たくさん愛して
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しばらくして、姉さんは亡くなった。
上弦の鬼に殺されたのだ。
葬儀が終わり数日が経った頃、姉さんの仏壇の前で放心していた時だった。
"バンッ!"
唐突に勢い良く障子が開かれ、そこには額に汗を浮かべ肩で息をしている東雲さんが立っていた。
『はぁっ…はぁっ…、しのぶっ!』
「東雲さん…?」
『しのぶ…カナエは…』
「来てくださってありがとうございます。きっと姉さんも喜んでますよ」
姉さんが好きだと言ってくれた笑顔で。
姉さんがいつもそうしていたように。
穏やかに喋りかける。
東雲さんは線香をあげるとゆっくりと姉さんの遺影に手を合わせる。
「姉さん、東雲さんが来てくれたわよ」
『来るのが遅くなった…ごめん…ごめんね…』
顔を上げると私に向き直る。
その表情は悲しみが溢れていた。
『しのぶ…痩せた…?ちゃんと食べてる?』
「えぇ、食べてますよ」
笑顔で嘘をついた。
食べ物なんて喉を通らない。
姉さんが居なくなってしまった日から、何も口にしていない。
すると、そっと抱き締められた。
「っ…」
『嘘つき…』
「あら、バレちゃいましたか」
『今のしのぶは嘘だらけだよ…その笑顔も…声も…全部…』
「しょうがないじゃないですか…こうでもしないと、怒りと憎しみでどうにかなりそうなんですよ…」
拳をぎゅっと握り締める。
本当なら声を出して泣き叫びたい。
姉さんを殺した鬼への殺意をぶちまけたい。
「でも、あの子たちの前では笑顔でいなきゃって…姉さんの葬儀が終わってから、今度は私が姉さんの代わりにあの子たちの前で笑っていようって決めたんです…」
"姉さんはしのぶの笑った顔が好きだな"
姉さんの言葉が頭をよぎる。
「姉さんが、私の笑った顔が好きだと言ってくれたから…」
『そっか…』
東雲さんは腕を緩めると、優しい表情で私を見詰めた。
『頑張ったね、しのぶ』
「え…」
『屋敷の子たちの為に、よく頑張ったね…。カナエ、君の妹は本当に立派だよ』
姉さんに向かってそう語りかけた。
そして、再び抱き締められる。
『でも、私の前では取り繕わないで…本音を隠そうとしないで…全部受け止めるから…』
「東雲さん…」
『泣いていい、怒っていい、我慢なんかしなくていいから…私だけには自分の感情を全て吐き出していいから…』
「うぅっ…うぁぁぁっ…!姉さんっ…姉さんっ…!あぁぁぁぁぁっ…!」
なんで!?
どうして!?
どうして姉さんが死ななければならなかったの!?
姉さんを殺した鬼が憎い…憎い憎い憎い…。
堰を切ったように堪えていたものが溢れ出す。
東雲さんは私の涙で濡れる隊服も、私が握り締めたせいでしわくちゃになった羽織も気にせず、ただただずっと優しく抱き締めていてくれた。