4話 5月30日
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あの日から、二週間が経つ。
ヒル魔先輩によほどきついお灸を据えられたのか、あの後すぐに三人は謝りに来てくれた。
怖い思いはしたけど三人ともすごく真剣に謝ってくれたし、きっともう同じことはしないと信じて許すことにした。
でも、理由はそれだけじゃなくて。
ヒル魔先輩が『二度とさせねえ』って言ってくれたから……先輩のその言葉があったから、信じられた。
先輩は有言実行だし何でもやってのけるから、信じて当然って言ったら当然なんだけど。
そうじゃなくて何かこう、信じたくなっちゃうって言うか、信じざるを得ないって言うか、何て言うか……
……自分で考えてて、よくわかんなくなってきた。
まとまらない考えに蓋をして、お弁当の最後の一口を頬張った。
うん、我ながら今日の卵焼きは上手に出来た気がする。
ダシが良い塩梅で効いてて美味しい。
それはそうと、午後の授業が終わったらすぐ部室行って掃除して、全体の基礎練して、ポジション別練習して……。
天気良いし今日も洗濯しちゃおうかな。
マネージャーになってからと言うもの、考えるのはついアメフト部のことだった。
「そういえば明後日もうテストじゃん! あ~嫌だな~」
「初日は英語と国語だったよね。今日は早く帰って勉強しないと」
「……え?」
……今、何て? テストって言葉が聞こえた気がしたけど。
一緒にお昼を過ごしていた友達の、何気ない会話が引っかかった。
なんとなく嫌な予感がして、空の弁当箱をしまう手が止まる。
「何言ってんの、明後日からもうテストだよ!」
「……ええ!?」
思わず叫んで身を乗り出す。
テストだなんて、そんな話聞いてない!
いつ誰が言ってたの? なんでみんな知ってるの?
もしかしたら、私が大事なこと聞き逃しちゃってたのかな……。
どうしよう……。
しかも、たしか初日は英語って言ってたよね。
よりによって一番苦手な教科……あ~、本当にどうしよう。
絶望的な溜め息を吐きながら、机に突っ伏した。
万が一赤点なんか取って補習になったら、マネージャーの仕事できなくなっちゃうし、何とかしないと……。
「あ!!」
瞬間、バネに弾かれたような勢いで顔を上げる。
そういえばヒル魔先輩、小学生の頃から米軍基地に入り浸ってたって言ってた。
もしかして、英語ペラペラなんじゃ……。
でも先輩だって練習で忙しいんだから、勉強教えてくださいなんて簡単にお願いするわけにはいかない。
第一勉強なんて自分でするものなんだから。
でも補習になって練習に参加できなくなるのも、それはそれで迷惑かかるよね……。
それにヒル魔先輩、『何かあったらすぐ俺に言え』って言ってくれたし。
う~ん、どうしよう……。
ガタンッ、と音を立てて勢い良く立ち上がる。
よし、決めた!
ちょっと行ってくるね、と友達に言い残し、急いで教室を飛び出した。