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短編
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1
うちの彼女は隠し事が下手だ。
何かあれば挙動不審に取り乱し、挙句の果てに自分からボロを出す。
だから――
何かやましいことがあるとすぐにわかる。
百合子「…お先に失礼します。」
津軽「あれ、ウサちゃん。もう帰るの?」
百合子「え、はい。今日はちょっと用事が…」
ここのところずっとこれだ。
仕事が終わると我先にと帰る。
その用事の相手は俺じゃない。
なんなら、俺の誘いを断ってまで優先することなのだ。
ふと、この間送られてきたLIDEを思い出す。
百合子『歩さん!すみません!!その日はちょっと用事があって…!!!
別の日に埋め合わせするので何卒!!!!!』
感嘆符を多用して、おまけにいつも使う土下座するクマのスタンプを乱用して、勢いで押し切るように。
だんだんとこちらばかりが会いたがっているように思えて、誘う気も失せてしまった。
(いつもはうざいくらいに会いたがるくせに。)
珍しく断られたのもあって、なんとなく腑に落ちない。
しかし、そうまでして断る何かが彼女にはあるようだった。
(まあ、カマをかければすぐにわかりそうだけど。)
そそくさと走り去る彼女の後ろ姿を横目に、PCの画面に意識を移そうとする。
津軽「なーんか怪しいよねえ。」
東雲「…何がですか」
津軽「ウサちゃん。あんなに急いで帰っちゃって。しかも毎日。
歩くん、何か知らない?」
東雲「なんで俺に聞くんですか?」
津軽「だって、元補佐官じゃない。仲いいでしょ。」
東雲「ただの腐れ縁ですよ。」
津軽「ふーん」
津軽さんは、かすかに目を細めた。
この人は薄々気付いているのかもしれない。
かといって、自分からばらすようなマネしないけど。
(ていうか、あの子が何してるかなんて俺が知りたいし。)
作業を終え、PCの電源をシャットダウンする。
帰り支度をしながら、どう問い詰めるか考えていると――
津軽「もしかして――」
津軽「彼氏なんじゃないかな、あれ」
津軽さんを一瞥する。
こちらの反応をうかがうように笑みを浮かべている。
(…こういうのは関わらないのが一番。)
東雲「そうかもしれないですね。」
お先に失礼します、とその場を立ち去る。
2
(あの子が浮気ね…。)
普段うざいくらいラブコールを送ってくるあの馬鹿にそんな器用なことできるはずない。
となると、別の何かを隠しているということになる。
俺に言えないようなこと。
別に知りたいわけじゃないが、隠されるとなんとなく気になる。
というより、どうせばれるくせに隠し事をしているということに腹が立つ。
一人悶々と考えながら歩いていると、向かいに見知った顔を見つける。
(宮山…。)
公安学校の教え子、宮山だった。
向こうも気づいたようで、会釈してくる。
宮山「お疲れ様です。今帰りですか?」
東雲「まあね。そっちは?」
宮山「俺もです。今日はこっちの方に用事があったんで。」
正直、宮山のことなんてどうでもよかった。
それよりもあの子にどう吐かせるかだ。
ああでもないこうでもないと思案しつつ、世間話を適当に聞き流していると――
宮山「そういえば、東雲教官も先輩から送られてきました?」
東雲「何を?」
宮山「何って、猫の写真ですよ。」
東雲「……。」
宮山「もしかして、きてないんですか?」
宮山は少しだけ勝ち誇ったような顔をした。
大方、自分だけがあの子との秘密を共有していることで優越感にでも浸っているのだろう。
宮山「なんか友達に預かってほしいって言われたみたいで、あの人今猫飼ってるんですよ。
そしたら、予想以上にハマっちゃったみたいで、たくさん写真送ってくるんですよね。」
東雲「ふーん。」
いやいらないし。写真なんて。
そもそも、別に猫なんて好きじゃない。
問題はそこじゃない。
(まさか恋人よりも猫を優先していたなんて…。)
あれだけ俺のことを好きなあの子が、猫を優先するなんて余程のことなんだろう。
たしかに、犬とか猫とか一日中構ってそうな感じはする。
きっと、独り身の高齢者のように猫をかわいがっているのだろう。
にしても――
(よりによって宮山に写真を送る?)
