彼が大人になった時
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16
場所はファミレスから移り変わって、俺がもともと行きたかった新店のバー、っていうのもマンションの近くにできたからちょっと行きたいなぁって思った程度なんだけど。
セッちゃんたちが、この間来たのと雰囲気が違うねぇ。なんていちゃついていたのを横目に入店したものの…
4人でも少し余裕のあるソファ席に案内されたというのに今現在座っているのは俺と黒斗のみ。
「黒斗めちゃくちゃ弱いからってセッちゃんが言うからどうしようかと思ったけど、案外飲めるじゃん」
「そうか?でも、蒼空はもっと強いんだよなぁ」
若干舌足らずになりかけている黒斗だけど、会話の応答はまともにしてるし?なんでセッちゃんがあんなに目を光らせてたのか不思議なくらい、黒斗はさらっと2杯目を飲み干そうとしているところだ。
「今なら空いてるし、そっち側に座っていいか?」
なんて自分のグラスを持ちながら俺の返答を待たずして隣に腰かける黒斗。
もともとはセッちゃんと横並びにしていたのに…なんで?
「俺の横にいたら後で怒られない?」
「誰に」
無表情ながらも、心底わからないというように首を傾げる黒斗。
まぁ、出来立てほやほやで自覚があまりっていうのもわからなくはないけど、こんな天然なんて危なすぎない?まして黒斗だし。
「セッちゃんに。そもそもあまりお酒も飲ませないでって最初に言われたしさぁ。」
まぁさすがにセッちゃんの嫉妬深い性格が出てるだけなんだろうなぁ~。なんて思っていると、くすくすと黒斗が笑って手元のお酒を一口含む。
まぁ確かに、かわいげのあるカルーアミルクなんて飲んでたらさすがに酔いつぶれることはないか…。
「店側が見える席だったから、疲れるんだよな。今度から…こういう、お前らと飲むときくらいは…壁側に座る」
「あぁ、…うん。そういうことだったんだ?それなら早いうちに言ってくれればよかったのに。」
「凛月は昔から…、そういう所見せると背負いやすい性格してるから。あまり心配させたくなくてな…」
相当疲れているのだろうか、黒斗がいつもと違ってだいぶゆっくりと喋っている。
まぁ、こういう場に来ること自体慣れていないのもあるだろうし、人の出入りが多い店ともなれば観えてしまう黒斗にとっては疲れるのかもしれない。
俺だって最近飲めるようになったから、慣れているとまでは言えないけど、なにも気遣わなくてもよかったのに。
なんて考えながら自分も一口カクテルを含む。と
「…んー」
「?黒斗…っちょ」
突然、黒斗の頭ががくん、と重力に負けて落ちそうになっていくのを視界に捉え、反射的に手を伸ばす。
が、俺の思っている展開にはならず黒斗はふらりと重たそうに頭を上げてぼーっと一点を見つめている。
俺としては正直ほっと一安心するのもつかの間。
「りつ~、お前はいつもいいよなぁ…」
「えっ、なに!?」
がし、と力強く俺の肩に手を置いて、まるで今にもバシバシと背中を叩かれそうな空気を醸し出している。どこぞの上司?
でも力のわりに声に覇気はなく、いわゆる酔っ払いによる絡みだというのは否が応でもわかる。
「いやでも、りつくらい気の利く仲間ならそうもなるか~…」
なに?なんの話…?と混乱していると今度はその力が弱くなり、ソファの背もたれに横向きでぐったりと項垂れる黒斗。
「おれ、泉としばらく会ってなかったせいで…いずみの考えてることがわからない。」
「……え、うん」
え、のろけ話?
めちゃくちゃめんどくさいんだけど…
「…りつは、ずっとユニットで一緒にかつどーしてて、背中あずけるくらい仲がいいだろ?」
「いや、どうかなぁ。俺は、まぁ…そりゃ気が合うし、仲間というか友達というか…」
「…ずるい」
う~ん、と黒斗に言われ、改めてセッちゃんとの関係を思い返しながら言葉にすると、小さく、しかし芯のある声で言われる。
「はぁ?ずるいって…そもそも二人は恋人同士になってるんだから友達とか仲間なんかよりずっと深い関係でしょ?」
呆れながらそう言い放つも黒斗はムッとして、その表情を崩すつもりはなさそう。
というか、黒斗って酔うと寝るって聞いたんだけど?
