彼が大人になった時
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-Opening-
誕生日前日の夜。19時。
昼の生中継の仕事、夕方ラジオの仕事やらをこなした俺たちは…今度は家族のとんでもハイテンションパーティーに参加する。
『Happy Birthday!!我が息子たち、綾人〜!黒斗〜!』
『おめでとう。黒斗、綾人。20歳か…我が子の成長というのは本当に瞬きの間だね』
パソコンに映る両親は温度差が目に見えるほど違い、画面の右上に表示される綾人は満面の笑み、と一緒に周りに星が観えるほどだ。
そして真向かいに座っている蒼空はというと、羨ましそうに見ているようにも取れるし、嬉しそうにも見える。
『黒斗〜!誕生日おめでとう!本当に生まれてきてくれてありがとう!』
「…あー、うん。おめでとう。そしてありがとう」
「ふは、なんか恥ずかしそうじゃん、黒斗。」
「改めて面と向かって言われて、言い返すのってなんか恥ずかしくないか?」
『面と向かってなんて…、画面越しじゃないか。そうだ、私たちのことをファンだと思えば可愛い笑顔を拝むことができるかな?』
「母さん…からかうのはやめてくれ…」
「お母さん、もっと言ってやってほしいです!黒斗ってば、卒業式の時みたいな笑顔全然見せないんですもん!」
「こら、蒼空…!いいだろ。前よりはだいぶ笑ってるんだから」
『ふふ、紆余曲折あったけれど…黒斗がまた笑顔を振りまける子になって安心したよ。それもこれもソラくんのお陰だね。この場を借りてお礼を言わせてくれ。本当にありがとう』
俺が蒼空を制止するように声を上げると、母さんはふふっと短く笑いながら蒼空に目を合わせて感謝の言葉を述べる。
「えっ、俺…?」
ギョッとしたように蒼空が目を丸めるのをまぁ無理はない。
俺の母さん、目良透は名前に負けず、まるで人を見透かすような目力を持っている。
ちなみにその名前と、独特な喋り方で、本当は男性説が事務所では囁かれているらしい。当の本人は面白がっているようだが。
『そうだな!蒼空くんには本当にWWだけじゃなく、目良家にとっても大きな存在だ!むしろもはや家族!It's Family!』
「いや、さすがにそれは言いすぎじゃ…なぁ?黒斗?」
父さんからも目いっぱいに褒められ、先程のいたずら顔はどこへやら…狼狽える蒼空が俺に助けを求める。
が、
「賞賛は素直に受け取っておくものだろ?」
『ぷっはは!蒼空って意外と真面目に褒められるの慣れてないの!?鳩が豆鉄砲食らった顔してんじゃん!』
「こら、綾人っ、ぷっ、はは…からかったら可哀想だろ?」
「こんのっ…急に矛先変わったからって兄弟揃って同じ笑い方しやがってぇ〜…!!」
「おーおー、降参降参」
その場に立ち上がった蒼空に両手を上げると、まぁ目の前に両親が映っている以上は〜、と肩を竦めて自分の椅子に腰を掛けなおす。
と、また微笑ましそうに笑った母さんが先程より声を上げて話し出す。
『まぁ、ソラくんを正式に家族にすることは今後の活動上できないが…、黒斗と兄弟のような、ライバルのような関係でずっといて欲しい。……あぁ、それから綾人とも』
『ちょっと…忘れてなかった?』
「いやいやっ、だから大袈裟ですって…!それに俺は、死んでも星宮…ですし?」
蒼空の顔が作り笑いに変わり、自分の苗字を口にする。
『んん?まさか?あの後味を占めてドルでもせがんできたか!!』
「父さん言い方っ。……蒼空、連絡きたのか?」
「いや、来てないけど…自分への戒め、だよ。俺は今も人格に障害があるし、卒業を機に…目良一家からの支援で縁を切ったけど、それでも…俺はあの母親の子供だから」