隠し事をされていたことから、宮山に写真を送っていたことの方が気になってしまう。
(もっと他にいるでしょ。鳴子ちゃんとか千葉とか)
千葉に送っていても、それはそれで複雑なのだが。
ひとまず、これで何を隠しているかは分かったわけだ。
そうとくれば、いつまでも宮山に時間を使ってる場合じゃない。
適当に切り上げ、帰路につくことにした。
3
百合子「ただいま~。」
いつもは誰もいない部屋に声をかける。
でも、最近は違う。
というのも――
猫「ニャア」
百合子「ふふふ。ただいま~。」
そう言って、猫を抱き上げる。
友達から少しだけでいいから預かってと言われて数週間。
すっかり猫の虜になってしまった。
お腹がすいているのか、甘えるようにすりよってくる。
百合子「ちょっと待っててね。」
ソファに座り、買ってきたばかりのキャットフードを取り出す。
ふたを開け、容器に移したものを差し出すと早速食べ始めた。
(はあ~~~。猫ってなんでこんなにかわいいんだろう。
許されるならずっと家にいて眺めていたい……。)
見てるだけでは飽き足らず、懲りずにまた写真を撮ってしまう。
(また鳴子に送ろう。あ、あと千葉さんと宮山くんにも。)
こうして写真を撮っては、知り合いに送り付けるを繰り返している。
もしかしたら迷惑なのかもしれないがやめられないから困ったものだ。
(まあ、こんなにかわいい猫の写真なら癒されるからちょっとぐらいいいよね。)
LIDEを起動し、ふと手を止める。
(そういえば、歩さんと最近会ってないなあ。)
しばらく会っていない恋人に思いを馳せる。
それもそのはずで、もうかれこれ数週間も会っていないのだ。
というのも、この猫だ。
(家に行ったら動物臭いとか言われそうだし、こっちに来たら来たで面倒くさがりそうなんだよね、歩さん。)
潔癖症の彼のことだからきっと何かしら言ってくることは予想できた。
だからこそ、誘いも断ってきたのだが…。
(そろそろ限界…。歩さんが足りないよお…泣)
預かるのは少しの間だけだからということで猫を優先してきたが、彼に会えない寂しさの方が勝ってきていた。
(しかも、こういう時に限って家に誘われるってなんなの!?
ああ、歩さんに会いたい……。)
一人で百面相している主を不思議に思ったのか、猫が見上げてくる。
(たは~~~!!!かわいい!!!!!)
思わず抱き上げて顔を摺り寄せていると、スマホが振動する。
どうやらLIDEがきたようだ。
百合子「誰だろう、鳴子かな。それとも――」
画面には[東雲歩]の文字。
驚いて光の速さでロックを解除する。
百合子「歩さん!!」
東雲【いま、家にいる?】
百合子【います!】
秒速で返信する。
きっと『うわっ、即既読ついた。キモ』とかしかめっ面で言ってるんだろう。
でも、気持ちが抑えきれないのだから仕方ないのだ。
思えば、今に限らず恋愛で駆け引きなどできた試しがなかった。
それは恥ずかしいのもあるし、じれったくて耐え切れないのだ。
ただ――
(こんなにアプローチしたことってそういえばなかったな。)
ふとそんなことを考えていると。
東雲【じゃあ、猫と遊んでるんだ。】
百合子「ですです。いま猫とあそんでてって。ええーー!!!何で知ってるの!?」
(誰にも言ってないはず、まさか部屋に監視カメラがっ!?)
ピコン♪
LIDEを見ると――
東雲【ないから。監視カメラとか】
百合子「だからなんでわかるんですか。」
いつものことながら、完璧に行動を把握されていて感心する。
でも――
百合子「歩さん、なんで家に猫がいるって知ってるんだろう。」
たしか一度も言っていないはず。
なんなら忙しくて話す機会もないくらいだった。
考えを巡らしていると、またLIDEがきた。
今度は何だろうと思って見てみると――。
4
百合子「は、早かったですね。」
東雲「近くにいたから。」
百合子「そうですか。どうぞ。」
東雲「ドウモ」
これはいったい何が起きているのだろうか…
あの歩さんが目の前に。
しかも家に来ている。
こんなレアなことがあっただろうか。
大体、歩さんの家だからなんだか新鮮な気がする。
嬉しいというか、恥ずかしいというか。
なんだか落ち着かずそわそわしてしまう。
もしかしたら明日死ぬのかもしれない…、そんなことを考えていると――
東雲「もう餌やったの?」
百合子「あ、はい、さっき。でも、育ち盛りだからけっこう食べるんですよね。」
東雲「じゃあ、これあげなよ」
ガサッとコンビニの袋から何かを取り出す。
百合子「なんですかこれ」
東雲「CIAOちゅ~る。猫用コカインって言われてるらしいよ」
百合子「猫用コカイン!?あげて大丈夫なんですか?」
東雲「大丈夫でしょ。キャットフードなんだから。」
ひとまず封を開け、小皿に移そうとすると。
猫「ニャァ」
百合子「え、そのまま食べるの?あっ。」
(め、めっちゃ食べてる――っ!!いや舐めてる、か。)
さっきの餌よりもウケがいいのは一目瞭然だった。
さすが猫用コカイン。
百合子「こんなのあるんですね。すごい食べっぷり。」
東雲「……」
百合子「歩さん?」
東雲「別に」
百合子「?…でも、なんで猫いるって知ってたんですか?」
東雲「宮山に聞いた。」
百合子「え、宮山くんに会ったんですか!」
東雲「たまたまね。」
百合子「へえ、そんなことあるんですね。私なんて最近めっぽう会わないですよ」
東雲「ふーん。だから、猫の写真送ったの?」
百合子「え?そういうわけじゃないですけど。」
東雲「まあ、どっちでもいいけど」
歩さんは興味なさそうにぶっきらぼうに答える。
(あれもしかして…、なわけないか)
一瞬、嫉妬してくれたのかと思ったが、すぐに考えを打ち消した。
(あの歩さんがまさかね。)
そう思いつつ、猫に意識を戻す。
猫用コカインというだけあって狂ったように餌に夢中になっている。
(ふふ。一生懸命食べててかわいいなあ。)
思わず顔がほころぶ。
そういえば、とふと思った疑問を口にする。
百合子「歩さん、猫大丈夫だったんですね。」
東雲「別に得意じゃないけど。匂いつくし」
(やっぱり……)
予想通りの返答が返ってきて思わず苦笑する。
東雲「でも」
控えめに猫をなでながら、言葉を区切る。
東雲「たまにはいいかもね。」
(歩さんと子猫のツーショット……!!)
