彼が大人になった時
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1
迎えた誕生日当日。
だが俺は昨日、懐かしさに耽る両親から言い放たれた言葉に頭を悩ませていた。
「せなたんのこと?めちゃくちゃ好きじゃんって言われてたよな~。まぁわかるけど」
「あ、あぁ…ってか、わかるのかよ…。」
リビングでソファに座りながらぼーっとテレビを眺めていると、まぁさすがにバレたのか蒼空に苦笑いを向けられる。
「んー、まぁ…綾人も含めてからかってきた手前、否定できなかったのもあるけど…黒斗は恋愛についてはダメダメだからなぁ」
「…ダメダメ…か?」
まぁ、思い返してみればバラエティ番組に出演し、"20歳に聞いた!恋人にガチでときめいた瞬間"という視聴者からのネタを俺たちが再現してVTRで流し…まぁ当然本人たちはどうなんだ〜って話になり…
蒼空が上手いこと恥ずかしかったですよ〜!なんて笑顔で返すのに対し俺はというとバカ真面目に"経験がないのでどういう感情かわかりません"なんて答えてしまった。
しかも若干言葉に詰まりながら…そう考えればダメダメだと言われるのもしょうがないか…?
「というかそもそも、あの時は別に泉がどうこうなんて考えてないんだが」
「いや、そりゃそうだろうなー!っても明日の収録も、20歳を迎えて恋愛とかどうですかーって話なるよ。俺達アイドルに聞いてくるのもどうかと思うけど、バラエティ番組の事前アンケで恋愛話NGとかすると弾かれるし」
「それもそうだな…というか、恋愛経験ゼロだってことを考えないんだろうか。」
「少なくともモテてたでしょー!って言いたいだけだから」
蒼空の溜息と俺の溜息が重なる。
テレビでは情報番組の時間で、モデルやらお笑い芸人たちが各所の美味しいもの巡りを放送したり、たまにニュースが入ったり…そこには綾人の姿があり、ことあるごとに誕生日の綾人君は~なんて言われている。
俺達もこういうもののレギュラーに入っているし、話すネタが被ってはいけない…。
というか、綾人だって誕生日なんだから恋愛話振られろよ。なんで好きなやつは〜だとか、今後恋愛は〜だとかならないんだ…。
「とはいえ、恋愛は今のところ考えてない…アイドル活動で精一杯だ。って返答じゃ面白みにかけるんだろ?」
「黒斗が面白みとか考えてたのか?そのほうがびっくり。あー、…あれは?好きな人います!ファンです!ってオチ面白いんじゃない?」
「あぁ、ギョッとさせておいて…ってことか」
「黒斗くらい普段無表情でクールで闇深そうって言われてると案外そういうの面白いと思うよ」
「待て、闇深そうってなんだよ。お前だろ闇深いの」
「ちょっと!?止めろよそういうの!まじで!俺の闇深いは洒落にならないから!」
2人で笑いながらもお互いの過去をネタにするなんて、恐らく事情をよく知らない奴からすれば凍りつく内容だろうな。
泉や真、綾人とかなら一緒に笑ってくれるだろうが…。
「まぁ、とにかく恋愛ネタは聞いても面白くないぞ〜って感じを出していけば、自然と触れられなくなるでしょ。綾人とかはなんか見るからにアイドル一筋だから、好きな人とかタイプですら、ファンが一番!って返事だけでOK出ちゃうもんな」
「あいつは許されて俺が許されない意味がわからないんだが…?」
「黒斗って、恋愛の話とかになるとすごいワタワタするから、逆にかわいい〜ってなるんじゃないのか?俺なんてモテるとかモテない以前に夢ノ咲学院くらいしかまともに学校行ってないのに話振られて疲れる」
「…それはそれで別の奴らが群がりそうなネタだな。まぁ、俺も片目になってから周りとは避けて生きてきたから、本当ならそれと同じくらい掘り返されたくないネタだけどな。」
