たくさん愛して
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「あ!氷柱様だ!おかえりなさい!」
「「おかえりなさい!!」」
『ただいま。なほ、すみ、きよ』
小さな3人の頭をぽんぽんと撫でる。
「しのぶ様ー!氷柱様が戻られましたよ!」
元気の良い声に呼ばれ、玄関に向かう。
『ただいま、しのぶ』
「おかえりなさい、梗香さん」
あれから数年経ち、その間に私も姉さんや梗香さんと同じ柱の階級を賜った。
そして、みんなには内緒にしているけれど、私と梗香さんは交際させてもらっている。
「任務お疲れ様です。怪我はありませんか?」
『ん、大きなものはないよ。ちょっと右腕切ったけど』
梗香さんが苦笑いしながら隊服の袖をめくると10センチ程の切り傷があった。
「では、診察室へ来てください。血は止まっていますが、化膿しても大変なので消毒します」
『手間かけてごめんね?あと、先にカナエのとこ行ったらダメかな?』
「わかりました。では、部屋で待っててください。私も必要な物を持って行きますので」
『ありがとう』
梗香さんは任務から帰ってくると、必ず真っ先に姉さんの元へ会いに行く。
「消毒液とピンセットと脱脂綿どガーゼと包帯…こんなものかしらね」
私も姉さんの部屋に向かう。
部屋の前に着くと、中から話し声が聞こえた。
『ただいま、カナエ。やっと任務を終えたんだけど、ちょっとしくじっちゃってね…少し怪我しちゃった…』
楽しそうに近況報告をしている。
梗香さんと姉さんの間には、2人だけの強い絆があるんだろう…少しだけ妬けてしまう。
『傷を見たしのぶがね、平静を装ってるんだけどたぶん少し怒ってるんだよね…まぁきっと心配の方が強いのかもしれないけどさ…』
あら、バレてたんですね。
『いつも心配ばかりかけて本当に申し訳ないけど、しのぶには笑っていてほしいから。カナエが好きだと言っていたしのぶの笑顔を守れるように頑張るよ。だから、しのぶの事は安心して私に任せて』
胸がきゅっと締め付けられる。
どうしよう、そんな風に思っていてくれたなんて…嬉しくて泣きそうだ。
そっと部屋を覗くと、とても優しい顔で姉さんに語りかけていた。
落ち着け落ち着け、感情を制御出来ないのは未熟者です。
ふーっと深く息吐き心を落ち着かせる。
「梗香さん、お待たせしました」
何事も無かったように、梗香さんの前に腰を下ろし手当てを始める。
傷は深くないし、数日で良くなるだろう。
最後に包帯を巻いて終える。
「はい、終わりましたよ」
『うん、ありがとう。ねぇ、しのぶ』
「はい」
持ってきた物を片付けながら耳を傾ける。
『さっきの話、聞いてたでしょ?』
「え…と、何のことですか?」
『誤魔化さなくていいよ。別に怒ってもいないし聞かれて困るようなことじゃないから』
なんで、どうして。
「あの…」
『しのぶ、こっち見て』
「っ…」
全てを見透かしているような碧い瞳…。
ゆっくりと近付いてくる顔に、私は目を閉じた。
そっと触れた唇、顔に熱が集まる。
『あーあ、カナエにしのぶの可愛い顔見られちゃったなぁ…』
「そういう事言わないでください…」
『ふふ、可愛いなぁ…』
梗香さんは愛おしそうな目で私を見ながら、よしよしと頭を撫でてくれた。
「なんで、分かったんですか?私が聞いていた事…」
『んー?そりゃあ分かるよ。上手く表情作ったつもりでも、私には直ぐ分かるよ。ほんの些細な変化でもね、大事な人の事だから』
にこっと優しい笑顔を浮かべる。
あぁ、好きだ。
どうしようもないくらい、この人が好きだ。
惜しみないほどの愛情を注いでくれるこの人が、たまらなく好きだ。
梗香さんの胸元に頬を寄せて、羽織をぎゅっと握り締める。
梗香さんも背中に腕を回して優しく抱き締めてくれた。
「好きです…」
『私も好きだよ』
「好きで好きで…おかしくなりそうなくらい好きなんです…」
『参ったなぁ…流石に照れる…』
「梗香さん…」
『ねぇ…今、自分がどんな顔してるか分かる?そんな可愛い顔されると抑え効かないんだけど…』
ドサッと畳の上に押し倒される。
「あ、待って…ください…」
『待てない…』
「姉さんが…見てる、から…」
『見てないとこなら、良いの?』
顔を背けて小さく頷く。
その瞬間、体がふわっと浮いて梗香さんに抱きかかえられたまま姉さんの部屋をあとにした。