一人で悶絶して、抱き着きたい気持ちが溢れてくる。
(久しぶりだし、いいよね?)
ちらっと見やると、視線に気づいたようで歩さんが嫌そうな顔をする。
東雲「ニヤニヤして気持ち悪いんだけど。」
百合子「歩さん」
東雲「ダメ」
百合子「まだ何も言ってないです!」
東雲「聞かなくても分かる。」
百合子「じゃあキッス!」
東雲「それもダメ」
百合子「2週間ぶりなんですよ!私もう限界です!!」
東雲「それは君が俺の誘いを断ったからでしょ。」
百合子「それはそうですけど…」
一時とはいえ猫を優先したことが悔やまれる。
そもそも、なんで猫なんて預かってしまったのだろう。
今度はキッスもハグもできない行き場のない満たされなさで悶々とする。
(早く猫返そう…)
そう心に決めた一夜であった。
5
(今日こそキッス、今日こそキッス、今日こそキッス――)
念仏を唱えるがごとく、今日の目的を脳内で復唱する。
頭の中はもはや煩悩でいっぱいだった。
(ああ~~~~~!!!なんで1日は24時間あるの~~~~!!)
そう考えながら、黙々と目の前の業務をこなす。
眉間にしわを寄せ、光を灯していない瞳はさぞ滑稽に映ったのか、黒澤さんに絡まれた。
黒澤「わ、百合子さん、今日は一段と気合入ってますね~。」
百合子「…黒澤さん。」
黒澤「なんかあったんですか?」
百合子「私の中で緊急事態宣言が出てるんです。」
黒澤「えー、それは大変ですね!プライベートで、――うわ、後藤さん!何するんですか!!」
後藤「黒澤、邪魔してやるな。」
『えー、こんな必死に仕事してるの見たら絡むしかないでしょ』などと二人の問答が遠くで聞こえる。
(後藤さん、ありがとうございます…!!)
心の中で後藤さんに感謝しつつも、目の前の業務に集中する。
定時はとっくに過ぎており、残りの業務さえ終われば帰ることができる。
歩さんはというと、そろそろ帰ろうかと帰り支度をしているところだった。
(ああ、歩さん…。)
歩さんがこちらを一瞥する。
一瞬目が合い、すぐに視線をそらされる。
(…早く終わらせるんで!待っててください、歩さん!!)
今すぐ駆け寄りたい気持ちを抑え、最後の書類の束を手に取る。
すると――
津軽「ウサちゃん、そんなに切羽詰まってどうしたの?」
百合子「津軽さん、今は話しかけないでください。」
津軽「え、何?もっと仕事したい?仕事熱心だなあ、ウサちゃんは。」
津軽さんはそう言うと、百瀬さんに大量の書類を持ってこさせた。
終わりかけていた事務作業も津軽さんの所業で新たな書類の山ができていた。
百合子「ちょ!」
津軽「じゃあこれ今日中によろしくね。」
(ゼッタイ嫌がらせだ!!!)
思わず机に突っ伏した。
今日中に終わらない量ではなかったが、歩さんと一緒にいられる時間が減るのは目に見えていた。
泣きわめきたい気持ちで室内を見回すと、もう歩さんはいなかった。
6
百合子「お待たせしました!」
東雲「待たせすぎ。」
百合子「これでも早く終わった方なんです…。」
肩で息をしながら答える。
あの後、半ばやけくそでやっつけて、全力疾走でここまできたのだ。
警察庁から歩さんの家の帰宅時間はきっと自己ベスト更新だろう。
残業で疲労困憊の顔色に加えて、走ってきたせいか髪が乱れていた。
それを見て、歩さんはため息をつく。
東雲「君さ、ほんと女子力低いよね。」
百合子「う、すみません。」
髪を直しながら答える。
歩さんの方が女子力が高いから何も言えない…。
そんなことを考えていると、『とりあえず中入れば?』と声がかかる。
部屋に入ると、ほのかに歩さんの匂いがした(気がする)。
(あー、これこれ。この匂い好きなんだよなあ。)
そんなことを考えながらくつろぐ。
さっきまでの疲労感が嘘みたいに消えていくのがわかる。
(猫もかわいかったけど、やっぱり私にとって一番の癒しは歩さんなんだなあ。)
東雲「はい、コーヒー。」
百合子「ありがとうございます。」
少し熱いコーヒーを冷ましつつ、歩さんの方を盗み見る。
気怠そうにテレビを眺めているだけで様になるあたりやっぱり美男子なんだなあと思う。
(今更だけど、この人が私の恋人なんだ…。)
公安学校時代から付き合って、色んなことがあったけどもう付き合って3年目だ。
いち警察官として、上司として、そして恋人として尊敬しているのは今も変わらない。
このままずっとこうしていられたらいいな、なんて思っていると歩さんが口を開く。
東雲「そういえば、あの猫返したんだね。」
百合子「はい、名残惜しかったですけど。でも!歩さんに会うためだったんで!!」
東雲「ウザ」
百合子「…歩さんは会いたくなかったんですか?」
思わず不安が漏れる。
もう何週間も恋人らしいことはしていないのに、歩さんは全然平気そうな顔をしていた。
元々、スキンシップが好きな人ではないし、愛情表現も分かりづらい。
