彼が大人になった時
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9
10月2日、世間はハロウィンの為の企画で大忙しになりつつある中、とある雑務の合間にできた時間に事務所のラウンジへ向かうと、そこにはとある人物が座っていた。
「瀬名くん!お疲れ様です。」
「ん?あぁ、青葉。久しぶりだねぇ」
「え?そうですか?僕は事務所の雑務ついでによくKnightsの宣材資料を見るので久しぶりって感じがないですけど」
「いや、実物に会ってないんだから久しぶりなんじゃないの?普通」
言われてみれば。と微笑むと瀬名くんは呆れたように短く溜息を吐いた。
コトリ、とテーブルに置かれたスマホに誘われるように目を向けるとスマートフォンカバーに挟まれている写真に見覚えのある人物が映っているのが見える。
「あれ?それって目良くん、ですよね?チェキ風の、サイン入りカードですか!へぇ…瀬名くんもそういうの買うんですね?」
「うん、まぁ。ゆうくんと黒斗の交互にしたりして……まぁ、しばらくはゆうくんかなぁ?」
「そういう気分なんですか?」
ふふふ、と気味の悪い笑顔を浮かべながらも幸せそうにする瀬名くんに当たり障りない質問をするしかできない。
というか、話題広げなくてもよかったかも…?
「ん~?気分っていうか、これからは黒斗は好きな時に好きなだけチェキもサインも貰えるしぃって思って。ふふ、」
「…へぇ?まぁ、瀬名くんは幼馴染ですし、嫌な顔はしなさそうですよね。」
「そうそう、特に俺にはねぇ」
「?どういう」
「泉ちゃーん!お待たせ!」
意味ですか?という俺の声と同時にひときわ大きな声がラウンジに響く。
誰だろうなんて疑問に思うこともなく、瀬名くんが呆れた声を出しながら振り返る。
「はぁ、まったく…もう少し静かにできないのぉ?」
「元気ハツラツなくらいが良いじゃない。ってあら?青葉先輩もいたのね?」
「あ、俺はたまたま…空いた時間にちょっと話そうかと思って。」
「ウフフ、ずっと立たせたまま話するなんて泉ちゃんも気が利かないわねェ?はい、どーぞ」
俺の横に立った鳴上くんが空いた椅子を引っ張ってきて座るように促される。
え?いや、というか2人で待ち合わせしてたのなら俺は退散すべきじゃ…
「どうせまた雑務で忙しなくやってんでしょぉ?たまには同級生の雑談でも参加して息抜きしなよねぇ」
差し出された椅子に狼狽えていると呆れた溜息を吐きながらも、瀬名くんまで座るように促してくる。
「あら?大事な話って言うからおめかしして来たのに、アタシ個人に用事じゃなかったのォ?」
「はぁ?気色悪いこと言わないでよねぇ!」
ダン!とテーブルが揺れるほど叩く瀬名くんをなんとか宥め、お言葉に甘えて、と伝えて椅子に腰かける。
「結局、どうなったのよォ。昨日は撮影後のお食事会不参加だったんだから、それなりにいい結果だったんでしょうね?」
昨日?そういえば鳴上くんと瀬名くんはモデルのお仕事で雑誌の撮影をしていたっけ?
全部の予定を把握しているわけではないからその後の食事会は知らなかったけど。
「いい結果?なにかオーディションとか受けに行ったんですか?」
「ううん、個人的な話。まぁ…青葉に聞かれて困る話じゃないし。青葉なら下手に誰かに言いふらさないでしょ」
「え?僕に聞かれて困る話なんてあるんですか?」
「あんた天祥院に悪気なく情報全部伝えそうだけど…?」
はぁ、と嫌味っぽく溜息を吐く瀬名くんにえぇ?と眉を下げる。
「そんなことないですよ。聞かれたことに答えてるだけです」
「それを悪気ないって言うのよねェ?…で、泉ちゃん、返事はNOだった?」
「はぁ?ちょっと、なんでNOが前提なのぉ?」
鳴上くんの催促の言葉に怒りをあらわにし始めた瀬名くんを再度宥めようと思うも、そもそも何の話かもわからないのに宥めようがないか、と途方に暮れる。
「あの、何の話なんですか?」
「あ!そうよねェ、せっかく一緒に恋バナするんだもの経緯を伝えないとっ。えっと、泉ちゃんに好きな子がいて〜、昨日その子にプロポーズしに行ったのよねェ!」
「プロポーズまでいってない。告白。」
「えぇ?でも追々はそうなりたいでしょォ?前提にって言っちゃえば同じことよッ!」
えっ、プロポーズ?告白?
それは当然いち人間としてはおめでたい話ですけど、アイドルとしてはなかなかスキャンダルになりかねない話題……ってまさか!
