5話 6月29日
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ここから私の家は歩いてたったの三分。
それなのに、家まで送ると言ってくれたヒル魔先輩。
こういうところが紳士だなあ。見た目は怖そうに見えるのにね。
……あえてそう見せてるのかな?
買ってもらったコーヒーとおまけのフィナンシェが入った袋を抱えながら、私は先輩の顔を覗き込む。
「なんだかんだ全部払ってもらっちゃいましたけど……本当にいいんですか?」
「いいも何も、今更買っちまったもんはどうしようもねえだろ。ありがたく受け取っとけ」
「……ふふっ、そうですね。ありがとうございます」
「何笑ってんだ」
「いや、何て言うか……ヒル魔先輩って、結構素直じゃないなって思って」
「……それも今更だ」
先輩の性格がだんだん分かってきたかも。
皮肉めいた発言は、照れ隠しの裏返しな気がする。
そう思うと、急に意地っ張りな子供みたいに見えてきた。
「――先輩と、また来たいなあ」
……あ。
つい思ったこと言っちゃった……!
今回はご褒美で来たわけだし、なんだか馴れ馴れしい!
それに、まるでもう一回ごちそうしてもらおうとしてるみたいじゃん!
ぽかんとしているヒル魔先輩に向かって、私は慌てて付け足す。
「あ、いやあの、無理にとかそんなんじゃなく、機会があればって意味で……」
「ああ」
それは抑揚がなく、少しの感情も読み取れないたった一言の返事。
――あれ、先輩そっぽ向いちゃった。
変には思われなかった……みたい。
良かった、冷や汗かいちゃったよ……。
本当は機会があれば、じゃなくて、機会を作ってでも来たいなあなんて思ったり。
そんなこと、言えるはずもないけど。
でもいつか、そんなことができたらいいな。
ヒル魔先輩と一緒だったらきっと、どこでだって楽しめるんだろうなあ……。
なぜかキラキラして見える隣の男性を、気付かれないようにこっそりと盗み見て微笑んだ。