これじゃあまるで…
「子供みたいだね~」
「っ、そんなことない!俺は、ほんきで…心配なのにっ!うらやましくて、…もう、いちばんそばで…守ってやれないからっ、」
「えっ!?まって黒斗、泣いてるっ!?」
うぐっ、なんて声を押し殺しながらも目から涙を流す黒斗があまりにも意外過ぎてこっちが固まってしまう。
いや、泣き顔なんて見たことないんだけど…え、俺が見ていいもの?って、違うそうじゃなくて…
「リッツ~!戻ったぞ~!」
「最悪のタイミングっ!」
思わずそう口に出してしまうと、セッちゃんがはぁ?と訝しげに俺を見る。そりゃそうだよね。
そして、隣に座っている黒斗を視界に捉えると、ずんずんと近寄ってきて…
「なんでくまくんの横に黒斗が座ってるわけぇ?」
と案の定の反応。
すると、俺もセッちゃんも予想だにしないことになる。
「うぅぅっ!いずみぃぃ!!」
「うぉっ!?眼帯が泣いてるっ!」
さすがの月ぴ~も驚きを隠せず、すぐさま黒斗のもとに駆け寄り、大丈夫かっ!どこか痛いのか!?と心配する。
幸い…というか、まぁ行ってもバーだからちょっと客が泣いてるくらいじゃ騒ぎにはならないけど…
「セッちゃん…?」
先程から微動だにせずソファの後ろに突っ立ったままの人物に声をかける。と
「黒斗が…泣いてる…ど、え?どうしたら良いの?」
完全に狼狽えていた。
「嘘でしょ…ここに来て恋人まで使い物にならないとか勘弁してほしいんだけど…」
呆れて肩をすくめているとうわぁぁ、なんて言いながら黒斗がセッちゃんの腕を掴みソファに来るよう引っ張る。
いや、そりゃ大きめのソファだけど…この二人と一緒に座りたくない…。そう思うが早いか、月ぴ〜を手招きしながら壁沿いのソファに座る。
まぁ、月ぴ〜は誘ってくるわけないんだけど…
「まっ、黒斗!わかったからちゃんとそっち行くからぁ!このままだと背もたれから乗り込んじゃうっ!」
セッちゃんの必死の抵抗に何を言ってるか解読できない返事をして、黒斗が靴を脱いでソファの上で膝を抱えて座り込む。
「黒斗…どうしちゃったの?もう…こんなになるならやっぱり一人で来ればよかった」
「黒斗…?大丈夫?くまくんになにされたのぉ?」
「セッちゃん…怒るよ?」
しれっと俺のせいにされそうになるのを止め、黒斗の様子を伺う。
けど、本人は膝に顔を埋めて反応しない。
「あはは、なんか子供みたいだ!お酒飲むと溜まってた感情が弾ける感じ!わかる!おれも最初そうだった!」
ばしばしと黒斗の背中を叩きながら豪快に笑う月ぴ〜は、それこそお酒3杯飲みきった後だ。とは言え、そもそも素面と態度が変わらないから酔っ払っているという感じではない。
「…俺…ねむい。そら迎えに、言っ…といてくれ」
「ん〜、そら?誰?」
「そら!」
「はいはい、みやくんのことでしょぉ?はぁ…寝落ちるだけのほうがまだマシだったかも…。というかみやくん夕方から仕事だとか言ってたから無理でしょ?俺が送ってあげるから」
なんて悪態をつきながらもセッちゃんは黒斗の頭を撫でる。
「ん、いずみだ…。泉も一緒にうちに帰るのか?」
「………うん」
「いやセッちゃん!それ送り狼!!」
「でもっ、チャンスでしょぉ!?」
「つい昨日までちゃんとしたいって言ってたくせに!」
と酔っ払いそっちのけで俺とセッちゃんは大声を出してしまうと、
「うるさい保護者たちだなー?な、黒斗」
なんて月ぴ〜に指をさされるのだった。
::END
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場所はファミレスから移り変わって、俺がもともと行きたかった新店のバー、っていうのもマンションの近くにできたからちょっと行きたいなぁって思った程度なんだけど。
セッちゃんたちが、この間来たのと雰囲気が違うねぇ。なんていちゃついていたのを横目に入店したものの…
4人でも少し余裕のあるソファ席に案内されたというのに今現在座っているのは俺と黒斗のみ。
「黒斗めちゃくちゃ弱いからってセッちゃんが言うからどうしようかと思ったけど、案外飲めるじゃん」
「そうか?でも、蒼空はもっと強いんだよなぁ」
若干舌足らずになりかけている黒斗だけど、会話の応答はまともにしてるし?なんでセッちゃんがあんなに目を光らせてたのか不思議なくらい、黒斗はさらっと2杯目を飲み干そうとしているところだ。
「今なら空いてるし、そっち側に座っていいか?」
なんて自分のグラスを持ちながら俺の返答を待たずして隣に腰かける黒斗。
もともとはセッちゃんと横並びにしていたのに…なんで?