「あ、アイドルやめるんですか?」
「はぁ?やめるわけないでしょ。一気に飛躍しすぎぃ。さすがに公表はまだ考えてないし、話す相手も限られた相手だけって思ってるけど?まぁいずれはちゃんと付き合ってるって話はしていきたいよねぇ。虫除けも含めて」
いや、まぁ…当然俺たちの事務所的にもKnightsは大きいし、下手なスキャンダルを起こしたくないだろうから、認知したとしても公表はまだずっと先になるだろう。
え、ていうかその相手って?
「ま、まさかとは思いますけど…あの、彼?ですよね」
瀬名くんのスマホを指さす。
そこには先程話題に上がった量産されたチェキ。
「さっすが青葉先輩!わかってるわねェ!」
「えぇ〜?あの、いや、いいんですけど…。え?そもそも学生時代は付き合ってなかったんですか?」
「ちょっとぉ?あんたまで俺のこと煽ってんの?」
綺麗な顔の眉間が今まで以上に深くなり、反射的にごめんなさい!と謝る。
学生時代ではほぼ瀬名くんの横にいたイメージが強かったから、そもそもその時点でお付き合いしている仲なんだと思っていたけど、実際は違ったってことか…。
「でも、とりあえずスキャンダル云々より、2人なら幸せになれそうなので安心です。応援してますね!」
「んまァ!青葉先輩優しいわねェ。ほら泉ちゃんお礼言わないと!」
うるさいなぁ!何様!?なんて鳴上くんに怒鳴るも、俺に向き直ってとりあえずどうもぉ、なんて礼を言ってくる瀬名くん。
そんな丸くなった瀬名くんの態度に、案外人を好きになるってこういうものなのかなぁ?なんて思ったり…
「ねぇねぇ!どんな風に告白したのよォ!」
「どうもこうも…別に普通。あっちからはちゃんとお酒の勢いじゃないって言質取って…で、俺から改めて……って、なんであんたにこんな話しなきゃいけないのぉ?」
「あらやだ!恋バナってそういうものよ?泉ちゃんってもしかして初めて?心配しないで!アタシがリードしてあげるわ!」
「あんたいちいち俺をイラつかせることしか考えないわけぇ?」
鳴上くんのこれが素なのだとしたら何度瀬名くんの逆鱗に触れるんだろう。
Knightsの仲間割れを心配しつつも、今は素直に瀬名くんと目良くんの恋が成就したことを自分の事のように嬉しく思うのだった。
::END
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10月2日、世間はハロウィンの為の企画で大忙しになりつつある中、とある雑務の合間にできた時間に事務所のラウンジへ向かうと、そこにはとある人物が座っていた。
「瀬名くん!お疲れ様です。」
「ん?あぁ、青葉。久しぶりだねぇ」
「え?そうですか?僕は事務所の雑務ついでによくKnightsの宣材資料を見るので久しぶりって感じがないですけど」
「いや、実物に会ってないんだから久しぶりなんじゃないの?普通」
言われてみれば。と微笑むと瀬名くんは呆れたように短く溜息を吐いた。
コトリ、とテーブルに置かれたスマホに誘われるように目を向けるとスマートフォンカバーに挟まれている写真に見覚えのある人物が映っているのが見える。
「あれ?それって目良くん、ですよね?チェキ風の、サイン入りカードですか!へぇ…瀬名くんもそういうの買うんですね?」
「うん、まぁ。ゆうくんと黒斗の交互にしたりして……まぁ、しばらくはゆうくんかなぁ?」
「そういう気分なんですか?」
ふふふ、と気味の悪い笑顔を浮かべながらも幸せそうにする瀬名くんに当たり障りない質問をするしかできない。
というか、話題広げなくてもよかったかも…?
「ん~?気分っていうか、これからは黒斗は好きな時に好きなだけチェキもサインも貰えるしぃって思って。ふふ、」
「…へぇ?まぁ、瀬名くんは幼馴染ですし、嫌な顔はしなさそうですよね。」
「そうそう、特に俺にはねぇ」
「?どういう」
「泉ちゃーん!お待たせ!」
意味ですか?という俺の声と同時にひときわ大きな声がラウンジに響く。
誰だろうなんて疑問に思うこともなく、瀬名くんが呆れた声を出しながら振り返る。
「はぁ、まったく…もう少し静かにできないのぉ?」
「元気ハツラツなくらいが良いじゃない。ってあら?青葉先輩もいたのね?」
「あ、俺はたまたま…空いた時間にちょっと話そうかと思って。」
「ウフフ、ずっと立たせたまま話するなんて泉ちゃんも気が利かないわねェ?はい、どーぞ」
俺の横に立った鳴上くんが空いた椅子を引っ張ってきて座るように促される。
え?いや、というか2人で待ち合わせしてたのなら俺は退散すべきじゃ…
「どうせまた雑務で忙しなくやってんでしょぉ?たまには同級生の雑談でも参加して息抜きしなよねぇ」
差し出された椅子に狼狽えていると呆れた溜息を吐きながらも、瀬名くんまで座るように促してくる。
「あら?大事な話って言うからおめかしして来たのに、アタシ個人に用事じゃなかったのォ?」
「はぁ?気色悪いこと言わないでよねぇ!」
ダン!とテーブルが揺れるほど叩く瀬名くんをなんとか宥め、お言葉に甘えて、と伝えて椅子に腰かける。
「結局、どうなったのよォ。昨日は撮影後のお食事会不参加だったんだから、それなりにいい結果だったんでしょうね?」
昨日?そういえば鳴上くんと瀬名くんはモデルのお仕事で雑誌の撮影をしていたっけ?