だから、大丈夫だろうと思ってはいてもこうして不安になってしまうのだ。
しかし、口にしてしまった途端、急に後悔が押し寄せる。
(私、すごくめんどくさい女だなあ…。)
自己嫌悪に耐え切れずうつむいていると、歩さんがぽつりと呟く。
東雲「別に会いたくなかったわけじゃない。」
少し照れながら視線を逸らす、素直じゃない彼が本音を言ってるときの癖だ。
たった一言。
甘い言葉でなくても、その一言だけで満たされていくのがわかる。
(やっぱり私、この人が好き)
溢れきれないほどの好意でいっぱいになる。
百合子「歩さん」
東雲「ダメ」
百合子「まだ何も!」
東雲「君、ここまで走ってきたんでしょ」
『べたべたした体で抱き着かれたくない』と笑顔で拒否される。
(通常運転といえばそうだけど…!)
抱き着きたい一心でシャワーを済ませ、後から入った歩さんを待つ。
手持無沙汰になり、なんとなくスマホを取り出し、操作する。
するとLIDEのニュースに『あなたのまわりは何系?!』という記事を見つけた。
(最近よく言う、動物系男子とかいうやつかあ。これでいくと歩さんは猫系男子ってやつかな。
いつもツンケンしてるもんね。でも、たまに出るデレがたまらないんだよなあ~)
ニマニマしていると、浴室から戻ってきたであろう歩さんはその様子を見て顔をしかめる。
東雲「君さ、よく彼氏の家でいかがわしいもの見れるね。」
百合子「ち、違います!これは猫系男子の記事を読んでて…」
東雲「ああ、何とか系男子とかあのくだらないやつか。」
百合子「くだらないやつ…」
ここまで辛辣な言葉がすっと出るのが彼らしい。
毎度いつものことなので苦笑する。
東雲「それでいくと君はすっぽん系女子だよね。」
百合子「せめて犬系女子って言ってください。」
東雲「そんなかわいいものじゃないでしょ。」
百合子「確かにすっぽんですけど…」
東雲「で、いいの?」
百合子「え?」
東雲「しないならもう寝るけど」
唐突に言われ何のことかわからずいたが、すぐにそれハグのことだとわかる。
(歩さんちゃんと覚えてくれてたんだ…!)
つい高ぶってしまい、半ば突進気味に歩さんに抱き着く。
東雲「ちょ」
百合子「歩さん!」
久しぶりの彼の体温を感じながら、頬を摺り寄せる。
私よりも一回り大きい手が髪ををなでる。
(歩さんの手、きもちいいなあ)
心地よい感触に身をゆだねて微睡んでいると、ふとなでる手が止まる。
なんだろうと思って顔を上げると、歩さんと目が合う。
(あ……)
ゆっくりと顔が近づき、唇が重なる。
そこから伝わる温度が歩さんの気持ちを示しているようで満たされていく。
どれくらいそうしていたのであろうか。
不意に唇が離れ、夢見心地の気分から覚める。
やっぱり歩さんがいちばん。
そんな当たり前を実感しつつ、ふたりの時間を堪能したのであった。
End
↓あとがき
どうもはじめました、夢小説。
舞台脚本とか小説を嗜めていたんですが、この度好きすぎる『恋人は公安刑事』の夢小説を書いてみることにしました。
もう完全に好き勝手、自己満足に書いているので先に謝っておきます。
もし気に入らなかったら他のうまい方の方か本家へどうぞw
東雲は私にとって公安デビューのきっかけのキャラクターだったので、初めに書きたいなと思って書いてみました。
恋人は同居人(ガラケー時代)からボルテージをやって、専属SPがものすごく好きだったので、公安の方も気にはなっていたのですが。
配信当初、大学で活動していた劇団が毎日深夜まで練習があったので、なかなかゲームできないでいる毎日が続いていました。
そして、運命の2018年。
同僚がたまたまボルゲーをやっていて。
たまたま推しが一緒でかなり盛り上がって。
「公安の歩さん、絶対好きになるよ!」と言われ、まんまとはまりました。
一番は優男お兄さん系なんですけど、ふとした時に年下系をやりたくなるんですよね。
母性が有り余ってるんですかね。
そんな感じで始めた公安ですが、今ではほぼ箱推しです。
全員書きたいなあと思いつつもネタが浮かんだり浮かばなかったりなので、マイペースにやっていこうと思います。
ちなみに、次は黒澤です。笑
2020年5月21日
Keity
うちの彼女は隠し事が下手だ。
何かあれば挙動不審に取り乱し、挙句の果てに自分からボロを出す。
だから――
何かやましいことがあるとすぐにわかる。
百合子「…お先に失礼します。」
津軽「あれ、ウサちゃん。もう帰るの?」
百合子「え、はい。今日はちょっと用事が…」
ここのところずっとこれだ。
仕事が終わると我先にと帰る。
その用事の相手は俺じゃない。
なんなら、俺の誘いを断ってまで優先することなのだ。
ふと、この間送られてきたLIDEを思い出す。
百合子『歩さん!すみません!!その日はちょっと用事があって…!!!
