狸寝入り
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五月のとある朝。
もはや日課になっちまってるそれを、俺は今日も難なくこなす。
寝室に向かうと、季節外れの羽毛布団の中にこじんまりとした膨らみがあった。
ベッドの縁に腰掛け、それに話し掛ける。
「おい、まだ寝てんのか」
「……」
「いい加減起きやがれ」
「…………」
「狸寝入りだってこた分かってんだぞ」
「………………」
「……クローゼットに隠してあるテメーのポテチ全部食べてや」
「それはダメ!」
勢いよく布団がめくり上げられ、中にいたものの正体があらわになる。
威嚇するような表情で俺を睨む、沙樹。
だがピンクのドット柄のパジャマが似合い過ぎているせいか、全くと言っていいほど威圧感はねえ。
「ケケケ、ほれみろやっぱり起きてやがった」
「うー……だませると思ったのに」
「俺をだまそうなんざテメーにゃ一生無理だ。つうか、だますつもりなら毎日同じことすんなよ」
「……だって」
沙樹はまくった布団をじわじわとたぐり寄せた。
まるでうかがうように、ちらりと大きな瞳が覗く。
それが何を意味しているのか分かりかねた俺は、思わず首をかしげた。
「妖一が毎日起こしに来てくれるの、嬉しいんだもん……自分で起きちゃったらもったいないじゃん」
「……テメーは朝っぱらから誘ってんのか?」
「え、なんでそうなるの!? 違うから!」
「うるせえ。んな可愛いこと言うテメーが悪い」
「ちょ、妖……んっ」
強引に布団を剥ぎ、沙樹の唇を塞いだ。
お前に俺はだませねえ。
だがお前の何気ないひと言で、俺は簡単に一喜一憂させられちまう。
ある意味だますよりもタチが悪い。
お前が狸寝入りなんざしなくても起こしに来てやるよ。
それが夫である俺の特権だからな。
愛しいコイツは、馬鹿正直で天然な、俺の妻。
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