彼が大人になった時
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15
時刻はレッスン終わり、指定の事務所からマンションまで徒歩数分の道を全員で並んで帰る。って言っても、防犯上まじですぐ近くのせいであっという間にマンションのロビーなんだけど。
「俺はちょっとやりたいことあるからここで解散~♪」
「リッツ!今日も散歩か?たまにはおれもしようかと思っててな!ついてっていい?」
「えぇ〜、今日は散歩じゃなくて、美味しいカクテルを出すバーに行ってみたいんだよねぇ。月ぴ〜には悪いけど静かに飲みたいしなぁ」
ス〜ちゃんもナッちゃんもバーはまだ早いし、なんて言って手を振って各自部屋へと帰っていく。
ス~ちゃんは、飲めるようになったらぜひご一緒させてください!とちょっとだけ目をキラキラさせてたけど…
「おれが静かにしないって決めつけは良くないと思う!ちゃんと大人しくしろって言われたらするし!」
そんな二人に対して帰る素振りどころかむっとして眉間にシワを寄せる月ぴ〜に、えー?と言ってみせるも当の本人はついてくる気満々のようで、逆にこうなってくるともう追い払うのも面倒になる。
やれやれと半ば諦めかけている中、視界の隅でスマホを眺めながら立ってるセッちゃんが気になってしまう。部屋に戻る気配はないし。
「……セッちゃんは?飲めないからバーとか来ても楽しくないだろうけど…月ぴ〜の子守手伝ってくれたり?」
「子守ってなんだ!」
「…いや、そうじゃないし」
と、口を開きかけたせっちゃんのスマホが音を鳴らす。その瞬間、さっきまで興味なさげな顔から一変して目に光が宿る。
あー、もしかして…
「もしもし、…あー、うん。まぁ、俺も今そんな感じ……え、うん。えっ、でも黒斗は?いや、そっちでの約束とか…」
あからさまにソワソワしだすセッちゃんに若干苛立ちを覚えながらも、これはこれで面白いものが見れたかもしれないと少しだけ降格が上がる。
「なぁリッツ、もしかして」
「まぁ、もしかしなくても相手は黒斗でしょ。…あの感じ、先約ってわけじゃないけど、俺たちは追い払われそうだねぇ~」
はぁ~あ、と大げさに溜息を吐いて見せると月ぴ~は何を思ったのか、そんながっかりするな!ちゃんと静かにするからおれと飲みに行こうーっ!と手を挙げる。
いやまぁ別に嫌なわけじゃないし、ただ一人でぶらつこうと思ってただけだし…そんな深い意味はないから諦めて月ぴ〜と二人で飲みに出かけることを了承したとき、
「えっ、うん。いるけど…、まぁ、れおくんの声だけど、いや別に二人で…えぇ?」
じとりと月ぴ〜を睨むセッちゃんに、本人はなに?なんて理解してない表情を浮かべる。
まぁ、黒斗のことだ。その場にいるなら一緒にどうだ?ってことを言ってるんでしょ?
俺としては……セッちゃんがいちゃいちゃしてる姿見るのは嫌な気もするし、でもある意味面白いから見てみたい気もするし、う~ん。
「…はぁ、分かったって。えっと、じゃあどこで待ち合わせ…って、え?マネージャーに?黒斗それマネージャーのこと足として使ってない?」
きょとんとしてセッちゃんを見るとマンションを出るようにジェスチャーをしつつ外に歩を進めるセッちゃん。
「あぁ、あのコンビニ?わかった。今から向かうからぁ」
「んん?なに?セナも行くのか!?電話中の眼帯は?」
セッちゃんが電話越しに後でね。なんて言いながら俺たちに歩幅を合わせて歩く。ギリギリ月ぴ~の言葉を聞いていなかったのか気に留めていないようだ。
「…月ぴ~まだ黒斗のこと眼帯って呼んでるの?」
「あ、そうだった!でも本人からはちゃんと了承得てるぞ!卒業の時に気を付けるって言ったら、お前が先に思いついたほうで呼んでくれて構わないって」
「思いついたほうで、っていうあたりが黒斗らしいよねぇ。相手の感情が見えてるから先に出てきてる文字がわかるってことでしょ?」
肩を竦めながら会話の内容を理解したセッちゃんが応える。
