彼が大人になった時
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6
「ふあー!やばい!めっちゃ美味しくない!おいしくない!ねぇ蒼空!誕生日おめでとうって言え!」
「何度目だよ!おめでとうっ!だからもうおとなしくリンゴジュース飲んでなさい!」
騒々しい。その一言に尽きる。
いや、まぁお酒飲んだらテンションが上がる人っているだろうし、あやくんはそのタイプだったってことだろうねぇ。
みやくんが1杯でこんなになる?と呆れながらも目の前のお酒とジュースを取り換える。
それに対して、俺の横にいるのは…
「黒斗?」
「んー、俺のはおいしいー。」
「う、うん。そう?ならいいんだけど、あまりいっぱい飲んじゃだめだよ?初めてなんだしさぁ」
んー、なんて適当な返事をして俯く黒斗。
あやくんと同じで1杯しか飲んでないけど、間違いなく酔っているんだろう。
あと前髪のせいで表情が全然うかがえない。
「泉はー?飲むか?これ」
俺はまだ駄目。と黒斗がすすす、と差し出してきたカクテルを相手の前に戻す。
さっき軽くご飯を食べた時よりもだいぶ静かになってしまっている。
もともと今日はあまり目が合わなくて、まぁ緊張してるんだろうねぇってくらいだったのに。
いわゆる酔うとダウナーになるタイプか…なんて思いながら、どうにか相手の表情を見ようと顔を覗き込む。
「黒斗、具合悪くない?」
ここはとあるおしゃれなバー。なんだけど、席が空いてなくてカウンター席に4人で並んで座ることになって…まぁ別にカウンター席に文句はないけどさぁ、やっぱバーなだけあって店がちょっと暗い。
そのせいですぐ横にいるのに全然見えない。
黒斗の綺麗な顔が…見えな
「泉、」
と、思えば、急に視線が上がり俺の目とぴったりと合う。
その目は相変わらず、やっぱり、本当に綺麗。
お酒に酔ってちょっと潤んでいるのがまた可愛い。
「ん、なぁに」
「好きだ」
「…」
珍しく甘えた声だねぇ。なんて言葉を返そうと思っていたのに、急に思考が停止する。
え、なに?好きって言った?
「……え?あ、お酒?お酒だよねぇ。気に入ったのぉ?」
頭をフル回転させて、主語がない黒斗の言葉を何とか理解する。
いや、絶対に俺が好きでしょ。と俺の脳内でもそんなことを言ってるけど、早とちりは絶対によくない。
あの黒斗が、簡単に好きって言葉を発するわけがない!
「…んーん、泉が」
「………えぇ?」
ちょっっっと、頭が追い付かない。さっきまでいろいろ考えていたのに全部吹っ飛んだ。
え?俺?俺がって言った?黒斗が?
「…綾人、聞いてた?」
「聞いてたー!Best wishes for your marriage!」
「え、何?急になんて饒舌になんのこいつ。黒斗よりすごい。っていうか黒斗、めちゃくちゃぱやぱやしてんな…仕事の付き合いの時は気をつけよ…」
そんなことより、とみやくんに視線を送ると、ひらめいたように”終わったら連絡頂戴!”とスマホをちらつかせてあやくんを引きずって店を出ていく。
あやくんは、黒斗〜!俺は大好き〜!俺と結婚すべきだよ~!なんて騒ぎながら去っていく。
さすがに周りもあんなんがあの"プリンス綾人"とは思っていないみたいで、おかげさまで俺達も目立つことはない。良い意味で…
「…はぁ、双子なのになんであんなに違うわけぇ?」
「泉、綾人の方がいいのか?あいつには電話もしたんだろ?俺には着信もなかった。」
「え、違う、あやくんとかありえないからぁ。電話は、俺が悩んでたら、またみやくんから電話が来て、それでタイミング無くなって…っていうか…その、さっきの好きの言葉の意味って」
話が脱線しそうになるのを何とか軌道修正する。
ごくり、と覚悟を決めて聞き返すと同時に相手に聞こえてしまうんじゃないかというほど喉が鳴る。
言葉の意味を聞くのが怖くてしょうがない。
怖いけど…黒斗の好きは、ただ友達として大事にしたいって可能性のほうが全然あり得る。
そんなうやむやよりは…ちゃんと知っておいたほうがいい。
「黒斗?よ、酔ってるんだよねぇ?」
「んー、少し。…たぶん、泉、怒ってる」
俺の問いかけに絶妙に合ってるような合っていないような返事をするし、なんか突然俺が怒ってるって突拍子ないこと言ってるし。
あやくんがあんなんなだけあって、さすが双子。
そっくりなくらい酔っぱらっているみたい。
「な、なに?なんの話?」
「泉は、今更って怒るかもしれない…。もう他に好きな奴がいるかもしれないしな?…けど、俺、今更…泉が好きってわかったんだ」
やっぱり明らかにあやくんと同じで、少し酔ってるなんて表情じゃないくらい目が潤んでいるのに、俺の手を掴んで俺の顔をはっきり見てそう言う黒斗。
「俺は…泉が、ほかに好きなやつがいてもいいと思ってる。でも、返事…ずっと返さないのはなんか、申し訳なくて、だから」
囚われたように目が離せなくて、黒斗を見つめる。その瞳に今、俺が映っているってだけで十分に幸福なんだけど、それ以上を求めてしまう。ずっと、俺だけを見ててほしい。なんて…
でも、黒斗はどんどん視線が下に下がっていってしまって…まぁ、恥ずかしいからしょうがないか。
それでも、勇気を出して俺に気持ちを伝えてくれてるんだから。
なんて思えばそれくらい全然かわいい。
むしろ今のこの眠たそうにふわふわと酔いながらも俺に好きって言ってくれる黒斗が愛おしくてしょうがない。
…え…眠たそう?