別の日に埋め合わせするので何卒!!!!!』
感嘆符を多用して、おまけにいつも使う土下座するクマのスタンプを乱用して、勢いで押し切るように。
だんだんとこちらばかりが会いたがっているように思えて、誘う気も失せてしまった。
(いつもはうざいくらいに会いたがるくせに。)
珍しく断られたのもあって、なんとなく腑に落ちない。
しかし、そうまでして断る何かが彼女にはあるようだった。
(まあ、カマをかければすぐにわかりそうだけど。)
そそくさと走り去る彼女の後ろ姿を横目に、PCの画面に意識を移そうとする。
津軽「なーんか怪しいよねえ。」
東雲「…何がですか」
津軽「ウサちゃん。あんなに急いで帰っちゃって。しかも毎日。
歩くん、何か知らない?」
東雲「なんで俺に聞くんですか?」
津軽「だって、元補佐官じゃない。仲いいでしょ。」
東雲「ただの腐れ縁ですよ。」
津軽「ふーん」
津軽さんは、かすかに目を細めた。
この人は薄々気付いているのかもしれない。
かといって、自分からばらすようなマネしないけど。
(ていうか、あの子が何してるかなんて俺が知りたいし。)
作業を終え、PCの電源をシャットダウンする。
帰り支度をしながら、どう問い詰めるか考えていると――
津軽「もしかして――」
津軽「彼氏なんじゃないかな、あれ」
津軽さんを一瞥する。
こちらの反応をうかがうように笑みを浮かべている。
(…こういうのは関わらないのが一番。)
東雲「そうかもしれないですね。」
お先に失礼します、とその場を立ち去る。
2
(あの子が浮気ね…。)
普段うざいくらいラブコールを送ってくるあの馬鹿にそんな器用なことできるはずない。
となると、別の何かを隠しているということになる。
俺に言えないようなこと。
別に知りたいわけじゃないが、隠されるとなんとなく気になる。
というより、どうせばれるくせに隠し事をしているということに腹が立つ。
一人悶々と考えながら歩いていると、向かいに見知った顔を見つける。
(宮山…。)
公安学校の教え子、宮山だった。
向こうも気づいたようで、会釈してくる。
宮山「お疲れ様です。今帰りですか?」
東雲「まあね。そっちは?」
宮山「俺もです。今日はこっちの方に用事があったんで。」
正直、宮山のことなんてどうでもよかった。
それよりもあの子にどう吐かせるかだ。
ああでもないこうでもないと思案しつつ、世間話を適当に聞き流していると――
宮山「そういえば、東雲教官も先輩から送られてきました?」
東雲「何を?」
宮山「何って、猫の写真ですよ。」
東雲「……。」
宮山「もしかして、きてないんですか?」
宮山は少しだけ勝ち誇ったような顔をした。
大方、自分だけがあの子との秘密を共有していることで優越感にでも浸っているのだろう。
宮山「なんか友達に預かってほしいって言われたみたいで、あの人今猫飼ってるんですよ。
そしたら、予想以上にハマっちゃったみたいで、たくさん写真送ってくるんですよね。」
東雲「ふーん。」
いやいらないし。写真なんて。
そもそも、別に猫なんて好きじゃない。
問題はそこじゃない。
(まさか恋人よりも猫を優先していたなんて…。)
あれだけ俺のことを好きなあの子が、猫を優先するなんて余程のことなんだろう。
たしかに、犬とか猫とか一日中構ってそうな感じはする。
きっと、独り身の高齢者のように猫をかわいがっているのだろう。
にしても――
(よりによって宮山に写真を送る?)
