彼が合宿に参加するとき
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-合宿-1日目-無人島-コテージ前-
「りっんっさーん!!!」
「あら…?どうしたの?」
物凄い勢いで走ってくるのは間違いなくあやちゃん。が俺に飛びついてくるかのような勢いで見事に手前でこける、痛そう。
「やーねぇ…顔に傷ついたらどうするの?って…」
ぐぬぬと顔をあげるあやちゃんの左目には黒斗くんと同じような眼帯。
「ちょっと…あれ?あ、あやちゃんよね?」
「うん、間違いなく綾人だけど。嬉しさのあまり黒斗の眼帯奪っちゃった。ふふふ、これで左目だけでも俺と黒斗は一体化してることになる」
「…気持ち悪。」
思わず素の声であやちゃんを罵倒してしまう。だってその顔アイドルがしちゃいけない顔だし…。溜め息を吐きながらあやちゃんを叩き起こすとゆらりと俺にも伝わるくらいの殺気があやちゃんの後ろから流れてきて途端に硬直してしまう。
「あー、うん。りんさん、ちょっと、目瞑ってて。血がね?出るかもしれないから…」
そう言っている途中から黒斗くんは構わずあやちゃんの胸倉をつかむ。しかし左手で目元を隠しているためそれ以上手は出ないが代わりにぼそぼそと呟き始める。
2人を追いかけてきたオトくん、トキヤちゃん、スバルちゃん。3人とも随分と焦った様子でそのあとから何事かとみんなも帰ってくる。
「まって!!ほんの出来心で…!ごめんってごめんって!?俺の周りにも黒斗の周りにも死ねって言葉一杯見えるからやめて!聞こえてるから見えてるから!ごめんなさいごめんなさい!俺のトラウマだからやめろぉぉぉぉ!!」
あやちゃんが涙目になりながら思い切り絶叫したところで黒斗くんがその手を放す。
絶叫していたあやちゃんは間違いなく黒斗くんと同じ声で叫んでいたが、手を離された途端力なくへたり込み軽く震えていてうぅっとぐずっていた。
「黒斗さん…」
「…真…っ、ま、待てそれ以上近づくなよ!今まだ、眼帯してな…っうぁ!?」
「黒斗くん!」
黒斗くんがまこちゃんを視界に入れた途端に酷く慌てだす。一歩近づこうとするまこちゃんに対し怯えるように一歩ずつ下がる黒斗くんに危ないと声をかけようとしたときにはもう遅く、晩御飯の為に並べていた椅子に足が引っかかり思い切りこけてしまう。
「大丈夫!?」
「待ってりんさん!!」
俺が黒斗くんに近づこうとすると慌ててあやちゃんが走ってくるけれど、ほんのタッチの差で俺は黒斗くんの顔を見てしまった。
「っ…!」
さぁっと顔が青ざめていくのがわかる。左目が見えないというのはわかっていた。でも眼帯をしているせいで逆に何処か遠い話のような気がしていて実感はわいていなかった。けれど、倒れた拍子に隠すことをしていない黒斗くんの顔、いや、左目を見て嫌でも確信する。
「りんさん離れて。黒斗大丈夫…?」
落ち着いた声色であやちゃんは私を離れたところに移動させ、すぐさま黒斗くんの元へと戻っていく。黒斗くんはすぐに左目を隠していたけど俺が見たことに酷くショックを受けているようだった。
「…お前が眼帯取るから…」
「うん、ごめん。だってなんか舞い上がっちゃって。」
2人にとってはその光景は普通なのだろう。あやちゃんはひるんだ様子などまったくなく黒斗くんに眼帯を付けてあげている。
本当ごめんね。と一言添えると黒斗くんは溜め息を吐いた。
黒斗くんは俺を見ると、安心させるためなのか力なく笑みを浮かべるも、その光景が忘れられない以上一歩反射的に下がってしまう。
「あ…えっと、お見苦しいもの見せてすいません。なるべく、早く忘れてください。いいことないんで」
酷く傷ついた様子で謝られ、罪悪感にかられるが体は言うこと聞かず身構えてしまうばかりだった。
それを見てあやちゃんはさらに申し訳なさそうに顔をゆがめるが後ろで黒斗くんが声を張り上げる。
