未入力だと某都知事の名前になります
短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『アンブレラ』
1
微睡みの中、雨音がぽつりぽつりと聞こえる。
明け方なのかまだ夜なのか。
外が暗いためどちらか分からない。
どちらでもいいか、と考えることをやめ、肌に触れる温もりに触れる。
隣には恋人である颯馬さんが眠っている。
「この後、私の家に来ませんか?」
久々のデートの帰り際。
一緒に夜景を見ていると、そう誘われた。
講義や補佐官業務で会う機会はあったとはいえ、恋人としての時間は久しくなかった。
慌ただしい日々の中でやっと取れた二人の時間。
まだ一緒にいたいという気持ちの方が大きかった。
きっと彼のことだから、そのことに気付いたうえで誘ってくれたのだろう。
こういうところがどれだけ時が経ってもかなわないなあと思う。
…それからはお察しの通りだ。
付き合いたての頃は、颯馬さんが意外と肉食系というところに少し驚いた。
でもすぐに、大人っぽくて紳士的な彼が二人きりの時に俺と言う瞬間が好きになった。
彼が私にだけ見せてくれる素のような気がしたからだ。
優しく見つめてくれる目も、心地よく触れてくれる手のひらも、肌に触れる彼の髪の感触も。
好きと伝えきれないくらいすべて好き。
それこそ、言葉にしつくせないほどだ。
それがどうにも歯がゆくて精いっぱい伝えるのだが、そうすると決まって彼はにっこりと微笑んで、「ありがとうございます、私も百合子が好きですよ。」と言うのだ。
伝わってないわけではないのだろうけど、なんとなく伝えきれた気がしない。
いっそこの気持ちがテレパシーかなんかで伝わればいいのにと思う。
体を動かさずに時計を見る。
4時57分。
一度目が覚めたせいか、うまく寝付くことができないでいた。
起こしてしまいたくはなかったので目を閉じ、じっとする。
部屋が静かなせいか普段に気にもしないような音が聞こえてくる。
(雨、けっこう降ってるのかな。)
窓辺に打つ雨音に耳を澄ませる。
普段、忙しい毎日を過ごしているので、こんなふうに雨音を聞く機会は久しぶりで落ち着く。
そういえば小さい頃、こうして雨音を聞いて眠るのが好きだった。
いつもは布団に入ればすぐに寝てしまうのだが、雨の夜だけは何かゆっくりと眠りに入るような特別感があった。
今ではそんなことも忘れるくらいに大きくなってしまったのだと実感する。
ふと窓際を見やる。
カーテンで外の様子はわからないが、相変わらず部屋に雨音が響いている。
もう少しだけその音を感じたくて、静かに寝返りを打つ。
そして、何も考えずにただ雨音に身をゆだねる。
しとしとと雨が降りしきる間、どれくらいそうしていたのだろうか。
また眠気が戻ってくる。
ぼんやりとしながら眠りにつきそうな時、後ろから身を引き寄せられる。
眠気眼でそっと振り返ると、颯馬さんが髪に顔をうずめていた。
まだ半分寝ているのか気怠そうにこちらを見つめる。
百合子「すみません、起こしちゃいました?」
颯馬「いえ…」
お互い聞き取れるかどうかの小声で話す。
なんとなく、そうしてしまう。
特に理由もないのだが。
颯馬さんが優しい手つきで髪をなでる。
その感触が気持ちよくて、手のひらに触れる。
しばらくそうしていると颯馬さんは撫でるのをやめた。
なんだろうと思い、思わず見ると身を寄せ、口づけをされる。
ゆっくりと味わうように。
それでいて昨晩の名残を含んでいるようだった。
いつの間にかつながれた手から体温が伝わる。
(颯馬さん、温かいんだよなあ。)
ひとしきり堪能し終えると、颯馬さんは顔を少し離した。
そして、微笑むと身を寄せ、抱きしめる。
ゼロになった距離で颯馬さんは呟いた。
颯馬「どうして背を向けていたんですか?」
百合子「どうしてって…」
颯馬「いつも向かい合って寝ていたので。」
少し気になりました、と颯馬さんは言った。
百合子「大した理由じゃないんですけど、雨が降ってるなあって…」
颯馬「雨?…ああ。」
そういうことですか、と颯馬さんは納得してふっと笑った。
どうやら雨が降っていたことすら気付いていなかったようだった。
百合子「昔から雨の音を聞いていると落ち着くんです。」
颯馬「ふふっ。それは意外ですね。」
百合子「意外って言わないでください。」
颯馬「冗談ですよ。」
百合子「もう」
意地悪な言葉とは裏腹に、颯馬さんは優しく抱きしめてくれる。
冷たくなったシーツの上で二人のいるところだけが温かい。
