群青の空に愛を唄う。
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<日本シリーズ第6戦のお話>
負けたら終わり。
そんな日本シリーズのマウンドを、監督はエースに託した。
前回こそ打たれたけれど、今回はきっと大丈夫。
そう、みんな期待している。
──────なんとなく、最後なんだろうなって気づいてた。
おそらく、オリックス・バファローズの山本由伸として投げる最後の登板。
本人からなにも伝えられてなくても、今この場にいる全員がそれに気付かないふりをしてたんだと思う。
だから、登板直前に流れる登場曲───Frontier が妙に痛かった。
『この登場曲を聞けるのも今日が最後かぁ⋯』
18 「⋯⋯どうでしょう?笑 ま、楽しみにしててくださいね?」
『⋯⋯なに、それ。』
明らかに含みのある言い方をする彼に疑問を抱いたけれど。
かっこいい登場曲をバックにマウンドに上がるその姿を、ただ目に焼き付けて。
この時の私は、この言葉の意味をまったく知らなかった。
───────私がその言葉の意味を知ったのは9回だった。
そうだ、この人はそういう人だった。
期待も、重圧も、プレッシャーも。全部はねのけて、最後まで貫く人。
たぶん彼は、はじめから9回を投げ切るつもりでいたんだ。
それなりに球数もかさんでいたし、いつもなら降板だけれど。
本当に日本最後のFrontierをバックに、
背番号18をまとった大きな背中を見つめる監督の目が、驚くほど優しくて。
もう、なにも言えなくなった。
ただただ、寂しかった。
きっと、京セラのマウンドにあがる姿を見れるのも今日が最後。
涙というファインダーで、ぼやけてしまっているけれど。
微かに宙を待ったロジンが、脳裏に焼き付けられた。
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