彼が大人になった時
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3
俺たちがまだ学生だった頃、一度だけ告白したことがある。
当然相手は恋愛経験どころか恋愛感情というものに疎かったから、返事はいらない、気持ちだけ知っておいて。…なんて格好つけてしまったけど、今となっては無理やりYESと言わせて恋人関係である事実を作ってしまえばよかったなんて思う自分もいる。
当然そんなことしたくない自分もいるんだけど。
ただ、卒業して会えなくなったらこの気持ちも落ち着くかなと思っていたのに、そんな気配はなく、今まで一緒に…隣に立ってのが当たり前だった彼がどこに行っても一緒にいない。
そんなギャップにむしろ好きって気持ちが膨れ上がっている。
『はい、星宮ですー。お久しぶりですね?』
「なんでそんなかしこまった態度なわけ?」
『いや!だってすごい久しぶりで…しかも今日俺に電話かけてくると思わなかったんだよ』
「まぁそれは…、本当は"じゃない方"に電話かけようと思ったんだけどさぁ」
『せなたんでも緊張して電話かけれない~、なんてことあるんだな』
「チョ~うざい!何も言ってないでしょぉ?」
なんて電話越しの相手に牙を向けるも、全然響いていないようであはは~なんてへらへら笑っている。
「っていうか、黒斗近くにいるのぉ?」
『んーん、今ちょっと野暮用でTrickStarの事務所にいて、俺は電話かかってきたからちょっと離れて電話してるって感じ。』
TrickStarの事務所?なにか共演の予定でもあるってこと?
まぁ、確かに事務所は違っても夢ノ咲のOBって観点では関わりがあるし、20歳の記念のWWと、卒業してから落ち着いたTrickStarならまぁ共演の話があってもおかしくないか。
って、俺たちKnightsとの共演ってないわけぇ?
「ゆうくんと一緒に仕事するなんて、みやくんも随分偉くなったねぇ」
『いや、嫉妬するのはわかるけど俺の方が下だってこと?もういい加減まこたんに対する感情どうにかしろよ…。ってか、俺じゃなくて一緒に仕事するのは黒斗とまこたんの2人!』
呆れと怒りを含ませた溜息が電話の向こうから聞こえる。
はぁ?なにその昔馴染みで共演しますって?俺は?どういう中身でそんな共演になるわけぇ?
まさかモデル業?
「内容…気になるんだけどぉ」
『…あまり口外するのもなんだから言えません。…そんなことより、本人にお祝いの言葉と同時に最近どう?って聞けば?そうすれば自然と話してくれるかもな。』
あの黒斗が公にされていない情報を喋るとは思えないけど、でもみやくんの言う通り、お祝いの言葉くらいは伝えないといけない。というか…本命はそっちだし。
「何時なら電話出てくれる?」
『もともと今日はオフだし、よっぽどのタイミングじゃなければ黒斗は出てくれるだろ。相手はあの瀬名泉だし』
「…どういう意味?嫌味?」
『いや、そんなわけないじゃん。黒斗は今でもきっと泉が一番だーって言うと思うよ』
「……ふうん。いや、変な励ましなんていらないんだけどぉ。」
『うん?励ましじゃないって!事実!あ、それから今度一緒にご飯でも行こうな!』
はいはい、どぉも。と返事をして通話を切る。
連絡先の画面に戻り、目的の人物の文字をタップする。
いや、でも、今みやくんと電話終わったばかりで今度黒斗に電話かけたら…明らかに様子見をしてから連絡したことがバレる。
「一回…メッセージだけ送ろう」
絶対みやくんに何か入れ知恵されたなんて思われたくないし…
「…」
とはいえ、卒業以来、というか学院内ですらほぼ一緒にいたせいで今さら何を送るものなのかもわからない。
今までのメッセージの履歴なんて、まだ俺と黒斗が1年生の頃位の"どこにいる"がまだ一つの画面内で見れるくらいにはメッセージのやり取りが少ない。
「久しぶり、だけでいいもの…?こんなに連絡取りあってないなんて自分でも引くほどなんだけど…」
はぁ、と一つ溜息を吐いて一度スマホを閉じる。
一度頭をリセットした方がいい。
そもそもお祝いの言葉だけで終わるっているのも普通に考えたら素っ気なさすぎる。
いくらみやくんの言う通りまだ俺のことを大事にしてくれているんだとしたら、なおさら。
もし俺なら、久しぶりに黒斗から連絡が来たと思ったらおめでとうの一言で電話切られたらショックだし。
「なにか、約束を取り付けるとか…いやでも俺のオフの日が黒斗もオフとは限らないしぃ?」
自問自答してもいい考えは浮かばなくて途方に暮れる。
こういう時、あのオカマなら案外簡単に連絡取れるんだろう。そういう軽率さがなんだか今では無性に羨ましい。
「黒斗、俺が告白したこと…まだ悩ませちゃってるかな…。義理とか、そういうの気にしてるだろうし…むしろ、告白した事自体迷惑だったかも」
思考がどんどんネガティブになる中スイスイと指を滑らせて連絡先を眺める。
だけどやっぱり今連絡を取るべき相手は他でもない誕生日の黒斗なわけで…
「…誕生、日?あぁ、そうだ。」
ふと、同じ苗字の誕生日がいたことを思い出し俺はさっさと"久しぶり、誕生日おめでとう"のメッセージを送る。
もともとぶらついていたショッピングモールで時間を潰していると、ものの数分でメッセージが返ってくる。…むしろ早すぎない?