「あ、でも…それこそせなたんとは終始一緒にいただろ?それはそれで?」
「いや、テレビで求められるネタじゃないだろ…!」
「一部のファンは血眼で追っかける話だって!まじで!夢ノ咲でもそうだったけど、それがそのままエスカレーター式で一般のファンになってるからその話はあるよ」
「ない。というか、泉だってもう……さすがに…」
「えー…まさかぁ」
ふと、卒業して、今日に至るまで泉と会ってないことを思い出す。そして、連絡すら取ってない。
俺としては今まで対面で話をしてきた相手に何を連絡すればいいのか分からず、そもそも連絡先に入ってただけで一回も俺からはメッセージなんて送ったことなかったせいか、今更何を送ればいいかわからない。
というか泉だって大人になったんだ。
俺とは違って女に対しての恐怖もないし…この間見たCMとか、まぁとにかく何かしらで共演してるし、俺のことは一時の過ちでさぁ、なんて思ってるに違いない。
今更俺があいつに恋愛感情を抱いていたとして…泉もそうとは限らない。
「え、黒斗。まさかとは思うけど今更もう無理とか…」
蒼空が何か言おうとした矢先、俺のスマホから、着信を知らせる音楽が鳴る。
「んー…、どうぞ」
諦めたように蒼空がスマホを片手に返事したのを見て画面を見ると
真、の一文字。
あぁ、祝いの電話か?そういえば真も卒業以来会ってないな…。なんて思いながら電話に応答する。
「もしもし。」
『黒斗さん!!』
うっ、と小さく唸りスマホを耳から離す。
いや、真が俺を呼ぶときにやけに大きい声を出すのは前からそうだが…通話越しでもコレか…
というか、声色があまり良くない意味を含んでいる気がする。
『あ、あの…恐らく今日はお休みですよね?お、お誕生日ですし…?おめでとうございます。』
「…?あぁ…ありがとう。単刀直入に聞くが何か隠してるな?」
『え"!?いや、あの…まだ二言くらいしか会話してないですよね?』
「なんとなくわかる。で?どうした?」
スマホの向こうでは明らかに狼狽えているであろう真が"うー"だの、"あのー"だの言いながら言葉を選んでいる…のだと思う。
『黒斗さん…あの…ぼ、僕と付き合うとか…って話…になったら、どう思いますか?』
は?
「………は?」
と、俺が声を漏らすと蒼空が一瞬こちらを見た後、慌てていつも仕事に持っていっているボディバッグから手鏡を出して俺に向ける。
そこに写っていたのは般若の面のような俺の顔だった。
::END
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迎えた誕生日当日。
だが俺は昨日、懐かしさに耽る両親から言い放たれた言葉に頭を悩ませていた。
「せなたんのこと?めちゃくちゃ好きじゃんって言われてたよな~。まぁわかるけど」
「あ、あぁ…ってか、わかるのかよ…。」
リビングでソファに座りながらぼーっとテレビを眺めていると、まぁさすがにバレたのか蒼空に苦笑いを向けられる。
「んー、まぁ…綾人も含めてからかってきた手前、否定できなかったのもあるけど…黒斗は恋愛についてはダメダメだからなぁ」
「…ダメダメ…か?」
まぁ、思い返してみればバラエティ番組に出演し、"20歳に聞いた!恋人にガチでときめいた瞬間"という視聴者からのネタを俺たちが再現してVTRで流し…まぁ当然本人たちはどうなんだ〜って話になり…
蒼空が上手いこと恥ずかしかったですよ〜!なんて笑顔で返すのに対し俺はというとバカ真面目に"経験がないのでどういう感情かわかりません"なんて答えてしまった。
しかも若干言葉に詰まりながら…そう考えればダメダメだと言われるのもしょうがないか…?