隠し事をされていたことから、宮山に写真を送っていたことの方が気になってしまう。
(もっと他にいるでしょ。鳴子ちゃんとか千葉とか)
千葉に送っていても、それはそれで複雑なのだが。
ひとまず、これで何を隠しているかは分かったわけだ。
そうとくれば、いつまでも宮山に時間を使ってる場合じゃない。
適当に切り上げ、帰路につくことにした。
3
百合子「ただいま~。」
いつもは誰もいない部屋に声をかける。
でも、最近は違う。
というのも――
猫「ニャア」
百合子「ふふふ。ただいま~。」
そう言って、猫を抱き上げる。
友達から少しだけでいいから預かってと言われて数週間。
すっかり猫の虜になってしまった。
お腹がすいているのか、甘えるようにすりよってくる。
百合子「ちょっと待っててね。」
ソファに座り、買ってきたばかりのキャットフードを取り出す。
ふたを開け、容器に移したものを差し出すと早速食べ始めた。
(はあ~~~。猫ってなんでこんなにかわいいんだろう。
許されるならずっと家にいて眺めていたい……。)
見てるだけでは飽き足らず、懲りずにまた写真を撮ってしまう。
(また鳴子に送ろう。あ、あと千葉さんと宮山くんにも。)
こうして写真を撮っては、知り合いに送り付けるを繰り返している。
もしかしたら迷惑なのかもしれないがやめられないから困ったものだ。
(まあ、こんなにかわいい猫の写真なら癒されるからちょっとぐらいいいよね。)
LIDEを起動し、ふと手を止める。
(そういえば、歩さんと最近会ってないなあ。)
しばらく会っていない恋人に思いを馳せる。
それもそのはずで、もうかれこれ数週間も会っていないのだ。
というのも、この猫だ。
(家に行ったら動物臭いとか言われそうだし、こっちに来たら来たで面倒くさがりそうなんだよね、歩さん。)
潔癖症の彼のことだからきっと何かしら言ってくることは予想できた。
だからこそ、誘いも断ってきたのだが…。
(そろそろ限界…。歩さんが足りないよお…泣)
預かるのは少しの間だけだからということで猫を優先してきたが、彼に会えない寂しさの方が勝ってきていた。
(しかも、こういう時に限って家に誘われるってなんなの!?
ああ、歩さんに会いたい……。)
一人で百面相している主を不思議に思ったのか、猫が見上げてくる。
(たは~~~!!!かわいい!!!!!)
思わず抱き上げて顔を摺り寄せていると、スマホが振動する。
どうやらLIDEがきたようだ。
百合子「誰だろう、鳴子かな。それとも――」
画面には[東雲歩]の文字。
驚いて光の速さでロックを解除する。
百合子「歩さん!!」
東雲【いま、家にいる?】
百合子【います!】
秒速で返信する。
きっと『うわっ、即既読ついた。キモ』とかしかめっ面で言ってるんだろう。
でも、気持ちが抑えきれないのだから仕方ないのだ。
思えば、今に限らず恋愛で駆け引きなどできた試しがなかった。
それは恥ずかしいのもあるし、じれったくて耐え切れないのだ。
ただ――
(こんなにアプローチしたことってそういえばなかったな。)
ふとそんなことを考えていると。
東雲【じゃあ、猫と遊んでるんだ。】
百合子「ですです。いま猫とあそんでてって。ええーー!!!何で知ってるの!?」
(誰にも言ってないはず、まさか部屋に監視カメラがっ!?)
ピコン♪
LIDEを見ると――
東雲【ないから。監視カメラとか】
百合子「だからなんでわかるんですか。」
いつものことながら、完璧に行動を把握されていて感心する。
でも――
百合子「歩さん、なんで家に猫がいるって知ってるんだろう。」
たしか一度も言っていないはず。
なんなら忙しくて話す機会もないくらいだった。
考えを巡らしていると、またLIDEがきた。
今度は何だろうと思って見てみると――。
4
百合子「は、早かったですね。」
東雲「近くにいたから。」
百合子「そうですか。どうぞ。」
東雲「ドウモ」
これはいったい何が起きているのだろうか…
あの歩さんが目の前に。
しかも家に来ている。
こんなレアなことがあっただろうか。
大体、歩さんの家だからなんだか新鮮な気がする。
嬉しいというか、恥ずかしいというか。
なんだか落ち着かずそわそわしてしまう。
もしかしたら明日死ぬのかもしれない…、そんなことを考えていると――
東雲「もう餌やったの?」
百合子「あ、はい、さっき。でも、育ち盛りだからけっこう食べるんですよね。」
東雲「じゃあ、これあげなよ」
ガサッとコンビニの袋から何かを取り出す。
百合子「なんですかこれ」
東雲「CIAOちゅ~る。猫用コカインって言われてるらしいよ」
百合子「猫用コカイン!?あげて大丈夫なんですか?」
東雲「大丈夫でしょ。キャットフードなんだから。」
ひとまず封を開け、小皿に移そうとすると。
猫「ニャァ」
百合子「え、そのまま食べるの?あっ。」
(め、めっちゃ食べてる――っ!!いや舐めてる、か。)
さっきの餌よりもウケがいいのは一目瞭然だった。
さすが猫用コカイン。
百合子「こんなのあるんですね。すごい食べっぷり。」
東雲「……」
百合子「歩さん?」
東雲「別に」
百合子「?…でも、なんで猫いるって知ってたんですか?」
東雲「宮山に聞いた。」
百合子「え、宮山くんに会ったんですか!」
東雲「たまたまね。」
百合子「へえ、そんなことあるんですね。私なんて最近めっぽう会わないですよ」
東雲「ふーん。だから、猫の写真送ったの?」
百合子「え?そういうわけじゃないですけど。」
東雲「まあ、どっちでもいいけど」
歩さんは興味なさそうにぶっきらぼうに答える。
(あれもしかして…、なわけないか)
一瞬、嫉妬してくれたのかと思ったが、すぐに考えを打ち消した。
(あの歩さんがまさかね。)
そう思いつつ、猫に意識を戻す。
猫用コカインというだけあって狂ったように餌に夢中になっている。
(ふふ。一生懸命食べててかわいいなあ。)
思わず顔がほころぶ。
そういえば、とふと思った疑問を口にする。
百合子「歩さん、猫大丈夫だったんですね。」
東雲「別に得意じゃないけど。匂いつくし」
(やっぱり……)
予想通りの返答が返ってきて思わず苦笑する。
東雲「でも」
控えめに猫をなでながら、言葉を区切る。
東雲「たまにはいいかもね。」
(歩さんと子猫のツーショット……!!)