まぁ確かに、普通の人なら呼びたいほうでいいって言うもんねぇ。
「くそーっ!俺もそのSFチックな力、欲しかった!アブダクションされた割にあまり変わってない!」
「いや、十分月ぴ~も奇才でしょ」
そんな言い合いを続けているうちに、待ち合わせ場所であるコンビニの前まで来る。
と、セッちゃんが、なるべく感情を押し殺したようにして声を上げた。
「黒斗!」
その声につられて俺たちも目的の人物へと声をかける。
「黒斗~、久しぶりぃ♪」
「黒斗!眼帯!すごい久しぶりだな!元気だったか!」
「おーおー、Knightsの20歳組が勢ぞろいだな。…っ、…ん"ん"っ、泉、分かったから、一回その、…落ち着け。」
ひらりと2、3回手を振って俺たちを出迎えたかと思えば、ぴたりと固まる黒斗。
一度咳払いをして、セッちゃんを宥めるように苦笑いを浮かべている。
けど、俺は…というか今この場にいる黒斗以外は全然理解できなくて、何が?とそろって首を傾げた。
「…無意識か…あのなぁ」
若干気まずそうにしながら黒斗がセッちゃんに耳打ちをする。と、目を見開いたセッちゃんはあろうことか黒斗を突き飛ばす。
え、何?どういうこと?
「っにすんだよ!びっくりしただろ!?」
「こっちのセリフなんだけどぉ!?黒斗ってそんなにデリカシーなかったわけぇ!?」
二人が声を荒げる状態に、俺はやれやれと肩を竦める。と同時になんだか懐かしい光景に絆される気にもなる。
って言っても何が原因かさっぱりなんだけどさ。
しかし、どういうわけかやっぱり奇才と呼ぶにふさわしい月ぴ~が
「あっはは!セナ!黒斗に会えて嬉しいからってハート飛ばしすぎなんじゃないのか?ほら、ぴゅんぴゅ~ん!って!」
「レオ…お前ってやっぱりすごいな。もしかしてお前も観えて」
「なわけないでしょぉ!?」
月ぴ~がセッちゃんを背景に空中でハートを書き、ぴゅ~んと飛ばすようにそれをスワイプしたり、デコピンしたりする。
なんとなく理解できる光景にくすくすと笑って見せると、セッちゃんがこちらを睨んでくる。
「ちょっと!くまくんまで俺をからかわないでよねぇ?…もうっ、あの不思議系の二人組は置いてくからぁ」
やけになりながら俺の手を引き、歩き出す。
「くまくんが行きたいバーは後で行くとして、普通に晩御飯食べに行くよぉ」
「セナ!俺ハンバーグ!」
「…ハンバーグか、いいな。なぁ、その辺のファミレスでさっさと食べて行こう」
「まぁ、確かに何も食べないでお酒飲むとよくないっていうしね。ところで黒斗、その辺ってどこ指してるの?」
「え、その辺になかったか?」
きょとんと目を丸めて
俺たちの住むマンションの反対側を指さす黒斗。
いや、まぁあるけど…ここからだと線路挟んでるし、俺の行きたいバーは反対側だし…。
「…もしかして、黒斗が観えてる建物にはすぐたどり着けると思ってる?」
「…ん?どういう意味だ」
「迂回って言葉があるんだけど。例えば黒斗が指したのは線路があるから一回向こうの駅に行ってからまた戻ってきて…で、俺の行きたいバーに行くにはまたそこを戻って…って、子供じゃないんだからわかるでしょ?」
「あー……そういう。それ前にも蒼空に言われたんだよなぁ。終いには方向音痴って言われてさ…。」
「…みやくんが痺れ切らすって相当じゃない?」
「いや、場所はわかってるからねぇ。まぁでも道わかってないって感じか。方向音痴でもまぁ間違ってないかも」
肩を竦めて、セッちゃんとバーに近い飲食店を探す。
この際ハンバーグとかわがまま無しね。と後ろの二人に伝えると、
「残念だな~。おれ黒斗と同じハンバーグにしようと思ってたのに」
「なー。俺もレオと同じの頼もうと思ってたから…、あぁ、そうだ。今度一緒に手軽に食べれる店に行こうな」
「あれ、お互いで言ってて意味わかってんのかなぁ」
なんて、天才にしかわからないジョークを言い合っているのだった。
::END
