カッパードVSバーン

「はあ…はあ…何とか戻ってこれたぜ…地球によ…」

何故だかしらないが星空警察に連行されている最中にメカ星人の奴が暴れて出来た穴から脱出した俺は、命からがら再びこの星へと舞い戻ってきた。
もうスタードロップがいないのは分かってはいるが、とことん俺様をコケにしやがったあのプリキュアとやらに復讐しねえとどうにも腹のムシが収まらなかった。
…特にキュアスターってやつ…許せねえ…俺のことぞ散々殴りやがって…
…今度こそ、宇宙を駆けるハンターであるこの俺様、ニトロ星人のバーン様が、お前に本当の恐怖を教えてやるぜえ…ひっひっひ。

復讐の炎を燃やして、俺はキュアスターが通っている学校とやらの近くでやつを探していた。

「ひひひ…この時間は奴は呑気にお友達と遊んでるんだろうな、手始めに周りの連中から攻撃してやるかな…」

っと校舎をぐるぐるしていると

「おい、貴様、何やってるんだ」
「!!」

…一応一般人に見つからないよう気を配っていたつもりだが
仮にも歴戦の俺様に、声をかけるまで存在に気付かせないなんてやつ。
…どうやらこの星にもいるみてえだな、少しは骨のある奴が…

「お前さっきから星奈ひかるのクラスを見ながらにやにやしてるな。気持ち悪い、さてはストーカーだな!」
「って!誰がストーカーやねん!」

…っと、突拍子もないことを言われたのでついノリツッコミをしてしまった。振り返ると、そこには…

「…おやおや、お前は確かノットレイダーのカッパードって奴だな」

噂に聞いていた、スターパレスを乗っ取ろうとしているならず者集団だな。今は確かトゥインクルイマジネーションってお宝を狙ってこの星にいるんだっけか。

「ひひ…ノットレイダーって確かかわいそうな連中の集まりだったよな、失せな。今はお前の相手をしてる暇はねえぜ」
「あの…その…」

っとビビっているんだろうか。噂に聞いた通り、集団で動いていて規模は大きいみてえだが、所詮は弱者の集まりのようだな。

「頭燃えてるけど、お前大丈夫?」
「うっせーな!こういう個性の宇宙人なんだよ!」

…って、調子の狂う奴だな。いっちょぶっ飛ばしておいた方がいいかな。

「…って、その様子を見るに、お前も訳ありで星奈ひかるを追っているようだな」
「…ほう」

っと、俺の恫喝を見ても怯まない辺り、さすがは戦士と言ったところか。多分ただの馬鹿だとは思うけど。

「わりいけど邪魔をするんだったらまずはてめえから消し炭になってもらうぜ。俺は今すぐにでもあの呑気なキュアスターって奴の悲鳴が聞きたくてたまらねえんだよ…ひっひひ」
「ほう」

っと。
こいつの風貌からして、どちらかというとキュアスターのストーカーしてるのはお前のほうじゃね?
っとは思ったが、意外にも俺の言動には達観した反応を示していた。

「お前がどこの馬の骨の宇宙人かはしらないが、その点に関しては意見が一致するな。実言うわたしも星奈ひかるには一度経験してほしいとは思ってるのだよ、想像も及ばないような残酷な現実に直面した時に、どう反応するのかを」

っと歪んだ表情を浮かべるカッパード。

…なるほどなるほどね。

「…あんたも大概歪んだ感性のお持ちのようで」
「ふん、褒め言葉として受け取っておく」
「…じゃあそこで大人しく見てな、宇宙を震撼させているこの残酷な宇宙ハンターの俺が、この学校とやらを火の海にしてやるところをな」

その時、キュアスターはどんな表情をするだろうか。平和ボケした連中が血相を変える瞬間は、いつみても俺に生を実感させる。
自分が、この宇宙で上位の生命だと言う感覚に浸らせる。

「ひひ…ひひ…」
「俺はお前を止めない。やってることは大差ないとは思うからな。しかし」

校舎に向かって行く俺を止める訳でもなく、カッパードは戯言を呟く。

「…多分、お前じゃ勝てないぞ」
「…け、知ったような口を」

お前みたいな群れで行動するような奴に、俺様の強さが分かるものか。

「…その様子だとお前は一度キュアスターに負けて、特に対策を練らずに単純に動物的なプリニティブなマウント欲求を満たすためだけに地球に戻って来たようだな。星奈ひかるを舐めるなよ。一度戦った相手に負けるような連中ではない。お前と星奈ひかるの戦いを見学しようと思ったが、どうやら勝敗は見えているようだな」

…むかつく。

…が、言わせておこう。

こいつは俺が初戦でキュアスターを圧倒していたことはしらないだろう。
ス タードロップとフワだかっていう変な生き物の力で妙な力を発動させてあの時は負けたが
俺の見立てではあの能力は一過性のものだ。二度同じ出力の攻撃はしてこないだろう。

残念だな、ノットレイダーの雑魚。キュアスターの次はついでにおめえも燃やしてやるから覚悟しておけよ。

「ひっひひ、キュアスターを燃やした後は。前の星みたいに星中の水を売り捌いて、からっからな星にでもしてやろうかな」
「…おい」
「んだよ!まだ文句あんのか!いい加減しつこいぞ!」

威嚇で一発炎を飛ばしてやろうかと振り向いた時。

ずどん!