一人で悶絶して、抱き着きたい気持ちが溢れてくる。
(久しぶりだし、いいよね?)
ちらっと見やると、視線に気づいたようで歩さんが嫌そうな顔をする。
東雲「ニヤニヤして気持ち悪いんだけど。」
百合子「歩さん」
東雲「ダメ」
百合子「まだ何も言ってないです!」
東雲「聞かなくても分かる。」
百合子「じゃあキッス!」
東雲「それもダメ」
百合子「2週間ぶりなんですよ!私もう限界です!!」
東雲「それは君が俺の誘いを断ったからでしょ。」
百合子「それはそうですけど…」
一時とはいえ猫を優先したことが悔やまれる。
そもそも、なんで猫なんて預かってしまったのだろう。
今度はキッスもハグもできない行き場のない満たされなさで悶々とする。
(早く猫返そう…)
そう心に決めた一夜であった。
5
(今日こそキッス、今日こそキッス、今日こそキッス――)
念仏を唱えるがごとく、今日の目的を脳内で復唱する。
頭の中はもはや煩悩でいっぱいだった。
(ああ~~~~~!!!なんで1日は24時間あるの~~~~!!)
そう考えながら、黙々と目の前の業務をこなす。
眉間にしわを寄せ、光を灯していない瞳はさぞ滑稽に映ったのか、黒澤さんに絡まれた。
黒澤「わ、百合子さん、今日は一段と気合入ってますね~。」
百合子「…黒澤さん。」
黒澤「なんかあったんですか?」
百合子「私の中で緊急事態宣言が出てるんです。」
黒澤「えー、それは大変ですね!プライベートで、――うわ、後藤さん!何するんですか!!」
後藤「黒澤、邪魔してやるな。」
『えー、こんな必死に仕事してるの見たら絡むしかないでしょ』などと二人の問答が遠くで聞こえる。
(後藤さん、ありがとうございます…!!)
心の中で後藤さんに感謝しつつも、目の前の業務に集中する。
定時はとっくに過ぎており、残りの業務さえ終われば帰ることができる。
歩さんはというと、そろそろ帰ろうかと帰り支度をしているところだった。
(ああ、歩さん…。)
歩さんがこちらを一瞥する。
一瞬目が合い、すぐに視線をそらされる。
(…早く終わらせるんで!待っててください、歩さん!!)
今すぐ駆け寄りたい気持ちを抑え、最後の書類の束を手に取る。
すると――
津軽「ウサちゃん、そんなに切羽詰まってどうしたの?」
百合子「津軽さん、今は話しかけないでください。」
津軽「え、何?もっと仕事したい?仕事熱心だなあ、ウサちゃんは。」
津軽さんはそう言うと、百瀬さんに大量の書類を持ってこさせた。
終わりかけていた事務作業も津軽さんの所業で新たな書類の山ができていた。
百合子「ちょ!」
津軽「じゃあこれ今日中によろしくね。」
(ゼッタイ嫌がらせだ!!!)
思わず机に突っ伏した。
今日中に終わらない量ではなかったが、歩さんと一緒にいられる時間が減るのは目に見えていた。
泣きわめきたい気持ちで室内を見回すと、もう歩さんはいなかった。
6
百合子「お待たせしました!」
東雲「待たせすぎ。」
百合子「これでも早く終わった方なんです…。」
肩で息をしながら答える。
あの後、半ばやけくそでやっつけて、全力疾走でここまできたのだ。
警察庁から歩さんの家の帰宅時間はきっと自己ベスト更新だろう。
残業で疲労困憊の顔色に加えて、走ってきたせいか髪が乱れていた。
それを見て、歩さんはため息をつく。
東雲「君さ、ほんと女子力低いよね。」
百合子「う、すみません。」
髪を直しながら答える。
歩さんの方が女子力が高いから何も言えない…。
そんなことを考えていると、『とりあえず中入れば?』と声がかかる。
部屋に入ると、ほのかに歩さんの匂いがした(気がする)。
(あー、これこれ。この匂い好きなんだよなあ。)
そんなことを考えながらくつろぐ。
さっきまでの疲労感が嘘みたいに消えていくのがわかる。
(猫もかわいかったけど、やっぱり私にとって一番の癒しは歩さんなんだなあ。)
東雲「はい、コーヒー。」
百合子「ありがとうございます。」
少し熱いコーヒーを冷ましつつ、歩さんの方を盗み見る。
気怠そうにテレビを眺めているだけで様になるあたりやっぱり美男子なんだなあと思う。
(今更だけど、この人が私の恋人なんだ…。)
公安学校時代から付き合って、色んなことがあったけどもう付き合って3年目だ。
いち警察官として、上司として、そして恋人として尊敬しているのは今も変わらない。
このままずっとこうしていられたらいいな、なんて思っていると歩さんが口を開く。
東雲「そういえば、あの猫返したんだね。」
百合子「はい、名残惜しかったですけど。でも!歩さんに会うためだったんで!!」
東雲「ウザ」