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時刻はレッスン終わり、指定の事務所からマンションまで徒歩数分の道を全員で並んで帰る。って言っても、防犯上まじですぐ近くのせいであっという間にマンションのロビーなんだけど。
「俺はちょっとやりたいことあるからここで解散~♪」
「リッツ!今日も散歩か?たまにはおれもしようかと思っててな!ついてっていい?」
「えぇ〜、今日は散歩じゃなくて、美味しいカクテルを出すバーに行ってみたいんだよねぇ。月ぴ〜には悪いけど静かに飲みたいしなぁ」
ス〜ちゃんもナッちゃんもバーはまだ早いし、なんて言って手を振って各自部屋へと帰っていく。
ス~ちゃんは、飲めるようになったらぜひご一緒させてください!とちょっとだけ目をキラキラさせてたけど…
「おれが静かにしないって決めつけは良くないと思う!ちゃんと大人しくしろって言われたらするし!」
そんな二人に対して帰る素振りどころかむっとして眉間にシワを寄せる月ぴ〜に、えー?と言ってみせるも当の本人はついてくる気満々のようで、逆にこうなってくるともう追い払うのも面倒になる。
やれやれと半ば諦めかけている中、視界の隅でスマホを眺めながら立ってるセッちゃんが気になってしまう。部屋に戻る気配はないし。
「……セッちゃんは?飲めないからバーとか来ても楽しくないだろうけど…月ぴ〜の子守手伝ってくれたり?」
「子守ってなんだ!」
「…いや、そうじゃないし」
と、口を開きかけたせっちゃんのスマホが音を鳴らす。その瞬間、さっきまで興味なさげな顔から一変して目に光が宿る。
あー、もしかして…
「もしもし、…あー、うん。まぁ、俺も今そんな感じ……え、うん。えっ、でも黒斗は?いや、そっちでの約束とか…」
あからさまにソワソワしだすセッちゃんに若干苛立ちを覚えながらも、これはこれで面白いものが見れたかもしれないと少しだけ降格が上がる。
「なぁリッツ、もしかして」
「まぁ、もしかしなくても相手は黒斗でしょ。…あの感じ、先約ってわけじゃないけど、俺たちは追い払われそうだねぇ~」
はぁ~あ、と大げさに溜息を吐いて見せると月ぴ~は何を思ったのか、そんながっかりするな!ちゃんと静かにするからおれと飲みに行こうーっ!と手を挙げる。
いやまぁ別に嫌なわけじゃないし、ただ一人でぶらつこうと思ってただけだし…そんな深い意味はないから諦めて月ぴ〜と二人で飲みに出かけることを了承したとき、
「えっ、うん。いるけど…、まぁ、れおくんの声だけど、いや別に二人で…えぇ?」
じとりと月ぴ〜を睨むセッちゃんに、本人はなに?なんて理解してない表情を浮かべる。
まぁ、黒斗のことだ。その場にいるなら一緒にどうだ?ってことを言ってるんでしょ?
俺としては……セッちゃんがいちゃいちゃしてる姿見るのは嫌な気もするし、でもある意味面白いから見てみたい気もするし、う~ん。
「…はぁ、分かったって。えっと、じゃあどこで待ち合わせ…って、え?マネージャーに?黒斗それマネージャーのこと足として使ってない?」
きょとんとしてセッちゃんを見るとマンションを出るようにジェスチャーをしつつ外に歩を進めるセッちゃん。
「あぁ、あのコンビニ?わかった。今から向かうからぁ」
「んん?なに?セナも行くのか!?電話中の眼帯は?」
セッちゃんが電話越しに後でね。なんて言いながら俺たちに歩幅を合わせて歩く。ギリギリ月ぴ~の言葉を聞いていなかったのか気に留めていないようだ。
「…月ぴ~まだ黒斗のこと眼帯って呼んでるの?」
「あ、そうだった!でも本人からはちゃんと了承得てるぞ!卒業の時に気を付けるって言ったら、お前が先に思いついたほうで呼んでくれて構わないって」
「思いついたほうで、っていうあたりが黒斗らしいよねぇ。相手の感情が見えてるから先に出てきてる文字がわかるってことでしょ?」
肩を竦めながら会話の内容を理解したセッちゃんが応える。
まぁ確かに、普通の人なら呼びたいほうでいいって言うもんねぇ。