「って、メッセージじゃなくて電話!?」
慌ててボタンを押すと
『お、お久しぶりです。体調お変わりないですか。いずみーぬさま』
「はぁ?何その態度」
『いや、いずみーぬからメッセージ来るなんて何かの間違いじゃないかと思いまして…あと久しぶりで死ぬほど緊張しておりましてっ…!ねぇ!俺じゃなくない!?』
「あんたら2人揃って同じこと言わないでよねぇ!?態度まで同じなんて!どっちが双子なのぉ!?」
『えっ、誰と同じだって?』
「みやくん!さっき電話かけたら、全く同じような反応なんだけど」
えぇぇ?と嬉しいのか嫌なのか電話越しではわからないけど、少なくとも笑っているあやくんの声。
やけに、黒斗に似てる。ように聴こえる。いや、これは単純に久しぶりだからであって、別に意識しているわけではない。
『あの~、ていうか真面目に何で俺にかけてきたの?黒斗は?』
「まだ…これからしようと思ってたところ。ちょっと練習。」
「ちょっ…練習って…あの、もしかして緊張していらっしゃる?あの瀬名泉が一人の男に連絡とるのに緊張しているんですか!?ひょぁぁぁああ!俺の弟つみぶか~!」
電話越しで恍惚とした表情を浮かべるあやくん。見えないけどたぶん絶対そう。
あの”プリンス”からは想像もつかないような奇声を耳元で聞きながら、やっぱり勇気出して最初から本人にかければよかったぁ。なんて思ったのだった。
::END
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俺たちがまだ学生だった頃、一度だけ告白したことがある。
当然相手は恋愛経験どころか恋愛感情というものに疎かったから、返事はいらない、気持ちだけ知っておいて。…なんて格好つけてしまったけど、今となっては無理やりYESと言わせて恋人関係である事実を作ってしまえばよかったなんて思う自分もいる。
当然そんなことしたくない自分もいるんだけど。
ただ、卒業して会えなくなったらこの気持ちも落ち着くかなと思っていたのに、そんな気配はなく、今まで一緒に…隣に立ってのが当たり前だった彼がどこに行っても一緒にいない。
そんなギャップにむしろ好きって気持ちが膨れ上がっている。
『はい、星宮ですー。お久しぶりですね?』
「なんでそんなかしこまった態度なわけ?」
『いや!だってすごい久しぶりで…しかも今日俺に電話かけてくると思わなかったんだよ』
「まぁそれは…、本当は"じゃない方"に電話かけようと思ったんだけどさぁ」
『せなたんでも緊張して電話かけれない~、なんてことあるんだな』
「チョ~うざい!何も言ってないでしょぉ?」
なんて電話越しの相手に牙を向けるも、全然響いていないようであはは~なんてへらへら笑っている。
「っていうか、黒斗近くにいるのぉ?」
『んーん、今ちょっと野暮用でTrickStarの事務所にいて、俺は電話かかってきたからちょっと離れて電話してるって感じ。』
TrickStarの事務所?なにか共演の予定でもあるってこと?
まぁ、確かに事務所は違っても夢ノ咲のOBって観点では関わりがあるし、20歳の記念のWWと、卒業してから落ち着いたTrickStarならまぁ共演の話があってもおかしくないか。
って、俺たちKnightsとの共演ってないわけぇ?
「ゆうくんと一緒に仕事するなんて、みやくんも随分偉くなったねぇ」
『いや、嫉妬するのはわかるけど俺の方が下だってこと?もういい加減まこたんに対する感情どうにかしろよ…。ってか、俺じゃなくて一緒に仕事するのは黒斗とまこたんの2人!』
呆れと怒りを含ませた溜息が電話の向こうから聞こえる。
はぁ?なにその昔馴染みで共演しますって?俺は?どういう中身でそんな共演になるわけぇ?
まさかモデル業?
