彼が合宿に参加するとき
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-合宿-1日目-無人島-砂浜-
「もー無理…」
そう言ってその場にいた2人が寝転ぶ。私もその気持ちがわからなくもないですが…いくらなんでもそれはできない。
「トキヤ…よく立ってられるよねー」
「よく大吉とも砂浜走ったりするけど…踊るのはしたことないよ…」
そう、私たちは黒斗さんの発案したレッスンメニューで砂浜でお互いの持ち歌を踊るという体力づくりを兼ねたレッスンをしていた。
確かに砂浜は足を取られいつもよりも体力の消耗が激しくなる。きっとこれを続けて体力を付ければ普段のステージでは体が軽いと思ってしまうくらいには成長できるだろう。
「少しだけ、休憩を挟みますか」
「さすがトキちゃんさんっ、ホッケーと違って優しい!」
「と、トキちゃんさんはやめてくださいと言ったじゃないですか…!それに音也の事もトッキーと呼んでいて物凄く紛らわしいですし…」
本人曰く、私はトキヤのトキ。音也は一十木のトッキー。正直どっちがどっちかわからなくなる。
「えー、だって代わりに敬語やめてって言ってるのにやめないから…」
理由になってない気もしますが、音也と似てる部分も多々ある。ちょっとはつらつな子ですし…何言っても無駄…ですよね…
「というか…!これをまだ1時間続けるって無理だよー…。黒斗って何考えてるかわかんないし、なんか言ったら殴られそう…」
「さすがに殴るなんてことないと思いますけど…でも確かに少し話しかけにくいですね。どうしても目良さんを挟んでしまいます。あ、ええと、綾人さんを」
「うんうん、わかる。双子なのに綾人はあんなに話しかけやすくて、なんで黒斗は怖いんだろうね…」
ふと疑問に思うとスバルくんが居づらそうに立ち上がり練習着に付いた砂をはたいて落として海辺に近づいて行ってしまう。スバルくんからしてみれば逆に黒斗さんが基準で見た目が怖くても話しかけやすいのは黒斗さんの方なのかもしれない。そもそも双子なのにあれだけの差があるというのもなかなか珍しいと言えば珍しい。
「黒斗先輩は、怖い人じゃないよ…無表情だし何考えてるかわからないし、でもすごく優しい人。それに凄くキラキラしてて、俺も、黒斗先輩みたいなアイドルになりたいなって、黒斗先輩のパフォーマンスを観るたびに思うんだ。」
どこか不安げに眉を下げながら言うスバルくんに自然と笑みがこぼれる。そうやって目標になる人がいることは素晴らしいことだし、その人を信じるという気持ちもとても大切なもの。
「スバルくんはラッキーな人かもしれませんね。身近にそういう方がいるというのは」
「そ、そうなのかな?でもトキちゃんさんもトッキーさんも黒斗先輩のパフォーマンスを観たらきっと魅力に気付くと思う!」
「じゃあ今度見せてもらう?ここ社長の所有地で簡易的な屋外ステージもあるし!」
「なるほど、いいかもしれませんね。それからTrickstarの皆さんにも目良さ…綾人さんのパフォーマンスも見ていただきたいところもありますし」
あの人、仕事以外はふざけているから正直頼んでもまともにやってくれるかどうか…そこは芸歴の差を、私たちにも見せていただきたいですが。
「じゃぁじゃぁ…このレッスン終わったらご飯だし…頼んでみよう!」
「うーん、黒斗先輩…一人でやってくれるかな…」
「というと?」
「黒斗先輩、トラウマがあるんだ。最近は良くなったというかアイドルとして仕事だからって感覚で、吹っ切れてやってるから必要以上はしないって感じなんだ…。だからわざわざ俺たちの為だけにしてくれるかわからなくて。…S1の時も確かにふらふらだったけど、今よりキラキラしてたのに」
今は無理してキラキラしてるみたいなんだ。と眉間に皺を寄せながらスバルくんが呟く。トラウマというのは本人も知らないようで力にはなれないとのこと…
「ウッキーならね!黒斗先輩のこといっぱい知ってるんだ。」
その言葉にちょっと離れたところで踊る遊木くんと愛島さんを見る。愛島さんは前とは見違えるようにダンスが上手くなっているし、それに必死についていこうとしている遊木くんが窺える。どこかおぼつかないながらもいったいどこから持ってきたのかわからないビデオを回しながら2人でそれを見つつ改善点を指摘するようにレッスンをしているようだ。
「その、ウッキーって子は黒斗とどんな関係だったのー?」
「うん?うーんと、俺も詳しくは教えてもらえてないんだけど、キッズモデルの頃の一つ上の先輩って感じで、もう1人のちょっと癖のある人と3人でよく一緒にいたみたい。ウッキーも言ってたけど、兄弟みたいだったらしいよ」
まじまじと3人で遊木くんと愛島さんを眺めながら談笑していると。
「何してるんだ?」
「うわぁ!?黒斗先輩!」
「1日目…だしな。そうやってコミュニケーションを取るのも大事だが…見たところ15分ずっとそうしているみたいだな」
的確…確かにグループごとに渡された卓上の時計に目をやると先ほど休憩を取ると言ってからジャスト15分。
「ええっと、俺がさ、黒斗のこともっと教えてーって言ったから…」
「…俺のこと?」
正直に、しかし苦笑いを浮かべながら音也が言うといぶかしげに睨まれる。まぁそうもなるでしょうね。
「私たちが目良さんの事をよく知らないからと…スバルくんがあなたの事をとても信頼しているようで、少し見方を変えられました。」
この場を切り抜けようと笑みを浮かべてそういうと…
「…思ってもないことをそうつらつらと言えるのは凄いな。その目。俺の見方なんて変わってないだろ。はぁ…そういうことを口にするならもう少し…んんっ!?」
目良さんが思い切り溜め息を吐き悪態をついていると急に目良さんの後ろから手が伸びその口を塞ぐ。
「えぇ黒斗先輩!?」
スバルくんが慌てて駆け寄ると横からひょっこりと顔を出してきたのは…綾人さんだった。
「目良さん…?」
「トキヤー…苗字だと俺も黒斗も返事するからちゃんと名前で呼んでね。そうじゃなくて、ほら黒斗も、怒らないの。気持ちはわからなくもないけど疑心暗鬼なのはよくないぞー」
「…」
黒斗さんは口を押えられたままそっと目を閉じ、後ろに肘打ちをする。
うわ…、と自然と口から漏らしてしまう。
「いいから、お前ら、もう30分もないのにどうするつもりだ。」
「あ、ええと。ごめんなさい。」
「スバルが謝るなんて珍しいな…」
きょとんとした後黒斗さんはスバルくんを目を細め見つめる。そのあと顎に手を当て少し考える。
「お前ら…って言ったら駄目か…。一ノ瀬さんも一十木さんも同じことを考えてるみたいだし…綾人。おい、いつまで蹲ってるんだ。俺の考えてる事わかるんだろ、どうする。」
ひー、本当鬼畜ぅー。なんてふざけた様子で立ち上がる綾人さんに私たち3人は首を傾げる。そのあと私と音也は目を合わせ何のことかと悩んでいるとスバルくんはひらめいたように大声を張り上げた。
「もしかして!踊ってくれるんですか!?」
::Everybody dancing
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