「時間だ。全員席についててくれ。変な事故起こしてごめんな。腹減ってるだろ。今、全員分用意する。」
いつもの、無表情のまま黒斗くんは全員に声をかけて席に座らせようとしたがみんな手伝う気満々のようで黒斗くんについていく。
「りんさん、ほんとごめんね…巻き込んじゃって。」
困った笑顔はやっぱり双子のようで黒斗くんと同じような顔を浮かべる。しかしそのあといつも通りの笑顔に戻って少しぞっとしてしまう。
「黒斗の目の事はね。俺だけが知ってる特別なことだったのに。…りんさん。明日にはさ、いや本当は今すぐにでも、忘れてほしいんだけど。」
「え…?」
「俺だけの特別をなくさないでよ。」
酷く低く冷たい声でそう言われる。その紫色の瞳が一層冷酷さを表しているようで呆然としてしまった。
「綾人!お前手伝わないならレッスンもしないぞ…!」
「あ、えぇっ!?そんなちょっとの事でせっかくの2週間を無駄にはしたくない!俺運ぶ係やる!」
そう言って走っていくあやちゃんにつられついていく…あやちゃんの顔をあんなに近くで見たのは初めてだった。みんなにはカラコンだと言ってるあの紫色の瞳は…どう見ても裸眼…
「紫って…ううん、紫色の目は…独占の象徴ってどこかで聞いたことが…何かSFものの撮影の時だったかしら…」
そんな嘘みたいなことを呟くもあやちゃんのさっきの言動に妙にしっくり来てしまって本日何度目かわからない背筋が凍る体験をする。
「黒斗くんって、本当に大丈夫なのかしら。」
自分があの中に入り込むことは不可能にせよ…もし本当にあやちゃんがそういう方向性で黒斗くんにくっついてるなら心配でしょうがない…
「ううぅ、アタシ明日のお昼にはここ発たなきゃいけないし…心配でしょうがない!」
「月宮せんせぇ?座らないんですか…?」
「へ?あ、あれ?もう準備できたの!?」
「そりゃあ10人以上いればさっさと終わるって。ほら、食べようぜ」
翔ちゃんとなっちゃんに促され席に座るとみんなで手を合わせていただきますと声をそろえる。俺はいわゆるお誕生日席の位置にいて横には黒斗くん、反対側にはオトくん…
黒斗くんが居るだけでちっとも落ち着かないのにその横にべったりとくっついたあやちゃんが視界に入るともう気が気じゃなくなってしまう。黒斗くんって本当にわかったうえでこんなに付きまとわせてる…?
「黒斗…くん?」
「はい…?」
黒斗くんはというと先ほどの件はなかったかのような態度で、まるで…本当にすっぽりと忘れてしまってるような錯覚すら覚える。
「さっきアタシにね、あやちゃんが嬉しいことがあったって報告しようとしてたんだけど、アタシと入れ替わりでレッスン見に行った時に何かあったの?」
「…あー、臨時ユニット。みたいな…」
「臨時ユニット?」
「ごめんなさい、これは夢ノ咲の制度なんですけど。それで、合宿の最後に毎度ライブやるじゃないですか…それにその臨時ユニットで参加しようという話になって、」
「はいはーい。俺が説明する。もちろんここにいるST☆RISHもTrickstarも関係あるからな。…当初はこの合宿を終えた後、うちの事務所のイベントとして参加グループで成果を出すためにライブをする。それはなんとなく聞いてるよな。毎年何回かやってるそうだし?それで、単にいつものグループで出たらつまらないからってことで、黒斗の学院のヒントをもらって作っちゃおうぜってこと。その、臨時ユニットってのを!」
「えぇ?それってつまり?」
「林檎さんの考えてる通りですよ。今回のこの部屋割のグループで、ユニットを組んでもらいます。合宿明けのライブにはそれで参加します。」
無表情ではあるものの声色は心底楽しみといった様子で話す黒斗くんになんだかその行動力はやっぱりそういう血筋なのね…と呟くしかなかった。
::Temporaryunit Live
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