彼が大人になった時
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2
「えっと…まずは、ややこしい言い方だったけど、ガチじゃないってことで安心しました。俺が!いろんな意味で!」
ずず、と目の前のメロンジュースをストローで啜り、目の前の人物にへらりと笑顔を向ける。
「あ、あの…すみません。わざわざ事務所まで押しかけてくるとは思ってなかったですけど…私のアドバイスに問題がありました」
「だろうな、誰かの入れ知恵だろうとは思った。」
じとり…なんてもんじゃない視線をかつての転校生、もといプロデューサー…今更ながら、名前はあんずちゃんだっけ?に向ける黒斗は腕を組んであからさまな長〜い溜息を吐いてまこたんに向き直る。
「で?その仕事の話っていうのは?」
さっきまでの視線が嘘のように、いや…でも間違いなくちょっとイラつきを含めながら問いかけるとまこたんはええっと、と自分の鞄から何か書類を出してきた。
「これは…ドラマの資料だな。真が主演なのか?というか、仕事の話ならマネージャーも連れてくるべきだったか。」
「ええっと…僕が主演、というより僕ともう一人なんです。あの!正式な話はもっとちゃんとしないととは思ってるんですけど…」
「ふーん、ダブル主演ってこと?え、ちょっと待ってコレ最近SNSで注目浴びて、アニメ化だー!ってなった漫画のタイトルじゃん!」
「…へぇ、そうなのか」
黒斗が心底興味なさそうにその資料を手に取る。
漫画とか読まないんだろうなー。知ってたけど。
「ってこれ…、内容アレのやつだよね?ドラマ化もやっぱ、すんの…?」
「そうなんです。でも、もう一人は自分より年上って役で、ドラマ制作のプロデューサーからはご厚意で、絡みやすい相手を選んできてくださいって…」
「え、めっちゃ優し…ってか絡みやすいって言い方。わかってて言ってるんだろうな〜」
「僕の初の主演ドラマだからってことらしいです。まぁ当然内容込みの意味で…。これでドラマ嫌いになったら困るって…」
「えぇ!めっちゃまこたん期待されてるってことじゃん!今後ドラマ引っ張りだこになるかもよ!」
「蒼空さん…大袈裟ですよ!」
「なぁ…」
喜びを隠しきれないまこたんと俺の話を遮り、簡易な資料に目を通し終えた黒斗が声を上げる。その声はいつもより覇気がない。
あ、もしかして…
「これ、…俺と、ま…真が、き、キス、する。って書いてある…ぞ?」
「…あー、うん。そうだよ。そういう漫画だから…今それの話を」
「そん、っ…はぁ!?ちょっと待て、俺…これは受けるべきなのか蒼空…!!」
驚くほど必死になって俺の肩を掴みぐんぐんと振り回す。
これだけでめまい起こしそう…。というかまこたんもあんずちゃんもびっくりしてるって…。
いや、まぁ、冷静沈着なイメージが強い黒斗が取り乱してたらそりゃびっくりもするか。
「ちょ、おおお落ち着いて…!まず話を!!」
黒斗の腕を掴み止めさせる。
やっとまともに黒斗の顔が見れたかと思えば、その顔は真っ赤だ。
いやもう熱ある?大丈夫?
ていうか赤くなりすぎて涙目になってない?
「あの、もし黒斗先輩が駄目でしたら…一応別の方っていう選択肢もなくはないですから…」
「でもっ!僕は…黒斗さんだと、…助かるというか…、し、親密にしてもらってた黒斗さんの方が…必要以上に緊張しないかなぁって」
もうそれは策士だよ、まこたん…さすがにって気を利かせてくれたあんずちゃんの言葉を無に帰すじゃん。
でも黒斗恋愛経験ゼロだしそういったことに関して驚くほど初心だし、キスという言葉ですら顔真っ赤にするくらい…だから恋愛ネタ振られるんだよな。
綾人みたいに平気な顔して"キスは済ませてます!嘘で~す!"ってくらいできればいいのに…。
「…ちっ…はぁ」
あ、今舌打ちした…。
隣りにいるもん流石に俺は聞こえるよ?