「泉への、返事…ほんとに遅くなって、ごめんな。こんな今更…俺、が…すきって……」
「黒斗?」
だんだんと声に覇気がなくなり、顔が俯いていく相手を不思議に思い、覗き込む。と
「っ!?」
ぐらり、と体が傾いてきて俺に寄りかかる。
慌てて支えるけど、自力で起き上がる気配がない相手に嫌な予感がする。
え、これってまさか…
「…すぅ、すー」
「ちょっ!う、嘘でしょぉ!?ね、寝ないでよ!?黒斗…ねぇ!?俺の気持ちは!ちょっと!聞いてくれるんじゃないのぉ!?」
俺の気持ちを伝えれば、間違いないのにっ!なんで肝心なところで寝落ちるの!?
っていうかとっさに支えて黒斗のこと抱き留めたけど……ねぇほんとに無防備すぎない?俺のこと好きって言った後に寝るなんて正気?
「………はぁぁぁぁ。みやくんに連絡しよ」
深呼吸をしてスマホを手に取る。
その後、俺は歓喜に満ちた笑顔の数秒後に信じられないものを見るみやくんの百面相を見ることになるのだった。
::END
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「ふあー!やばい!めっちゃ美味しくない!おいしくない!ねぇ蒼空!誕生日おめでとうって言え!」
「何度目だよ!おめでとうっ!だからもうおとなしくリンゴジュース飲んでなさい!」
騒々しい。その一言に尽きる。
いや、まぁお酒飲んだらテンションが上がる人っているだろうし、あやくんはそのタイプだったってことだろうねぇ。
みやくんが1杯でこんなになる?と呆れながらも目の前のお酒とジュースを取り換える。
それに対して、俺の横にいるのは…
「黒斗?」
「んー、俺のはおいしいー。」
「う、うん。そう?ならいいんだけど、あまりいっぱい飲んじゃだめだよ?初めてなんだしさぁ」
んー、なんて適当な返事をして俯く黒斗。
あやくんと同じで1杯しか飲んでないけど、間違いなく酔っているんだろう。
あと前髪のせいで表情が全然うかがえない。
「泉はー?飲むか?これ」
俺はまだ駄目。と黒斗がすすす、と差し出してきたカクテルを相手の前に戻す。
さっき軽くご飯を食べた時よりもだいぶ静かになってしまっている。
もともと今日はあまり目が合わなくて、まぁ緊張してるんだろうねぇってくらいだったのに。
いわゆる酔うとダウナーになるタイプか…なんて思いながら、どうにか相手の表情を見ようと顔を覗き込む。
「黒斗、具合悪くない?」
ここはとあるおしゃれなバー。なんだけど、席が空いてなくてカウンター席に4人で並んで座ることになって…まぁ別にカウンター席に文句はないけどさぁ、やっぱバーなだけあって店がちょっと暗い。
そのせいですぐ横にいるのに全然見えない。
黒斗の綺麗な顔が…見えな
「泉、」
と、思えば、急に視線が上がり俺の目とぴったりと合う。
その目は相変わらず、やっぱり、本当に綺麗。
お酒に酔ってちょっと潤んでいるのがまた可愛い。
「ん、なぁに」
「好きだ」
「…」
珍しく甘えた声だねぇ。なんて言葉を返そうと思っていたのに、急に思考が停止する。
え、なに?好きって言った?
