臆病な嘘吐き
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今日も沙樹は、当たり前のように俺の隣にやって来る。
「ねぇ妖一聞いてよーー! また振られちゃったのーー!」
「またかよ……毎度毎度同じ結果じゃねぇか」
お前は気付いていない。
本当はこんなに近くにいることに。
「何でこんなに振られるのかな……。私のどこがダメなんだろう」
「それが分かりゃ苦労しねぇよ。たまたま好みが合わなかったんだろ」
お前のことを誰よりも想っているヤツが。
でも、そいつは臆病者だから、言えない。
「勇気出して、告白したのにな……」
「告白したからって全部が成功するとは限らねぇよ」
告白する勇気を持っているお前が羨ましい。
お前に告白される男も。
「興味のない女の子に告白されても、よし付き合おう! とはならないよねぇ、やっぱり」
「まぁそうかもしんねぇな」
本当はもっとお前に近付きたい。
でも、好きでもない男に告白されたって、お前は困るだろう。
「部活に夢中になってるあの人の姿、好きだったんだけどなぁ……」
「そういや延々と語ってたよな、お前」
一度好きになったら、そいつしか見えなくなるお前だから。
好きな男のことを話している時のお前は、魅力的で、輝いているんだ。
俺はお前のそんなところに惹かれたんだ。
「振られても妖一が慰めてくれるから、私も安心して告白ができるよ」
「俺は精神安定剤かよ」
でも、俺の気持ちを伝えたら、この関係は壊れてしまうかもしれない。
壊れるくらいなら、今のままでいい。
「ま、恋の傷を治すのに一番いいのは、新しい恋をすることだよね!」
「もうやる気じゃねぇか。次のターゲット決まってんのか?」
俺は、お前にとって都合のいい男友達でいよう。
お前が嬉しい時は一緒に喜んでやる、お前が辛い時は慰めてやる。
お前がそう望むなら。
「実は、一コ上のC組の先輩がちょっと気になってるのよね……」
「ま、精々頑張れよ」
「ありがと妖一! いつも話聞いてくれて」
「ケケケ、どーいたしまして」
今日も俺は、当たり前のように自分の気持ちに嘘を吐く。
今はただ
沙樹、お前のそばに。
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