「わかった。…真のお願いだもんな。」
ふっと、眉を下げながらも笑顔を見せる黒斗に、安堵の表情を見せるまこたんとあんずちゃん。
決してその笑顔は嘘ではないんだけど…おそらくファンの期待に応える時の黒斗の笑顔に近い。
「まぁ、黒斗がやるって言うなら俺は口出ししないよ。俺が漫画読んだ時の感じならほんと、ヤマなしオチなしだから余計な心配はないと思う。」
「余計な心配?」
「例えば、恋愛漫画でよくある邪魔が入るとか~」
「そうですそうです、この漫画修羅場とか起きないんです。職場でキャーキャー言われる恋人を見て、どやぁ!ってする主人公って感じなので。あ、あと確か出てくる手料理が美味しそうって話題です!」
「………それは面白いのか…?」
「しっ!それ言っちゃ駄目!案外今どきそういうほのぼのした方が売れるってことだよ。」
「まぁ僕もちょっとだけ、グダグダしそうだなぁっとは思いましたけど…。黒斗さんとできるなら俄然楽しみになってきました!」
「…!そ、そうだよな。やるからには楽しまないと…良いパフォーマンスにはならないしな」
パフォーマンスってなんだよ…。なんて思いながらもまぁ、さっきよりはちゃんとやる気を出したっぽい黒斗に一安心する。
と、ここで俺のスマホから着信音が鳴る。電話?と思いポケットから出し画面を見ると、そこにはせなたんの文字があった。
「おっ、とぉ…?こっちは結構修羅場っぽくなったりする〜?」
::END
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「えっと…まずは、ややこしい言い方だったけど、ガチじゃないってことで安心しました。俺が!いろんな意味で!」
ずず、と目の前のメロンジュースをストローで啜り、目の前の人物にへらりと笑顔を向ける。
「あ、あの…すみません。わざわざ事務所まで押しかけてくるとは思ってなかったですけど…私のアドバイスに問題がありました」
「だろうな、誰かの入れ知恵だろうとは思った。」
じとり…なんてもんじゃない視線をかつての転校生、もといプロデューサー…今更ながら、名前はあんずちゃんだっけ?に向ける黒斗は腕を組んであからさまな長〜い溜息を吐いてまこたんに向き直る。
「で?その仕事の話っていうのは?」
さっきまでの視線が嘘のように、いや…でも間違いなくちょっとイラつきを含めながら問いかけるとまこたんはええっと、と自分の鞄から何か書類を出してきた。
「これは…ドラマの資料だな。真が主演なのか?というか、仕事の話ならマネージャーも連れてくるべきだったか。」
「ええっと…僕が主演、というより僕ともう一人なんです。あの!正式な話はもっとちゃんとしないととは思ってるんですけど…」
「ふーん、ダブル主演ってこと?え、ちょっと待ってコレ最近SNSで注目浴びて、アニメ化だー!ってなった漫画のタイトルじゃん!」
「…へぇ、そうなのか」
黒斗が心底興味なさそうにその資料を手に取る。
漫画とか読まないんだろうなー。知ってたけど。
「ってこれ…、内容アレのやつだよね?ドラマ化もやっぱ、すんの…?」
「そうなんです。でも、もう一人は自分より年上って役で、ドラマ制作のプロデューサーからはご厚意で、絡みやすい相手を選んできてくださいって…」
「え、めっちゃ優し…ってか絡みやすいって言い方。わかってて言ってるんだろうな〜」
「僕の初の主演ドラマだからってことらしいです。まぁ当然内容込みの意味で…。これでドラマ嫌いになったら困るって…」
「えぇ!めっちゃまこたん期待されてるってことじゃん!今後ドラマ引っ張りだこになるかもよ!」
「蒼空さん…大袈裟ですよ!」
「なぁ…」
喜びを隠しきれないまこたんと俺の話を遮り、簡易な資料に目を通し終えた黒斗が声を上げる。その声はいつもより覇気がない。
あ、もしかして…
「これ、…俺と、ま…真が、き、キス、する。って書いてある…ぞ?」
「…あー、うん。そうだよ。そういう漫画だから…今それの話を」
「そん、っ…はぁ!?ちょっと待て、俺…これは受けるべきなのか蒼空…!!」
驚くほど必死になって俺の肩を掴みぐんぐんと振り回す。
これだけでめまい起こしそう…。というかまこたんもあんずちゃんもびっくりしてるって…。
いや、まぁ、冷静沈着なイメージが強い黒斗が取り乱してたらそりゃびっくりもするか。
「ちょ、おおお落ち着いて…!まず話を!!」
黒斗の腕を掴み止めさせる。
やっとまともに黒斗の顔が見れたかと思えば、その顔は真っ赤だ。
いやもう熱ある?大丈夫?
ていうか赤くなりすぎて涙目になってない?
「あの、もし黒斗先輩が駄目でしたら…一応別の方っていう選択肢もなくはないですから…」
「でもっ!僕は…黒斗さんだと、…助かるというか…、し、親密にしてもらってた黒斗さんの方が…必要以上に緊張しないかなぁって」
もうそれは策士だよ、まこたん…さすがにって気を利かせてくれたあんずちゃんの言葉を無に帰すじゃん。
でも黒斗恋愛経験ゼロだしそういったことに関して驚くほど初心だし、キスという言葉ですら顔真っ赤にするくらい…だから恋愛ネタ振られるんだよな。
綾人みたいに平気な顔して"キスは済ませてます!嘘で~す!"ってくらいできればいいのに…。
「…ちっ…はぁ」
あ、今舌打ちした…。
隣りにいるもん流石に俺は聞こえるよ?
「わかった。…真のお願いだもんな。」
ふっと、眉を下げながらも笑顔を見せる黒斗に、安堵の表情を見せるまこたんとあんずちゃん。
決してその笑顔は嘘ではないんだけど…おそらくファンの期待に応える時の黒斗の笑顔に近い。
「まぁ、黒斗がやるって言うなら俺は口出ししないよ。俺が漫画読んだ時の感じならほんと、ヤマなしオチなしだから余計な心配はないと思う。」
「余計な心配?」
「例えば、恋愛漫画でよくある邪魔が入るとか~」
「そうですそうです、この漫画修羅場とか起きないんです。職場でキャーキャー言われる恋人を見て、どやぁ!ってする主人公って感じなので。あ、あと確か出てくる手料理が美味しそうって話題です!」
「………それは面白いのか…?」
「しっ!それ言っちゃ駄目!案外今どきそういうほのぼのした方が売れるってことだよ。」
「まぁ僕もちょっとだけ、グダグダしそうだなぁっとは思いましたけど…。黒斗さんとできるなら俄然楽しみになってきました!」
「…!そ、そうだよな。やるからには楽しまないと…良いパフォーマンスにはならないしな」
パフォーマンスってなんだよ…。なんて思いながらもまぁ、さっきよりはちゃんとやる気を出したっぽい黒斗に一安心する。
と、ここで俺のスマホから着信音が鳴る。電話?と思いポケットから出し画面を見ると、そこにはせなたんの文字があった。
「おっ、とぉ…?こっちは結構修羅場っぽくなったりする〜?」
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