金の斧、銀の斧
name change
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自称女神と話をして分かったこと。
どうやらこの女の名前はサキというらしく、水底に住む女神だという。
年齢非公開、血液型非公開、誕生日非公開、美の秘訣非公開、好きな男のタイプ非公開と聞いてもいないことをぺらぺらと聞かされた(しかも何ひとつ明らかになった情報はない)。
どうでもいい内容は特に深堀りせずにスルーした。
それによるしゅんとした悲し気な表情も容赦なくスルーした。
ちなみに人間と契ると神堕ちして人間になれる制度があるらしく、「早く人間になりたーい」とどこかで聞いたような台詞を吐いていた。
一番重要だったのは、川に落とし物をした人間に質問をし、正直者か嘘吐きか図っているということだ。
基本的にサキは、落ちたものプラスそれの金銀セットの計三個を持って現れる。
時間やものの種類は特に関係ないらしい。
場所はこのへん一帯、と曖昧な答えだった(本人も詳しく分からないようだ)。
正直者には三個全てを与え嘘吐きには一個も与えないという、人間の欲望の尽きなさから考えると最終的にサキ側の利益の方が上回りそうなシステムだ。
ここで気になるのが、落ちたものの金と銀バージョンを増やす仕組みだ。
落としたことのある銃から分かったように、色が違うだけで性能や型は全く変わらない。
どのような手法で増やしているのか。
そして例えば、ポ●モンのクリスタルバージョンを落とした場合どうなるのか。
増えた金と銀では、ポケ●ンの出現種類や出現率、アニメーションの有無、更にはスイ●ンの放浪はどうなるのか。
カセットの見た目は金と銀でも中身はクリスタルバージョンなのか。
それともポケモ●の金と銀というからには、特別対応で中身も金と銀それぞれのものになっているのか。
ここが最も気になる激アツポイントである(管理人が)。
と、なんだかんだ川のふちに並んで楽し気に話をしているヒルマとサキ。
だいぶ慣れたようで、放送禁止にまでなりかねない殺伐としていた空気も今では柔らかくなっている。
いつの間にか牛乳プリンを食べ始めていたサキにヒルマは尋ねた。
「そういや水に落ちたものはどうやって増やしてんだ? 色違うだけで中身一緒だなんざ、どんなトリック使ってやがんだよ」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました……え~でもどうしよっかな~秘密にしとこっかな~とっておきだしな~」
思い出したようにうざさを取り戻してきたサキに対し、ヒルマは冷静にプリンを取り上げた。
「あああああたしのプリンンンン!」
「で?」
「アレ使ってるアレ! 『ふえるミラー』!」
「………………」
まさかの単語にヒルマは唖然とし、自然に下がった腕にサキが飛び付いてプリンを奪取する。
もう奪われないようにとでも思ったのか、サキはものすごい勢いでプリンをかきこんだ。
目が血走っている。なんという食い意地。
飢えた野生動物のようなその姿にヒルマは一瞬引いたが、今の問題はそれじゃない。
「おいサキ」
「あ、企業秘密だから内緒にしてね。それで増やして、自分で金と銀のペンキ塗ってんの」
「いやサキ」
「ちなみに鏡だから反転しちゃうんだけど、コピーを更にコピーすれば反転戻るから問題ないし」
そういう問題じゃない。
しかも企業秘密とか言うわりにはやっぱり自分からぺらぺら話す迂闊さ。
ヒルマの口からはため息が漏れた。
「全部セルフかよ……つか別の世界のもん持ち込むんじゃねえ。青いネコ型ロボに訴えられんぞ」
多少の悪事ならばヒルマも働く(どこまでを多少とするかは個人の感覚によるが)。
生きるために、他から奪ったり奪ったり奪ったりする。
だが版権だけはさしものヒルマも手を出せない領域なのだ。
それをサキは平気で行使している。
彼女はこのサイトを潰す気なのか。
「まあ何事もばれなきゃいいのよ」
「それが本音だな」
管理人の本音ではなく、あくまでもサキの本音であることをご理解いただきたい。
それはそうと、肝心の増える仕組みはこれで判明した。
サキはどこからか持って来たこのミラーで、落ちてきたものを三つに増やし、それぞれペンキで塗って落とし主に与える。
ヒルマが最初にサキと出会ったときに彼女の服が変な色に染まっていた理由がこれだ。
銃を抱える手が汚れていたのも。
塗っている最中にペンキが服に飛び、まだ乾いていない状態で触るから手に色が移る。
せめて作業服着て塗ったりドライヤーで乾かしてから触ったりしろよ、と誰もが思うはず。
だがそんな細かいことを考えないのがサキという女なのだ。
「テメー何から何まで雑じゃねえか」
「なんで!? ちゃんと反転直してるのすごくない!?」
「確かにそこに気付けたことは唯一驚愕の部分だ」
「でしょ~? さっすがデキる女神! さっすがサキさんいい女!」
「他は穴だらけだけどな」
秒で思い上がったポンコツ女神に、ヒルマはしっかりと事実という名の釘を刺しておいた。
そう、そして皆さんがずっと気になっていたであろうポケ●ンクリスタルバージョン問題。
この原理でいくと、ポ●モンのクリスタルバージョンを落とした場合、ただ金色をしたクリスタルバージョンのカセットと、ただ銀色をしたクリスタルバージョンのカセットがもらえるということだ。
結局ゲームシステムは元のクリスタルバージョンと何ら変わらない。
何の融通も利かない機械的なマニュアル対応だ。
しかもそもそも水の中に落としているため、起動するのかどうかも微妙なところ。
貴重なセーブデータと引き換えに一か八かの検証をすることなどできやしない。
この糞制度が、管理人はつばを吐いた。