「というかそもそも、あの時は別に泉がどうこうなんて考えてないんだが」
「いや、そりゃそうだろうなー!っても明日の収録も、20歳を迎えて恋愛とかどうですかーって話なるよ。俺達アイドルに聞いてくるのもどうかと思うけど、バラエティ番組の事前アンケで恋愛話NGとかすると弾かれるし」
「それもそうだな…というか、恋愛経験ゼロだってことを考えないんだろうか。」
「少なくともモテてたでしょー!って言いたいだけだから」
蒼空の溜息と俺の溜息が重なる。
テレビでは情報番組の時間で、モデルやらお笑い芸人たちが各所の美味しいもの巡りを放送したり、たまにニュースが入ったり…そこには綾人の姿があり、ことあるごとに誕生日の綾人君は~なんて言われている。
俺達もこういうもののレギュラーに入っているし、話すネタが被ってはいけない…。
というか、綾人だって誕生日なんだから恋愛話振られろよ。なんで好きなやつは〜だとか、今後恋愛は〜だとかならないんだ…。
「とはいえ、恋愛は今のところ考えてない…アイドル活動で精一杯だ。って返答じゃ面白みにかけるんだろ?」
「黒斗が面白みとか考えてたのか?そのほうがびっくり。あー、…あれは?好きな人います!ファンです!ってオチ面白いんじゃない?」
「あぁ、ギョッとさせておいて…ってことか」
「黒斗くらい普段無表情でクールで闇深そうって言われてると案外そういうの面白いと思うよ」
「待て、闇深そうってなんだよ。お前だろ闇深いの」
「ちょっと!?止めろよそういうの!まじで!俺の闇深いは洒落にならないから!」
2人で笑いながらもお互いの過去をネタにするなんて、恐らく事情をよく知らない奴からすれば凍りつく内容だろうな。
泉や真、綾人とかなら一緒に笑ってくれるだろうが…。
「まぁ、とにかく恋愛ネタは聞いても面白くないぞ〜って感じを出していけば、自然と触れられなくなるでしょ。綾人とかはなんか見るからにアイドル一筋だから、好きな人とかタイプですら、ファンが一番!って返事だけでOK出ちゃうもんな」
「あいつは許されて俺が許されない意味がわからないんだが…?」
「黒斗って、恋愛の話とかになるとすごいワタワタするから、逆にかわいい〜ってなるんじゃないのか?俺なんてモテるとかモテない以前に夢ノ咲学院くらいしかまともに学校行ってないのに話振られて疲れる」
「…それはそれで別の奴らが群がりそうなネタだな。まぁ、俺も片目になってから周りとは避けて生きてきたから、本当ならそれと同じくらい掘り返されたくないネタだけどな。」
「あ、でも…それこそせなたんとは終始一緒にいただろ?それはそれで?」
「いや、テレビで求められるネタじゃないだろ…!」
「一部のファンは血眼で追っかける話だって!まじで!夢ノ咲でもそうだったけど、それがそのままエスカレーター式で一般のファンになってるからその話はあるよ」
「ない。というか、泉だってもう……さすがに…」
「えー…まさかぁ」
ふと、卒業して、今日に至るまで泉と会ってないことを思い出す。そして、連絡すら取ってない。
俺としては今まで対面で話をしてきた相手に何を連絡すればいいのか分からず、そもそも連絡先に入ってただけで一回も俺からはメッセージなんて送ったことなかったせいか、今更何を送ればいいかわからない。
というか泉だって大人になったんだ。
俺とは違って女に対しての恐怖もないし…この間見たCMとか、まぁとにかく何かしらで共演してるし、俺のことは一時の過ちでさぁ、なんて思ってるに違いない。
今更俺があいつに恋愛感情を抱いていたとして…泉もそうとは限らない。
「え、黒斗。まさかとは思うけど今更もう無理とか…」
蒼空が何か言おうとした矢先、俺のスマホから、着信を知らせる音楽が鳴る。
「んー…、どうぞ」
諦めたように蒼空がスマホを片手に返事したのを見て画面を見ると
真、の一文字。
あぁ、祝いの電話か?そういえば真も卒業以来会ってないな…。なんて思いながら電話に応答する。
「もしもし。」
『黒斗さん!!』
うっ、と小さく唸りスマホを耳から離す。
いや、真が俺を呼ぶときにやけに大きい声を出すのは前からそうだが…通話越しでもコレか…
というか、声色があまり良くない意味を含んでいる気がする。
『あ、あの…恐らく今日はお休みですよね?お、お誕生日ですし…?おめでとうございます。』
「…?あぁ…ありがとう。単刀直入に聞くが何か隠してるな?」
『え"!?いや、あの…まだ二言くらいしか会話してないですよね?』
「なんとなくわかる。で?どうした?」
スマホの向こうでは明らかに狼狽えているであろう真が"うー"だの、"あのー"だの言いながら言葉を選んでいる…のだと思う。
『黒斗さん…あの…ぼ、僕と付き合うとか…って話…になったら、どう思いますか?』
は?
「………は?」
と、俺が声を漏らすと蒼空が一瞬こちらを見た後、慌てていつも仕事に持っていっているボディバッグから手鏡を出して俺に向ける。
そこに写っていたのは般若の面のような俺の顔だった。
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