でかい」

「あ、耳痛い?ごめ てか、そゆこと? わかりづらっ!」

「鈍感」

「ど、鈍感?」

「忘れん坊」

「わ、忘れん坊? いやいやいや、良人の方が忘れてるじゃん 今日来なかったし」

「俺は忘れてないし」

「いや、忘れてたじゃん(笑)」

「忘れてない」

「・・ え? もしかして、忘れたんじゃなくて、これ言う為にわざと忘れた振りして今日来なかったの?」

「さぁ、どうでしょう?」

「あーー!絶対そうじゃん!」

「知らない(笑)」

「知らなくないよね(笑)」

「みいひもさ、来なかったら”なんで来ないの?”って電話くれてもいいのにね そしたら俺が”忘れてた!”って言って、みいひが”忘れるなんてあり得ない!”って言って、俺が”みいひだって忘れることあるじゃん”って言って、みいひが”例えば何?”って言って、俺が”みいひも着ないって言ったの忘れて半袖着ちゃったもんね”って言うはずだったのに みいひ全然電話くんないじゃん!」

「え?(そんなシナリオだったの) ごめんごめん 良人も疲れてるとか一人でゆっくりしたいとかいろいろあんのかなって気ぃ遣ったの 良人のこと忘れてて電話しないとかじゃないから」

「さぁ、どーだか」

「フッ(笑) (良人かわいい)」

「あ、今、年上振って大人振って、俺のこと子どもっぽいって思ったでしょ」

「思ってない思ってない(思ったとしてもいい意味でしか思ってない)」

「と、にかく! 今すぐあの服は袋かなんかに入れて 明日俺が預かるから」

「明日? 職場ではだめだよ 他の人に見られて勘繰られたらまずいし」

「わかった じゃあ、次俺んち来る時持って来て もう、入れられた?」

「え? まだ」

「じゃあ、待ってるから電話置いて今入れて」

「えーー」

「いいから すぐやんないとみいひ忘れちゃうでしょ」

「(めっちゃ、根に持たれてる) わかった」

ー30秒経過ー

「ごめんごめん お待たせ とりあえず服屋のビニールのバッグに入れた」

「ヨシ よくできました」

うれしそうな声のクセに上から目線で格好つけて言う良人

「じゃあね 切るよ?」

まるで自分が切るのを引き止められていたかのように言う良人

「うん じゃあね(笑)」

そんな良人をかわいく思いながら、要件終わったら早いな~と空気読まなさに感心しつつ、最小限の返答で電話を切るみいひであった


おしまい

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