「内容…気になるんだけどぉ」
『…あまり口外するのもなんだから言えません。…そんなことより、本人にお祝いの言葉と同時に最近どう?って聞けば?そうすれば自然と話してくれるかもな。』
あの黒斗が公にされていない情報を喋るとは思えないけど、でもみやくんの言う通り、お祝いの言葉くらいは伝えないといけない。というか…本命はそっちだし。
「何時なら電話出てくれる?」
『もともと今日はオフだし、よっぽどのタイミングじゃなければ黒斗は出てくれるだろ。相手はあの瀬名泉だし』
「…どういう意味?嫌味?」
『いや、そんなわけないじゃん。黒斗は今でもきっと泉が一番だーって言うと思うよ』
「……ふうん。いや、変な励ましなんていらないんだけどぉ。」
『うん?励ましじゃないって!事実!あ、それから今度一緒にご飯でも行こうな!』
はいはい、どぉも。と返事をして通話を切る。
連絡先の画面に戻り、目的の人物の文字をタップする。
いや、でも、今みやくんと電話終わったばかりで今度黒斗に電話かけたら…明らかに様子見をしてから連絡したことがバレる。
「一回…メッセージだけ送ろう」
絶対みやくんに何か入れ知恵されたなんて思われたくないし…
「…」
とはいえ、卒業以来、というか学院内ですらほぼ一緒にいたせいで今さら何を送るものなのかもわからない。
今までのメッセージの履歴なんて、まだ俺と黒斗が1年生の頃位の"どこにいる"がまだ一つの画面内で見れるくらいにはメッセージのやり取りが少ない。
「久しぶり、だけでいいもの…?こんなに連絡取りあってないなんて自分でも引くほどなんだけど…」
はぁ、と一つ溜息を吐いて一度スマホを閉じる。
一度頭をリセットした方がいい。
そもそもお祝いの言葉だけで終わるっているのも普通に考えたら素っ気なさすぎる。
いくらみやくんの言う通りまだ俺のことを大事にしてくれているんだとしたら、なおさら。
もし俺なら、久しぶりに黒斗から連絡が来たと思ったらおめでとうの一言で電話切られたらショックだし。
「なにか、約束を取り付けるとか…いやでも俺のオフの日が黒斗もオフとは限らないしぃ?」
自問自答してもいい考えは浮かばなくて途方に暮れる。
こういう時、あのオカマなら案外簡単に連絡取れるんだろう。そういう軽率さがなんだか今では無性に羨ましい。
「黒斗、俺が告白したこと…まだ悩ませちゃってるかな…。義理とか、そういうの気にしてるだろうし…むしろ、告白した事自体迷惑だったかも」
思考がどんどんネガティブになる中スイスイと指を滑らせて連絡先を眺める。
だけどやっぱり今連絡を取るべき相手は他でもない誕生日の黒斗なわけで…
「…誕生、日?あぁ、そうだ。」
ふと、同じ苗字の誕生日がいたことを思い出し俺はさっさと"久しぶり、誕生日おめでとう"のメッセージを送る。
もともとぶらついていたショッピングモールで時間を潰していると、ものの数分でメッセージが返ってくる。…むしろ早すぎない?
「って、メッセージじゃなくて電話!?」
慌ててボタンを押すと
『お、お久しぶりです。体調お変わりないですか。いずみーぬさま』
「はぁ?何その態度」
『いや、いずみーぬからメッセージ来るなんて何かの間違いじゃないかと思いまして…あと久しぶりで死ぬほど緊張しておりましてっ…!ねぇ!俺じゃなくない!?』
「あんたら2人揃って同じこと言わないでよねぇ!?態度まで同じなんて!どっちが双子なのぉ!?」
『えっ、誰と同じだって?』
「みやくん!さっき電話かけたら、全く同じような反応なんだけど」
えぇぇ?と嬉しいのか嫌なのか電話越しではわからないけど、少なくとも笑っているあやくんの声。
やけに、黒斗に似てる。ように聴こえる。いや、これは単純に久しぶりだからであって、別に意識しているわけではない。
『あの~、ていうか真面目に何で俺にかけてきたの?黒斗は?』
「まだ…これからしようと思ってたところ。ちょっと練習。」
「ちょっ…練習って…あの、もしかして緊張していらっしゃる?あの瀬名泉が一人の男に連絡とるのに緊張しているんですか!?ひょぁぁぁああ!俺の弟つみぶか~!」
電話越しで恍惚とした表情を浮かべるあやくん。見えないけどたぶん絶対そう。
あの”プリンス”からは想像もつかないような奇声を耳元で聞きながら、やっぱり勇気出して最初から本人にかければよかったぁ。なんて思ったのだった。
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