月夜の蝶
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あの後、私は抱えられたまま梗香さんのお屋敷に連れてこられた。
『どうぞ』
「お邪魔します」
玄関で降ろしてもらい、屋内に入る。
フワッと香る梗香さんの匂いに顔が熱くなってしまう。
それを悟られまいと、先を歩く梗香さんの後に続いた。
『着替え持ってくるから、部屋で待ってて』
「ありがとうございます」
客間と思われる部屋の襖を開けると、そこには大きめな布団が一組と枕が2つ並んでいた。
「っ...!」
再び顔に熱が集まる。
久しぶりに会えたら、そういうこともあるかなと少しは期待していた部分もあるけれど…いやでも梗香さんも疲れてるでしょうし、ただ一緒に寝たいだけかも…?
「でも…もしも私と同じ気持ちなら…」
『どうした?』
「ひゃっ…!」
いきなり声をかけられビクッと肩を揺らした。
オマケに変な声も出てしまった。
『ごめん、驚かせた』
「い、いえ…」
さっきの、聞かれてないですよね?
焦りを隠しながら着替えを受け取る。
『無いと思ったらここに置きっぱなしだったか』
梗香さんはそう言って部屋に入ると、
隅に置いてあった着流しを手にした。
そのまま何の躊躇いもなく着替え始めたので私の方が焦る。
『なに?今更照れてるの?』
揶揄うようにこちらを見て笑う。
それだけなのに私の心臓は煩くなる。
私も着替えると縁側に腰掛けて月を眺める梗香さんの横に腰をおろした。
チラッと隣に目を向けると、月に照らされる綺麗な横顔と風に揺れる綺麗な銀髪が目に入る。
私の視線に気付いたのか、梗香さんはこちらを見て微笑む。
澄んだ碧い瞳、綺麗な首筋、着流しの合間から見える鎖骨。
なぜこんなにも色気がダダ漏れなんでしょうかこの人は。
そんな綺麗な肌に似合わないいくつもの傷跡。
私はその傷跡のひとつを指でなぞると、そっと唇を寄せた。
『ねぇ、誘ってんの?』
「さぁ、どうでしょう?」
『ふぅん…』
梗香さんは目を細めると、いきなり深く口付けてきた。
舌を絡めとられ、上手く息が出来ない…頭がぼーっとして身体が熱くなるのを感じた。
「んっ…んんっ、はぁ…」
『ん、じゃあ寝ようか』
「え…?」
梗香さんは私の頭をぽんぽんと撫でると立ち上がってそう言った。
「もう、寝るんですか…?」
『だってしのぶのお誘いじゃなかったみたいだし?』
いやー勘違い勘違い、とわざとらしく言うと立ち上がって部屋に入ろうとする。
あぁもう、何て意地の悪い人。
私も立ち上がり、目の前の背中に抱き着いた。
『なあに?』
「…分かってるくせに、意地悪…」
『ちゃんと言ってくれないと分からないな〜』
「っ…、だ、抱いて、ください…」
恥ずかしさでどうにかなりそうだ…。
梗香さんは私の腕を解くと正面に向き直り私を抱きしめてくれた。
『しのぶから誘ってきたんだから、手加減はしないからね』
耳元で囁かれ、背筋がゾクッとした。