百合子「…歩さんは会いたくなかったんですか?」
思わず不安が漏れる。
もう何週間も恋人らしいことはしていないのに、歩さんは全然平気そうな顔をしていた。
元々、スキンシップが好きな人ではないし、愛情表現も分かりづらい。
だから、大丈夫だろうと思ってはいてもこうして不安になってしまうのだ。
しかし、口にしてしまった途端、急に後悔が押し寄せる。
(私、すごくめんどくさい女だなあ…。)
自己嫌悪に耐え切れずうつむいていると、歩さんがぽつりと呟く。
東雲「別に会いたくなかったわけじゃない。」
少し照れながら視線を逸らす、素直じゃない彼が本音を言ってるときの癖だ。
たった一言。
甘い言葉でなくても、その一言だけで満たされていくのがわかる。
(やっぱり私、この人が好き)
溢れきれないほどの好意でいっぱいになる。
百合子「歩さん」
東雲「ダメ」
百合子「まだ何も!」
東雲「君、ここまで走ってきたんでしょ」
『べたべたした体で抱き着かれたくない』と笑顔で拒否される。
(通常運転といえばそうだけど…!)
抱き着きたい一心でシャワーを済ませ、後から入った歩さんを待つ。
手持無沙汰になり、なんとなくスマホを取り出し、操作する。
するとLIDEのニュースに『あなたのまわりは何系?!』という記事を見つけた。
(最近よく言う、動物系男子とかいうやつかあ。これでいくと歩さんは猫系男子ってやつかな。
いつもツンケンしてるもんね。でも、たまに出るデレがたまらないんだよなあ~)
ニマニマしていると、浴室から戻ってきたであろう歩さんはその様子を見て顔をしかめる。
東雲「君さ、よく彼氏の家でいかがわしいもの見れるね。」
百合子「ち、違います!これは猫系男子の記事を読んでて…」
東雲「ああ、何とか系男子とかあのくだらないやつか。」
百合子「くだらないやつ…」
ここまで辛辣な言葉がすっと出るのが彼らしい。
毎度いつものことなので苦笑する。
東雲「それでいくと君はすっぽん系女子だよね。」
百合子「せめて犬系女子って言ってください。」
東雲「そんなかわいいものじゃないでしょ。」
百合子「確かにすっぽんですけど…」
東雲「で、いいの?」
百合子「え?」
東雲「しないならもう寝るけど」
唐突に言われ何のことかわからずいたが、すぐにそれハグのことだとわかる。
(歩さんちゃんと覚えてくれてたんだ…!)
つい高ぶってしまい、半ば突進気味に歩さんに抱き着く。
東雲「ちょ」
百合子「歩さん!」
久しぶりの彼の体温を感じながら、頬を摺り寄せる。
私よりも一回り大きい手が髪ををなでる。
(歩さんの手、きもちいいなあ)
心地よい感触に身をゆだねて微睡んでいると、ふとなでる手が止まる。
なんだろうと思って顔を上げると、歩さんと目が合う。
(あ……)
ゆっくりと顔が近づき、唇が重なる。
そこから伝わる温度が歩さんの気持ちを示しているようで満たされていく。
どれくらいそうしていたのであろうか。
不意に唇が離れ、夢見心地の気分から覚める。
やっぱり歩さんがいちばん。
そんな当たり前を実感しつつ、ふたりの時間を堪能したのであった。
End
↓あとがき
どうもはじめました、夢小説。
舞台脚本とか小説を嗜めていたんですが、この度好きすぎる『恋人は公安刑事』の夢小説を書いてみることにしました。
もう完全に好き勝手、自己満足に書いているので先に謝っておきます。
もし気に入らなかったら他のうまい方の方か本家へどうぞw
東雲は私にとって公安デビューのきっかけのキャラクターだったので、初めに書きたいなと思って書いてみました。
恋人は同居人(ガラケー時代)からボルテージをやって、専属SPがものすごく好きだったので、公安の方も気にはなっていたのですが。
配信当初、大学で活動していた劇団が毎日深夜まで練習があったので、なかなかゲームできないでいる毎日が続いていました。
そして、運命の2018年。
同僚がたまたまボルゲーをやっていて。
たまたま推しが一緒でかなり盛り上がって。
「公安の歩さん、絶対好きになるよ!」と言われ、まんまとはまりました。
一番は優男お兄さん系なんですけど、ふとした時に年下系をやりたくなるんですよね。
母性が有り余ってるんですかね。
そんな感じで始めた公安ですが、今ではほぼ箱推しです。
全員書きたいなあと思いつつもネタが浮かんだり浮かばなかったりなので、マイペースにやっていこうと思います。
ちなみに、次は黒澤です。笑
2020年5月21日
Keity
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