「くそーっ!俺もそのSFチックな力、欲しかった!アブダクションされた割にあまり変わってない!」
「いや、十分月ぴ~も奇才でしょ」
そんな言い合いを続けているうちに、待ち合わせ場所であるコンビニの前まで来る。
と、セッちゃんが、なるべく感情を押し殺したようにして声を上げた。
「黒斗!」
その声につられて俺たちも目的の人物へと声をかける。
「黒斗~、久しぶりぃ♪」
「黒斗!眼帯!すごい久しぶりだな!元気だったか!」
「おーおー、Knightsの20歳組が勢ぞろいだな。…っ、…ん"ん"っ、泉、分かったから、一回その、…落ち着け。」
ひらりと2、3回手を振って俺たちを出迎えたかと思えば、ぴたりと固まる黒斗。
一度咳払いをして、セッちゃんを宥めるように苦笑いを浮かべている。
けど、俺は…というか今この場にいる黒斗以外は全然理解できなくて、何が?とそろって首を傾げた。
「…無意識か…あのなぁ」
若干気まずそうにしながら黒斗がセッちゃんに耳打ちをする。と、目を見開いたセッちゃんはあろうことか黒斗を突き飛ばす。
え、何?どういうこと?
「っにすんだよ!びっくりしただろ!?」
「こっちのセリフなんだけどぉ!?黒斗ってそんなにデリカシーなかったわけぇ!?」
二人が声を荒げる状態に、俺はやれやれと肩を竦める。と同時になんだか懐かしい光景に絆される気にもなる。
って言っても何が原因かさっぱりなんだけどさ。
しかし、どういうわけかやっぱり奇才と呼ぶにふさわしい月ぴ~が
「あっはは!セナ!黒斗に会えて嬉しいからってハート飛ばしすぎなんじゃないのか?ほら、ぴゅんぴゅ~ん!って!」
「レオ…お前ってやっぱりすごいな。もしかしてお前も観えて」
「なわけないでしょぉ!?」
月ぴ~がセッちゃんを背景に空中でハートを書き、ぴゅ~んと飛ばすようにそれをスワイプしたり、デコピンしたりする。
なんとなく理解できる光景にくすくすと笑って見せると、セッちゃんがこちらを睨んでくる。
「ちょっと!くまくんまで俺をからかわないでよねぇ?…もうっ、あの不思議系の二人組は置いてくからぁ」
やけになりながら俺の手を引き、歩き出す。
「くまくんが行きたいバーは後で行くとして、普通に晩御飯食べに行くよぉ」
「セナ!俺ハンバーグ!」
「…ハンバーグか、いいな。なぁ、その辺のファミレスでさっさと食べて行こう」
「まぁ、確かに何も食べないでお酒飲むとよくないっていうしね。ところで黒斗、その辺ってどこ指してるの?」
「え、その辺になかったか?」
きょとんと目を丸めて
俺たちの住むマンションの反対側を指さす黒斗。
いや、まぁあるけど…ここからだと線路挟んでるし、俺の行きたいバーは反対側だし…。
「…もしかして、黒斗が観えてる建物にはすぐたどり着けると思ってる?」
「…ん?どういう意味だ」
「迂回って言葉があるんだけど。例えば黒斗が指したのは線路があるから一回向こうの駅に行ってからまた戻ってきて…で、俺の行きたいバーに行くにはまたそこを戻って…って、子供じゃないんだからわかるでしょ?」
「あー……そういう。それ前にも蒼空に言われたんだよなぁ。終いには方向音痴って言われてさ…。」
「…みやくんが痺れ切らすって相当じゃない?」
「いや、場所はわかってるからねぇ。まぁでも道わかってないって感じか。方向音痴でもまぁ間違ってないかも」
肩を竦めて、セッちゃんとバーに近い飲食店を探す。
この際ハンバーグとかわがまま無しね。と後ろの二人に伝えると、
「残念だな~。おれ黒斗と同じハンバーグにしようと思ってたのに」
「なー。俺もレオと同じの頼もうと思ってたから…、あぁ、そうだ。今度一緒に手軽に食べれる店に行こうな」
「あれ、お互いで言ってて意味わかってんのかなぁ」
なんて、天才にしかわからないジョークを言い合っているのだった。
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