「俺の横にいたら後で怒られない?」
「誰に」
無表情ながらも、心底わからないというように首を傾げる黒斗。
まぁ、出来立てほやほやで自覚があまりっていうのもわからなくはないけど、こんな天然なんて危なすぎない?まして黒斗だし。
「セッちゃんに。そもそもあまりお酒も飲ませないでって最初に言われたしさぁ。」
まぁさすがにセッちゃんの嫉妬深い性格が出てるだけなんだろうなぁ~。なんて思っていると、くすくすと黒斗が笑って手元のお酒を一口含む。
まぁ確かに、かわいげのあるカルーアミルクなんて飲んでたらさすがに酔いつぶれることはないか…。
「店側が見える席だったから、疲れるんだよな。今度から…こういう、お前らと飲むときくらいは…壁側に座る」
「あぁ、…うん。そういうことだったんだ?それなら早いうちに言ってくれればよかったのに。」
「凛月は昔から…、そういう所見せると背負いやすい性格してるから。あまり心配させたくなくてな…」
相当疲れているのだろうか、黒斗がいつもと違ってだいぶゆっくりと喋っている。
まぁ、こういう場に来ること自体慣れていないのもあるだろうし、人の出入りが多い店ともなれば観えてしまう黒斗にとっては疲れるのかもしれない。
俺だって最近飲めるようになったから、慣れているとまでは言えないけど、なにも気遣わなくてもよかったのに。
なんて考えながら自分も一口カクテルを含む。と
「…んー」
「?黒斗…っちょ」
突然、黒斗の頭ががくん、と重力に負けて落ちそうになっていくのを視界に捉え、反射的に手を伸ばす。
が、俺の思っている展開にはならず黒斗はふらりと重たそうに頭を上げてぼーっと一点を見つめている。
俺としては正直ほっと一安心するのもつかの間。
「りつ~、お前はいつもいいよなぁ…」
「えっ、なに!?」
がし、と力強く俺の肩に手を置いて、まるで今にもバシバシと背中を叩かれそうな空気を醸し出している。どこぞの上司?
でも力のわりに声に覇気はなく、いわゆる酔っ払いによる絡みだというのは否が応でもわかる。
「いやでも、りつくらい気の利く仲間ならそうもなるか~…」
なに?なんの話…?と混乱していると今度はその力が弱くなり、ソファの背もたれに横向きでぐったりと項垂れる黒斗。
「おれ、泉としばらく会ってなかったせいで…いずみの考えてることがわからない。」
「……え、うん」
え、のろけ話?
めちゃくちゃめんどくさいんだけど…
「…りつは、ずっとユニットで一緒にかつどーしてて、背中あずけるくらい仲がいいだろ?」
「いや、どうかなぁ。俺は、まぁ…そりゃ気が合うし、仲間というか友達というか…」
「…ずるい」
う~ん、と黒斗に言われ、改めてセッちゃんとの関係を思い返しながら言葉にすると、小さく、しかし芯のある声で言われる。
「はぁ?ずるいって…そもそも二人は恋人同士になってるんだから友達とか仲間なんかよりずっと深い関係でしょ?」
呆れながらそう言い放つも黒斗はムッとして、その表情を崩すつもりはなさそう。
というか、黒斗って酔うと寝るって聞いたんだけど?