その温かさが心地よくて、もっと触れたくて、けれど恥ずかしいので控えめに抱きしめ返す。
それが嬉しかったのか、颯馬さんは抱きしめる力を強めた。
百合子「でも――」
百合子「颯馬さんといる方が落ち着く気がします。」
それとなくぽつりと呟く。
颯馬さんは微笑むと少し身を離す。
颯馬「……俺も、百合子といると落ち着く。」
そう言って颯馬さんは触れるだけのキスをした。
End
↓あとがき
東雲、黒澤と更新してきましたが、実は私の最推しは颯馬さんなんですよね。
推しなのに初めに書かんのかいってとこなんですけど、なんかこういいもの書きたいみたいな、謎にハードルが上がってしまって…
とりあえず書きたいキャラクターを書いてから、じっくり大事に書くことにしました。
私がいちばん好きなシチュエーションで書きました。
朝、早く起きてしまって、雨音を聞いて微睡む。
その隣に恋人がいたら最高ですよね。
ちなみに、タイトルなんですけどその時聞いていたそれっぽい曲の名前を採用しています。
めっちゃくちゃ適当に選んでるんで悪しからず。
本家だとやたらとセッに入るシーンが多くて、まあ肉食だからねとは思いつつも、それだけの人ではないと思っていたので、今回はそれらしき描写をとことん省きました。
単純に、すぐそういう描写に入っちゃうと颯馬さんがチープに見えちゃわないかなっていう心配がありました。
あとはいくら裸で触れ合っても朝は何となくあまりしなさそうなイメージがありました。
キャラクター的にもオンとオフがあるので、夜は夜、朝は朝みたいな。
軽いふれあいはするけどそれ以上はしない。
勿論、相手の様子ありきで触れ合っているうちに…みたいなのはたまにありそうですよね。
まあ、颯馬さんまだ若いからw
次はだれを書こうか迷っています。
今のところ、ネタは黒澤透が多くてw
単純に書いてて楽しいキャラクターですよね、彼は。
難波さんか津軽さん、加賀さんを書きたいなあと思いつつも、津軽さんのネタがぜんっぜん浮かんでいませんw
色々な方がすでに二次創作してるから枯渇状態なんですよね。
後藤さん、石神さんに至っては、私が連日通い詰めて読んでいた夢小説の神がSPの方で書いていたので、ひとまず後回しにしています。
その方の書く優しい文章がすごく好きだったんで、後藤さんと石神さんはしばらく先になると思います。
2020年5月31日
Keity
1
微睡みの中、雨音がぽつりぽつりと聞こえる。
明け方なのかまだ夜なのか。
外が暗いためどちらか分からない。
どちらでもいいか、と考えることをやめ、肌に触れる温もりに触れる。
隣には恋人である颯馬さんが眠っている。
「この後、私の家に来ませんか?」
久々のデートの帰り際。
一緒に夜景を見ていると、そう誘われた。
講義や補佐官業務で会う機会はあったとはいえ、恋人としての時間は久しくなかった。
慌ただしい日々の中でやっと取れた二人の時間。
まだ一緒にいたいという気持ちの方が大きかった。
きっと彼のことだから、そのことに気付いたうえで誘ってくれたのだろう。
こういうところがどれだけ時が経ってもかなわないなあと思う。
…それからはお察しの通りだ。
付き合いたての頃は、颯馬さんが意外と肉食系というところに少し驚いた。
でもすぐに、大人っぽくて紳士的な彼が二人きりの時に俺と言う瞬間が好きになった。
彼が私にだけ見せてくれる素のような気がしたからだ。
優しく見つめてくれる目も、心地よく触れてくれる手のひらも、肌に触れる彼の髪の感触も。
好きと伝えきれないくらいすべて好き。
それこそ、言葉にしつくせないほどだ。
それがどうにも歯がゆくて精いっぱい伝えるのだが、そうすると決まって彼はにっこりと微笑んで、「ありがとうございます、私も百合子が好きですよ。」と言うのだ。
伝わってないわけではないのだろうけど、なんとなく伝えきれた気がしない。
いっそこの気持ちがテレパシーかなんかで伝わればいいのにと思う。
体を動かさずに時計を見る。
4時57分。
一度目が覚めたせいか、うまく寝付くことができないでいた。
起こしてしまいたくはなかったので目を閉じ、じっとする。
部屋が静かなせいか普段に気にもしないような音が聞こえてくる。
(雨、けっこう降ってるのかな。)
窓辺に打つ雨音に耳を澄ませる。
普段、忙しい毎日を過ごしているので、こんなふうに雨音を聞く機会は久しぶりで落ち着く。
そういえば小さい頃、こうして雨音を聞いて眠るのが好きだった。
いつもは布団に入ればすぐに寝てしまうのだが、雨の夜だけは何かゆっくりと眠りに入るような特別感があった。
