2話 4月12日
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「「「「かんぱ~い!」」」」
適当にグラスを持ち上げると、次々と軽い衝撃が手に響く。
新入部員歓迎会が始まった。
どうしてもやりたいと言う糞デブの懇願がきっかけだが、まあ、少しでも連携が取りやすくなれればそれは強みになる。
俺は俺で、やることやらせてもらうがな。
特に積極的に参加する気もない俺は、パソコンを広げてデータをいじる。
ふと向かいから視線を感じて見やると、甘川と目が合った。
……コイツなんで笑ってんだ。
大抵のヤツは目そらすもんだが、コイツはそらすどころか笑顔で返してきやがる。
ただ機嫌が良いのか、単に怖いもの知らずなのか。
……まあいい。
俺は画面に目線を戻して、作業を続行した。
「みんな、アメフト部に入ってくれてありがとう! 僕は二年の栗田良寛、よろしくね! 誕生日は七月七日で血液型はO型。好きなものは甘いものと美味しいものだよ! はい、次ヒル魔ね!」
作業をしているところに、糞デブが急に話を振ってきた。
俺にテメーみてえな長ったらしい自己紹介をしろってか?
そういうのはテメーらだけでやりゃいいだろ……。
軽く溜め息を吐く。
「ヒル魔妖一。二年。部長だ」
「もう、もっといろいろしゃべってよ~、せっかくの歓迎会なのに~!」
「うっせぇな糞デブ。ンなもん必要最低限の情報でいいだろ」
「うう……ヒル魔冷たい……まあいいや! 次、どうぞ~!」
「えと、私は一年の甘川沙樹です! 七月八日生まれのO型です。みなさんよろしくお願いします!」
「そうそう! ちなみに沙樹ちゃんは、僕の妹なんだよ~」
「「え!?」」
キーボードを打ちながら、耳だけ傾ける。
そりゃそういう反応にもなるだろうよ。
全然似てねえだろって、俺も疑ったからな。
「へえ~兄妹だったのね! あれ、でも苗字違うのはどうして?」
「えっと、その……そこらへんはいろいろあるんですけど、ちゃんと血は繋がってて、正真正銘の兄妹なんです」
「そ、そうなんだ。でもなんか雰囲気は似てるよね。ホンワカしてるって言うか……」
「そうよね。もしかしたら内面が似てるのかもしれないわね」
疑問に思っていたことを糞マネが突っ込んだが、甘川は曖昧に答えてそのまま流されてしまった。
ま、自分から聞くほど興味があるこったねえが。
「みんな、お砂糖は何十個いる~?」
「な、何十個ってそんな、なかなかの甘党じゃないと……」
「お兄ちゃん、私は二十個~!」
「「…………(これ紛れもなく兄妹だ)」」
……そこは似るのかよ!
予想外の反応にコーヒーを噴き出してしまいそうになるが、気合で耐えた。
わけわかんねえ兄妹だな、コイツら。
初めは自己紹介やら世間話やらで騒いでいたのが、次第にアメフトの話に移っていった。
特に隣のデブが張り切って熱弁している。
そうそう、コイツらにアメフト部の目標とやらを叩き込まなきゃいけねえな。
目標っつーか、確定した出来事、だが。
持っていた銃で一発、天井をブチ抜いた。
一斉に押し黙って視線が集中したのを見計らったところで、強気な態度で言い放つ。
「デビルバッツは、やるからにはぜってえ勝つ。最終的にはクリスマスボウルだ」
「僕らにとっては最後のチャンスだからね! みんなで力を合わせて頑張ろう!」
「っつーワケで肉体改造するつもりでやっから、明日から覚悟しとけよ」
一部青ざめているヤツがいたが、また目が合った甘川はそうじゃなかったように見えた。
コイツ、びびってるワケじゃあなさそうだな。
むしろ嬉しそうにしてるっつーか……。
肝が据わってんのか?
考えてもわからず、とりあえず無視して再び作業に移った。