2話 4月12日
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き、緊張する…………!
私は今、ヒル魔先輩と一緒に帰り道を歩いてる。
単純に帰る方向が一緒だったから、成り行きでそうなったんだけど。
二人きりになったことないし、何話せばいいんだろう……。
みんなと別れてからというもの、私たちはまだ一言も言葉を交わしてない。
何か話題、話題を探さないと……!
「おい」
「は、はいっ!?」
突然声を掛けられ、焦って返事をしたら少し上擦った。
「テメー、俺が怖くねえのか?」
「へ?」
思ってもみなかった質問に、反射的にヒル魔先輩の顔を見た。
なんでそんなことを聞くんだろう。
もしかして、見た目のこと言ってるのかな。
私にとってヒル魔先輩は、怖いと言うかそんなんじゃなくて……。
「怖くないですよ」
前を向いたままのヒル魔先輩の眉が、ピクリと動いた。
「初めて見たときは、ちょっとびっくりしましたけど……あ、銃持ってるところとか。でも、お兄ちゃんの友達に悪い人はいないだろうし、何より先輩はアメフトに一生懸命で、情熱持ってやってらっしゃるんだなって思って。すごいなあって言うか……尊敬するなあって思ってます!」
な、なんかまとまらずにしどろもどろ感出ちゃったけど、伝わったかな?
限界まで緊張すると顔赤くなっちゃうんだよね、私……。
あ~、顔熱くなってきた……。
夏でもないのに、両手でパタパタと顔を仰ぐ。
そうかよ、と先輩が呟いたのが聞こえて、私も小さくはい、と口にした。
それから、ヒル魔先輩は少しずついろんなことを話してくれた。
アメフトにハマった理由や、お兄ちゃんとの出会いのこと。
なるほどなあ、って思うことから嘘!? って思うことまで、話の起伏がまるでジェットコースターみたいで新鮮だった。
最初は緊張していた私も、いつの間にか素の自分を出せるようになっていた。
……ヒル魔先輩と話すの、楽しいなあ。
少し話しただけで緊張解けることってあんまりないから、なんだか不思議。
先輩の話が面白いっていうのもあるけど、きっとそれだけじゃない。
どうしてだろう……。
あっという間に楽しい時間は過ぎて、家から少し離れた角のところで別れることになった。
「ヒル魔先輩、今日はありがとうございました」
「ああ」
「……先輩、私、立派なマネージャーになりますね!」
「……!」
「じゃあ、さようなら!」
「ああ、じゃあな」
自分の発言にまた変に緊張した私は、ヒル魔先輩と顔も合わせず、そそくさとそこから離れた。
はあ……今日は先輩と話す機会があって、ラッキーだったなあ。
ヒル魔先輩のアメフトへの情熱に触発されて、思わず宣言しちゃったけど。
『立派な』って、ちょっとハードル上げすぎたかな?
でも、せっかく勝負するなら私も勝ちたいし、マネージャーとしての仕事もきっちりこなしたい。
まずはルールを覚えて、マネージャーとして何ができるのか自分で考えて、力を尽くさないと!
「よし、頑張るぞー!」
私は声を張り上げて気合を入れ、綺麗な茜色の夕暮れの中を駆け出した。