今ではそんなことも忘れるくらいに大きくなってしまったのだと実感する。
ふと窓際を見やる。
カーテンで外の様子はわからないが、相変わらず部屋に雨音が響いている。
もう少しだけその音を感じたくて、静かに寝返りを打つ。
そして、何も考えずにただ雨音に身をゆだねる。
しとしとと雨が降りしきる間、どれくらいそうしていたのだろうか。
また眠気が戻ってくる。
ぼんやりとしながら眠りにつきそうな時、後ろから身を引き寄せられる。
眠気眼でそっと振り返ると、颯馬さんが髪に顔をうずめていた。
まだ半分寝ているのか気怠そうにこちらを見つめる。
百合子「すみません、起こしちゃいました?」
颯馬「いえ…」
お互い聞き取れるかどうかの小声で話す。
なんとなく、そうしてしまう。
特に理由もないのだが。
颯馬さんが優しい手つきで髪をなでる。
その感触が気持ちよくて、手のひらに触れる。
しばらくそうしていると颯馬さんは撫でるのをやめた。
なんだろうと思い、思わず見ると身を寄せ、口づけをされる。
ゆっくりと味わうように。
それでいて昨晩の名残を含んでいるようだった。
いつの間にかつながれた手から体温が伝わる。
(颯馬さん、温かいんだよなあ。)
ひとしきり堪能し終えると、颯馬さんは顔を少し離した。
そして、微笑むと身を寄せ、抱きしめる。
ゼロになった距離で颯馬さんは呟いた。
颯馬「どうして背を向けていたんですか?」
百合子「どうしてって…」
颯馬「いつも向かい合って寝ていたので。」
少し気になりました、と颯馬さんは言った。
百合子「大した理由じゃないんですけど、雨が降ってるなあって…」
颯馬「雨?…ああ。」
そういうことですか、と颯馬さんは納得してふっと笑った。
どうやら雨が降っていたことすら気付いていなかったようだった。
百合子「昔から雨の音を聞いていると落ち着くんです。」
颯馬「ふふっ。それは意外ですね。」
百合子「意外って言わないでください。」
颯馬「冗談ですよ。」
百合子「もう」
意地悪な言葉とは裏腹に、颯馬さんは優しく抱きしめてくれる。
冷たくなったシーツの上で二人のいるところだけが温かい。
その温かさが心地よくて、もっと触れたくて、けれど恥ずかしいので控えめに抱きしめ返す。
それが嬉しかったのか、颯馬さんは抱きしめる力を強めた。
百合子「でも――」
百合子「颯馬さんといる方が落ち着く気がします。」
それとなくぽつりと呟く。
颯馬さんは微笑むと少し身を離す。
颯馬「……俺も、百合子といると落ち着く。」
そう言って颯馬さんは触れるだけのキスをした。
End
↓あとがき
東雲、黒澤と更新してきましたが、実は私の最推しは颯馬さんなんですよね。
推しなのに初めに書かんのかいってとこなんですけど、なんかこういいもの書きたいみたいな、謎にハードルが上がってしまって…
とりあえず書きたいキャラクターを書いてから、じっくり大事に書くことにしました。
私がいちばん好きなシチュエーションで書きました。
朝、早く起きてしまって、雨音を聞いて微睡む。
その隣に恋人がいたら最高ですよね。
ちなみに、タイトルなんですけどその時聞いていたそれっぽい曲の名前を採用しています。
めっちゃくちゃ適当に選んでるんで悪しからず。
本家だとやたらとセッに入るシーンが多くて、まあ肉食だからねとは思いつつも、それだけの人ではないと思っていたので、今回はそれらしき描写をとことん省きました。
単純に、すぐそういう描写に入っちゃうと颯馬さんがチープに見えちゃわないかなっていう心配がありました。
あとはいくら裸で触れ合っても朝は何となくあまりしなさそうなイメージがありました。
キャラクター的にもオンとオフがあるので、夜は夜、朝は朝みたいな。
軽いふれあいはするけどそれ以上はしない。
勿論、相手の様子ありきで触れ合っているうちに…みたいなのはたまにありそうですよね。
まあ、颯馬さんまだ若いからw
次はだれを書こうか迷っています。
今のところ、ネタは黒澤透が多くてw
単純に書いてて楽しいキャラクターですよね、彼は。
難波さんか津軽さん、加賀さんを書きたいなあと思いつつも、津軽さんのネタがぜんっぜん浮かんでいませんw
色々な方がすでに二次創作してるから枯渇状態なんですよね。
後藤さん、石神さんに至っては、私が連日通い詰めて読んでいた夢小説の神がSPの方で書いていたので、ひとまず後回しにしています。
その方の書く優しい文章がすごく好きだったんで、後藤さんと石神さんはしばらく先になると思います。
2020年5月31日
Keity
1/1ページ