「……え?あ、お酒?お酒だよねぇ。気に入ったのぉ?」
頭をフル回転させて、主語がない黒斗の言葉を何とか理解する。
いや、絶対に俺が好きでしょ。と俺の脳内でもそんなことを言ってるけど、早とちりは絶対によくない。
あの黒斗が、簡単に好きって言葉を発するわけがない!
「…んーん、泉が」
「………えぇ?」
ちょっっっと、頭が追い付かない。さっきまでいろいろ考えていたのに全部吹っ飛んだ。
え?俺?俺がって言った?黒斗が?
「…綾人、聞いてた?」
「聞いてたー!Best wishes for your marriage!」
「え、何?急になんて饒舌になんのこいつ。黒斗よりすごい。っていうか黒斗、めちゃくちゃぱやぱやしてんな…仕事の付き合いの時は気をつけよ…」
そんなことより、とみやくんに視線を送ると、ひらめいたように”終わったら連絡頂戴!”とスマホをちらつかせてあやくんを引きずって店を出ていく。
あやくんは、黒斗〜!俺は大好き〜!俺と結婚すべきだよ~!なんて騒ぎながら去っていく。
さすがに周りもあんなんがあの"プリンス綾人"とは思っていないみたいで、おかげさまで俺達も目立つことはない。良い意味で…
「…はぁ、双子なのになんであんなに違うわけぇ?」
「泉、綾人の方がいいのか?あいつには電話もしたんだろ?俺には着信もなかった。」
「え、違う、あやくんとかありえないからぁ。電話は、俺が悩んでたら、またみやくんから電話が来て、それでタイミング無くなって…っていうか…その、さっきの好きの言葉の意味って」
話が脱線しそうになるのを何とか軌道修正する。
ごくり、と覚悟を決めて聞き返すと同時に相手に聞こえてしまうんじゃないかというほど喉が鳴る。
言葉の意味を聞くのが怖くてしょうがない。
怖いけど…黒斗の好きは、ただ友達として大事にしたいって可能性のほうが全然あり得る。
そんなうやむやよりは…ちゃんと知っておいたほうがいい。
「黒斗?よ、酔ってるんだよねぇ?」
「んー、少し。…たぶん、泉、怒ってる」
俺の問いかけに絶妙に合ってるような合っていないような返事をするし、なんか突然俺が怒ってるって突拍子ないこと言ってるし。
あやくんがあんなんなだけあって、さすが双子。
そっくりなくらい酔っぱらっているみたい。
「な、なに?なんの話?」
「泉は、今更って怒るかもしれない…。もう他に好きな奴がいるかもしれないしな?…けど、俺、今更…泉が好きってわかったんだ」
やっぱり明らかにあやくんと同じで、少し酔ってるなんて表情じゃないくらい目が潤んでいるのに、俺の手を掴んで俺の顔をはっきり見てそう言う黒斗。
「俺は…泉が、ほかに好きなやつがいてもいいと思ってる。でも、返事…ずっと返さないのはなんか、申し訳なくて、だから」
囚われたように目が離せなくて、黒斗を見つめる。その瞳に今、俺が映っているってだけで十分に幸福なんだけど、それ以上を求めてしまう。ずっと、俺だけを見ててほしい。なんて…
でも、黒斗はどんどん視線が下に下がっていってしまって…まぁ、恥ずかしいからしょうがないか。
それでも、勇気を出して俺に気持ちを伝えてくれてるんだから。
なんて思えばそれくらい全然かわいい。
むしろ今のこの眠たそうにふわふわと酔いながらも俺に好きって言ってくれる黒斗が愛おしくてしょうがない。
…え…眠たそう?
「泉への、返事…ほんとに遅くなって、ごめんな。こんな今更…俺、が…すきって……」
「黒斗?」
だんだんと声に覇気がなくなり、顔が俯いていく相手を不思議に思い、覗き込む。と
「っ!?」
ぐらり、と体が傾いてきて俺に寄りかかる。
慌てて支えるけど、自力で起き上がる気配がない相手に嫌な予感がする。
え、これってまさか…
「…すぅ、すー」
「ちょっ!う、嘘でしょぉ!?ね、寝ないでよ!?黒斗…ねぇ!?俺の気持ちは!ちょっと!聞いてくれるんじゃないのぉ!?」
俺の気持ちを伝えれば、間違いないのにっ!なんで肝心なところで寝落ちるの!?
っていうかとっさに支えて黒斗のこと抱き留めたけど……ねぇほんとに無防備すぎない?俺のこと好きって言った後に寝るなんて正気?
「………はぁぁぁぁ。みやくんに連絡しよ」
深呼吸をしてスマホを手に取る。
その後、俺は歓喜に満ちた笑顔の数秒後に信じられないものを見るみやくんの百面相を見ることになるのだった。
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