友達以上 ~ヒル魔Side~
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昼の時間はあっという間に過ぎ、午後の授業の予鈴が鳴った。
沙樹はまだ弁当を食べている。
その光景を何気なく眺めながら、すでに食べ終えていた俺はさっきの出来事を思い出していた。
さっきはお互い散々間接キスしてたが、コイツ何も言わねえな。
一応初めての試みだったんだが。
気付いてたら、沙樹は照れるなり慌てるなりするはずだ。
さてはコイツ、気付いてねえな……。
思った以上に道のりは長そうだと、俺は人知れず気落ちした。
ま、逆に言えば攻略のし甲斐があるってこった。
気長に待っててやるよ。
沙樹が片付けを終えたのを確認し、待っていた俺は身を起こす。
「ケケケ、ごっそさん」
「私の方こそ、ごちそうさま。本当に美味しかった!」
「気が向いたら伝えといてやるよ」
沙樹は上機嫌なんだろう、屈託の無い笑顔を俺に向ける。
こんなに嬉しそうな顔が見られるんだから、母親に感謝の一つでもしねえとな。
にしても……コイツは警戒心がまるで無い。
俺の前だからっつーんならこんなに嬉しいこたあねえが、沙樹に限ってそれは考えにくい。
うっかり他の男がコイツに惚れてしまわねえように、糞野郎共を近付けねえようにしねえと。
沙樹のこんな表情を見る男は俺だけで十分だ。
改めて脅迫手帳をフル活用しようと企む俺は、階段を降りきったところで、沙樹が付いて来ていないことに気付く。
振り返ると、沙樹は屋上を向いたまま突っ立っていた。
何か考え事でもしてんだろうが、授業に遅刻するのはきっとアイツの本意じゃねえ。
しゃーねえな、そう思いながら大きく息を吸い込んだ。
「沙樹、早く行かねえと遅れんぞ!」
「今行くー!」
沙樹はパッと振り向き、早足で階段を駆け降りて俺の元に来ようとする。
そうだ、お前は俺の近くにいればいい。
今は友達のままでも構わねえ。
そのうち嫌でも意識させてやるから、覚悟しやがれ。
他の誰でもない、俺がな。
独占欲と野望をいつものポーカーフェイスで隠し、俺たちは教室へと足を進めた。
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