3話 5月16日
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アメフト部にマネージャーとして入部してから、もう一ヶ月半。
春大会も終わって、秋大会に向けてみんな特訓している最中だ。
桜の季節もとっくに終わって、晴れの日が多いこの時期は練習がしやすい。
賊学との対戦でアメフト部は注目を浴びて、新入部員も増えて賑やかになってきた。
タイムを計ったり練習メニューの指示を出したり山のような洗濯物を洗ったりと、毎日やることはたくさんある。
初めは慣れなくて焦るところもあったけど、最近はそんなことももうない。
どうやったら効率良く出来るか、みんながやりやすくなるか、考えられるようになってきた。
まだまだ足りない部分もあるけれど。
マネージャー業が楽しい、そう思えるようになってきた。
「沙樹ちゃん、今日はユニフォームの洗濯しなきゃいけないから早めに行きましょ!」
「はい、今行きますね~!」
同じマネージャーのまもり先輩とはすっかり仲良くなって、今では一緒に部活に行くほど。
先輩は何をするにもテキパキしてるし、美人だしスタイルいいし……。
とにかく私の憧れになった。
並んで廊下を歩いていると、突然まもり先輩がすごい形相でこっちに顔を向けた。
「そういえば沙樹ちゃん、ヒル魔君に脅されたりしてない?」
「え? 脅すって……どうしたんですか、急に?」
まもり先輩の口から出た耳慣れない言葉に、一瞬意味を考えた。
脅す……って、怖がらせるとか、脅迫するとかだよね。
一体どういうことだろう?
「ヒル魔君てね、人の弱みが書いてある脅迫手帳って物を持ってて、それで人を脅したり奴隷にしたりするの。それだけじゃなくて、いつも銃器を持ち歩いてるし、風紀委員として見過ごせないことだらけなのよね。私のことも『糞マネ』なんて呼んでくるし、とにかく野蛮なのよ!」
口を挟む隙なんてないくらい、先輩は一気にまくし立てた。
見た感じ、相当怒ってる……あの優しいまもり先輩がこんな風に怒るの珍しい。
『糞マネ』のくだりに一番熱がこもっていたように聞こえたのは、きっと気のせいじゃないと思う。
「そうだったんですね、知らなかった……。でも、私ヒル魔先輩に脅されたことなんてありませんよ」
「本当に!? 沙樹ちゃん、言わされてるんじゃないの?」
「ほ、本当ですよ~!」
まもり先輩、疑い深いなあ。よっぽど仲悪いみたい。
私の知ってるヒル魔先輩は、アメフトが好きで、情熱を懸けてて、帰り道送ってくれる優しさがあって……。
まもり先輩の言ってるヒル魔先輩と同一人物じゃないみたいだ。
それまで鬼の形相だったまもり先輩が、一変してきょとんとした表情になった。
「でも、言われてみれば沙樹ちゃんは『マネ二号』呼びだし、他の人に比べると扱いがソフトなような気もするわね。悪魔のくせに、年下の女の子には意外に優しいところもあるのかしら」
「悪魔って、そこまで言いますか……」
まもり先輩のあまりの言い草に、私はもう苦笑いするしかなかった。