これじゃあまるで…
「子供みたいだね~」
「っ、そんなことない!俺は、ほんきで…心配なのにっ!うらやましくて、…もう、いちばんそばで…守ってやれないからっ、」
「えっ!?まって黒斗、泣いてるっ!?」
うぐっ、なんて声を押し殺しながらも目から涙を流す黒斗があまりにも意外過ぎてこっちが固まってしまう。
いや、泣き顔なんて見たことないんだけど…え、俺が見ていいもの?って、違うそうじゃなくて…
「リッツ~!戻ったぞ~!」
「最悪のタイミングっ!」
思わずそう口に出してしまうと、セッちゃんがはぁ?と訝しげに俺を見る。そりゃそうだよね。
そして、隣に座っている黒斗を視界に捉えると、ずんずんと近寄ってきて…
「なんでくまくんの横に黒斗が座ってるわけぇ?」
と案の定の反応。
すると、俺もセッちゃんも予想だにしないことになる。
「うぅぅっ!いずみぃぃ!!」
「うぉっ!?眼帯が泣いてるっ!」
さすがの月ぴ~も驚きを隠せず、すぐさま黒斗のもとに駆け寄り、大丈夫かっ!どこか痛いのか!?と心配する。
幸い…というか、まぁ行ってもバーだからちょっと客が泣いてるくらいじゃ騒ぎにはならないけど…
「セッちゃん…?」
先程から微動だにせずソファの後ろに突っ立ったままの人物に声をかける。と
「黒斗が…泣いてる…ど、え?どうしたら良いの?」
完全に狼狽えていた。
「嘘でしょ…ここに来て恋人まで使い物にならないとか勘弁してほしいんだけど…」
呆れて肩をすくめているとうわぁぁ、なんて言いながら黒斗がセッちゃんの腕を掴みソファに来るよう引っ張る。
いや、そりゃ大きめのソファだけど…この二人と一緒に座りたくない…。そう思うが早いか、月ぴ〜を手招きしながら壁沿いのソファに座る。
まぁ、月ぴ〜は誘ってくるわけないんだけど…
「まっ、黒斗!わかったからちゃんとそっち行くからぁ!このままだと背もたれから乗り込んじゃうっ!」
セッちゃんの必死の抵抗に何を言ってるか解読できない返事をして、黒斗が靴を脱いでソファの上で膝を抱えて座り込む。
「黒斗…どうしちゃったの?もう…こんなになるならやっぱり一人で来ればよかった」
「黒斗…?大丈夫?くまくんになにされたのぉ?」
「セッちゃん…怒るよ?」
しれっと俺のせいにされそうになるのを止め、黒斗の様子を伺う。
けど、本人は膝に顔を埋めて反応しない。
「あはは、なんか子供みたいだ!お酒飲むと溜まってた感情が弾ける感じ!わかる!おれも最初そうだった!」
ばしばしと黒斗の背中を叩きながら豪快に笑う月ぴ〜は、それこそお酒3杯飲みきった後だ。とは言え、そもそも素面と態度が変わらないから酔っ払っているという感じではない。
「…俺…ねむい。そら迎えに、言っ…といてくれ」
「ん〜、そら?誰?」
「そら!」
「はいはい、みやくんのことでしょぉ?はぁ…寝落ちるだけのほうがまだマシだったかも…。というかみやくん夕方から仕事だとか言ってたから無理でしょ?俺が送ってあげるから」
なんて悪態をつきながらもセッちゃんは黒斗の頭を撫でる。
「ん、いずみだ…。泉も一緒にうちに帰るのか?」
「………うん」
「いやセッちゃん!それ送り狼!!」
「でもっ、チャンスでしょぉ!?」
「つい昨日までちゃんとしたいって言ってたくせに!」
と酔っ払いそっちのけで俺とセッちゃんは大声を出してしまうと、
「うるさい保護者たちだなー?な、黒斗」
なんて月ぴ〜に指をさされるのだった。
::END
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