っと衝撃と共に俺の頭は地面に激突していた。

「…は?」

みしみしと頭蓋骨が軋む音がする。
…何が起きた?っと思ってとりあえず目線だけは上を向こうとすると。

「…気が変わった」

太陽を背にして、残酷に見下ろすカッパの目線と目が合ってしまった。

「…お、お前…本当にさっきのカッパードか…顔つきがちが…ああ!

まだ言葉の途中だと言うのに、頭を抑える握力を強められて遮られる。

「喋るな。お前にこれからいくつか質問がある。答えろ」
「答える訳ねーだろ!ばーか!イグニッション!」

っと頭の炎の火力を上げて拘束を振り切ろうとするけど。

げしい!

っと腹部に衝撃が走る。

そのまま吹き飛ばされてフェンスを突き破り、学校の敷地の中に転がりこんだ。

「ぐほあっ!」

「お前の見た目を見ていて既に何個か弱点を見つけた。そんな丸分かりの弱点を抱えて自覚していないようなら、そもそも到底キュアスターへのリベンジは無理な話だったな」

「はあ…はあ…馬鹿め!」

何かほざいているようだが、距離が取れてしまえばこちらのものである。

「燃やし尽くしてやるぜ!カッパ野郎!イグニ…」

「…カッパードストライクを使うまでもないな」

めしい…!

っと、今度は岩の様に固い拳が俺の鼻を潰して更に後方へと突き飛ばした。

「がああっ!!!」

血をだらだらと流しながらも、俺は背後から追撃しようと足音が近くに来ていることを察知する。またすぐに拳がとんでくるだろう。

「イグ…!」
「遅い」

そして今度は二発殴られる。

自分の血が火穴を塞いでしまって、火種が弱くなってくるのを感じる。

「お前は強い炎を自身の身体から出すのを得意技としているようだが、発動まで数秒のタイムラグがあるな。恫喝で相手を怯ませているうちに発生硬直を誤魔化す戦い方をしてきたようだが、その戦法は俺には効かん。お前の攻略は簡単だ。炎を出される前に速攻、あるいは」

っとカッパードが連続攻撃をしてくるので、俺はたまらず緊急用の煙幕を炊く。

「くそ!」

あんまり派手なことをやるとキュアスターに気付かれるから嫌だったが、ここは四の五のいってられねえだろう。
何とか引火の時間さえ作れば、こんな奴こんな奴。

しかし

「どうした、イグ何とかはしないのか?」
「ひ…」

っと、引火したくとも、煙幕が充満する前にこいつは俺と距離を詰めて皮一枚肉薄していた。

「少し観察すれば分かる。ニトロ星人。お前は身体から炎こそ出しているが、逆にその炎から自分の身をどう守っている?元々炎に強い種族かもしれないが、残念だが俺は別の星でフレアという奴に会ってるから分かるんだよ。お前のベースはあくまで人間で、火を出している穴付近には自分に熱がこないように皮膚にガード機能が備わっているタイプの宇宙人だ。距離さえ詰めて私もそのバリアの中に入ってしまえばいいだけの話さ。格下には通じても、宇宙は広いんだ、小手先だけで勝てるのもそろそろここらが限界だったな」
「…何で…」

後ろにたじろいでしまうが、こいつは耐熱バリアから離れまいと俺と連動して動いてくる。き、気持ち悪い…

「ノットレイダーなんて弱い奴らの集団に!お前なんかやべーやつがいるんだよ!」
「…何てことないさ。観察して、想像すればお前の攻略何て、中学生にだって分かる。私はこの星に来て、星奈ひかると戦って強くなったんだよ」
「くそ!こうなったらヤケだ!」