全部の予定を把握しているわけではないからその後の食事会は知らなかったけど。
「いい結果?なにかオーディションとか受けに行ったんですか?」
「ううん、個人的な話。まぁ…青葉に聞かれて困る話じゃないし。青葉なら下手に誰かに言いふらさないでしょ」
「え?僕に聞かれて困る話なんてあるんですか?」
「あんた天祥院に悪気なく情報全部伝えそうだけど…?」
はぁ、と嫌味っぽく溜息を吐く瀬名くんにえぇ?と眉を下げる。
「そんなことないですよ。聞かれたことに答えてるだけです」
「それを悪気ないって言うのよねェ?…で、泉ちゃん、返事はNOだった?」
「はぁ?ちょっと、なんでNOが前提なのぉ?」
鳴上くんの催促の言葉に怒りをあらわにし始めた瀬名くんを再度宥めようと思うも、そもそも何の話かもわからないのに宥めようがないか、と途方に暮れる。
「あの、何の話なんですか?」
「あ!そうよねェ、せっかく一緒に恋バナするんだもの経緯を伝えないとっ。えっと、泉ちゃんに好きな子がいて〜、昨日その子にプロポーズしに行ったのよねェ!」
「プロポーズまでいってない。告白。」
「えぇ?でも追々はそうなりたいでしょォ?前提にって言っちゃえば同じことよッ!」
えっ、プロポーズ?告白?
それは当然いち人間としてはおめでたい話ですけど、アイドルとしてはなかなかスキャンダルになりかねない話題……ってまさか!
「あ、アイドルやめるんですか?」
「はぁ?やめるわけないでしょ。一気に飛躍しすぎぃ。さすがに公表はまだ考えてないし、話す相手も限られた相手だけって思ってるけど?まぁいずれはちゃんと付き合ってるって話はしていきたいよねぇ。虫除けも含めて」
いや、まぁ…当然俺たちの事務所的にもKnightsは大きいし、下手なスキャンダルを起こしたくないだろうから、認知したとしても公表はまだずっと先になるだろう。
え、ていうかその相手って?
「ま、まさかとは思いますけど…あの、彼?ですよね」
瀬名くんのスマホを指さす。
そこには先程話題に上がった量産されたチェキ。
「さっすが青葉先輩!わかってるわねェ!」
「えぇ〜?あの、いや、いいんですけど…。え?そもそも学生時代は付き合ってなかったんですか?」
「ちょっとぉ?あんたまで俺のこと煽ってんの?」
綺麗な顔の眉間が今まで以上に深くなり、反射的にごめんなさい!と謝る。
学生時代ではほぼ瀬名くんの横にいたイメージが強かったから、そもそもその時点でお付き合いしている仲なんだと思っていたけど、実際は違ったってことか…。
「でも、とりあえずスキャンダル云々より、2人なら幸せになれそうなので安心です。応援してますね!」
「んまァ!青葉先輩優しいわねェ。ほら泉ちゃんお礼言わないと!」
うるさいなぁ!何様!?なんて鳴上くんに怒鳴るも、俺に向き直ってとりあえずどうもぉ、なんて礼を言ってくる瀬名くん。
そんな丸くなった瀬名くんの態度に、案外人を好きになるってこういうものなのかなぁ?なんて思ったり…
「ねぇねぇ!どんな風に告白したのよォ!」
「どうもこうも…別に普通。あっちからはちゃんとお酒の勢いじゃないって言質取って…で、俺から改めて……って、なんであんたにこんな話しなきゃいけないのぉ?」
「あらやだ!恋バナってそういうものよ?泉ちゃんってもしかして初めて?心配しないで!アタシがリードしてあげるわ!」
「あんたいちいち俺をイラつかせることしか考えないわけぇ?」
鳴上くんのこれが素なのだとしたら何度瀬名くんの逆鱗に触れるんだろう。
Knightsの仲間割れを心配しつつも、今は素直に瀬名くんと目良くんの恋が成就したことを自分の事のように嬉しく思うのだった。
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