このまま一方的に殴られるくらいならいっそ、自爆覚悟で最大イグニションでここいらいったいを吹き飛ばして…

「そしてもう詰みだ」
「へ?」

カッパードに足払いをされた俺は、後方にあった段差の様なものに気付かないで落下する。
その段差の下には

ざっぱーん

っと、何故だか学校の中に水があった。

「お前は知らないと思うが、地球の学校には泳ぎの授業でプールが備わってるんだよ。羨ましいとは思うが、今はコケが湧いて入る気のしないプールだがな」
「あっぷ!あっぷ!た…助けて!」
不意だったためか肺に水が入り出していた。
こ、こいつ、何故だか知らないが急に強くなって頭もよくなってやがる…む、無理だ…このままでは勝てないどころか…
「まあ、今更コケが一つくらい増えたところで変わらんか」
「た、助けてくれ!」
「それはこれから俺がする質問の内容による」
ざばん!っと頭を水の中に抑え込まれる。
い、息が出来ない…鼻を通して食道や肺に水が充満してくる
…し、死ぬ…
ざぱ
っと、引っ張られるようにして俺はぬいぐるみみたいに水面に上げられる。
「ぶは!」
「俺の故郷の水を盗んだハンターはお前か?」
「な!何のこと…っぶ!」
っと、間を置かずにまた水の中に沈められる。
そして俺の意識が飛ぶタイミングを分かっているのだろうか、気を失う前にまた無理矢理浮上させられる。
「ああ!ああ!」
「真面目に答えないと殺す」
「しらねえ!しらねえよ!っていうかいちいち覚えてねえよ!これまで水の盗みをした星の数なんて」
…あ、まずい。まともな思考が出来ないから、つい本当のことを言ってしまった。
「そうか、じゃあ間違ってたら悪いが。俺の故郷を滅ぼした奴の可能性が少しでもある以上、生かしておく価値はないな」
「あああ!いやあああごめんなさい!!!
「…そうやって」

先程から残酷な顔をしているカッパードは、サングラスの奥で瞳を揺らしているように見えた。

「命乞いをしてきたやつを何人殺してきた。報いを受けろ」

「ご!ごめんなさいいいいいいいいっ!」

「そこまでにゃん!カッパード」

っと、次の瞬間また水の世界に沈まれるかと覚悟していたが、どこかで聞いたことのある声がカッパードの凶行を止めてくれた。

「…バケ…キュアコスモか。邪魔をするな」
「…いいんにゃ、邪魔させてもらうにゃん。そいつは私のボランティア期間を減らす為にアンに渡さなきゃいけないやつなの。よこしなさい」
「…それはお前の都合だろ。貴様なら分かるだろ、こいつは俺の故郷を滅ぼしたやつかもしれないんだぞ」
「だからこそ、私はあんたを止めなければいけないにゃん」

ぺし、っと軽い音ではあるけど。その音の後に俺はカッパードに鷲掴みされていた握力から解放されて自由になっていた。

「げほ…!ごっほ…!」

「私はアイワーンを許したにゃ。人は誰だって反省する、そいつも仮にも人間にゃん。殺すんじゃなくて、ちゃんと人として反省しつづける地獄を法的に味合せることが、本当の復讐じゃないにゃん?無法者のあんたに言うのも変だけどね」
「ふざけるな、外道に人権はない」
「それにね、カッパード。一応あんたとは元同僚だから、同じ道に落ちてほしくはないにゃん。信じる信じないかはあんたの勝手だけど、アンから借りてきたこいつの犯罪歴にゃ。こいつが滅ぼしてきた星の中に、本当にあんたの故郷の星があるの?」
っと、乱暴に猫女から差し出された紙を受け取って吟味するカッパード。
「…とりあえずこのリストにはないな」
「…じゃあ、あんたは今、勘違いでその手を汚そうともしてた、ってことね。宇宙の騎士として恥ずかしくないの?」
「…だがこのリストに書いているが全部とは限らないだろ、おい、答えろ、ニトロ星人」
「ひいいい!ちょ…ちょっと今は思考が及びません…」
「…んじゃ。とりあえずこいつが過去の過ちを第三者の目で公正に裁いてもらうとことに運ぶから、その結果が出次第今日の続きをするにゃんね。少なくともこんなところで手を汚したら、星奈ひかるに嫌われるわよ」
「…今は星奈ひかるは関係ないだろ…が」
っとカッパードは這いつくばる俺を見下し、吐き捨てるように言う。
「…確かに、こんなゴミに時間使うのもアホらしく思えてきたな…おい、ニトロ星人」
「は!はいいいっ!」
ぐい、っと顎を上げられて、先程と変わらない、残酷な侵略者の顔になっていうカッパード。

「もう二度と、この星に近寄ろうとするんじゃないぞ、このクズ」
「はい!!!!しません!しませんから命だけは!ああ!命だけは取らないでください!」

ああ、地球。何て恐ろしい星だったんだ。
早く、どこでもいいから警察でもいいから、俺をここから逃げさせてくれー。
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