蒼空が自分の拳を強く握り、まるでもう一つの人格を抑え込んでいるように自分の拳を睨む。
何を考えているのか、観てしまえば簡単だ。だが、それは相棒として信じたいという気持ちを無下にしてしまう。
蒼空自身ですら悩んでいることを俺が簡単に覗いていいものではない。
「まぁ、蒼空が星宮なのは変えようがないな。だが俺は…お前のことを、双子の兄弟みたいに思ってる。俺や、綾人と同じ、優しい心の持ち主なんだろ?」
「……黒斗」
視線を上げ、俺と目を合わせる蒼空。
が、
「俺は優しいかもしれないけど黒斗と、特に綾人はどうかな〜?」
と頭の後ろで手を組みおどけ始める。
『ぬあぁぁー!ったく黒斗とイチャイチャするだけじゃなく、俺を貶すなぁぁ!!俺は!優しい心の!持ち主!』
「っははは!…やっぱり蒼空は最高だ。お前となら一生いれるな…!」
「ちょっと!咲さん!お母さん!今の聞きました!?そして見ました!?今の笑顔!」
『Of course!!ばっちりだよ!こっちまで照れくさくなっちゃうよねぇ〜!!』
「っ!?」
ハッとしてパソコンを見ると嬉しそうに笑う父さんと、笑顔のまま表情が動かない母さんが、目から驚くほどの涙を流していた。
『おっと!Honey!今タオルを持ってくるよ!』
ずま"な"い"。と若干嗚咽混じりに返事をする自分の母親に、感情表現が極端だな。と呆れる。
早速戻ってきた父さんに短くお礼を言うとまさかのバスタオルに顔を埋めた。
「バスタオル…」
『バスタオルかー』
蒼空と綾人の声が重なり気づかれないように笑う。この2人は本当に似てるなぁ、なんて双子の俺が言うことじゃないけど。
『ふぅ…、取り乱してしまって悪かったね。ソラが正式にうちの子になったことと、黒斗の笑顔が見れて感極まってしまった。今度ソラの歓迎会を開こう』
「え、歓迎会!?てか正式にってなに!?」
『もちろん、全員のオフを合わせるのはなかなか難しいけれどね。必ずや実現するよ。その時は事前に連絡を入れる。任せてくれ』
ふふ、とドヤ顔と共に古臭い電話のハンドサインをする母さん。
ちょっと…?と小声で俺に目配せをする蒼空だが、
「…お前の件のときも目の当たりにしたが、この人行動力が化け物だからな…やると言ったらやるし、それにお前のことももうソラ呼びだしな。もう完全に身内だぞ」
「あ、あぁ…そういえばお母さんって周り全員"くん"付けで呼ぶもんな…。せなたんとか、佐賀美せんせーも」
と、蒼空が思い出すように話していると、
『あぁ、泉くんか。無論今でも連絡を取り合っているんだろう?黒斗の大好きな人なのだから。』
『そうだぞ!綾人と違って黒斗は友人が少ないからなぁ…。いや、無理に作るよりも一番好きな人を大事にするっていうのも素晴らしいことだけども!』
と、懐かしさにうんうんと頷く両親とは裏腹に、俺は目を見開いてただ黙って聞くことしかできなかった。
::END
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誕生日前日の夜。19時。
昼の生中継の仕事、夕方ラジオの仕事やらをこなした俺たちは…今度は家族のとんでもハイテンションパーティーに参加する。
『Happy Birthday!!我が息子たち、綾人〜!黒斗〜!』
『おめでとう。黒斗、綾人。20歳か…我が子の成長というのは本当に瞬きの間だね』
パソコンに映る両親は温度差が目に見えるほど違い、画面の右上に表示される綾人は満面の笑み、と一緒に周りに星が観えるほどだ。
そして真向かいに座っている蒼空はというと、羨ましそうに見ているようにも取れるし、嬉しそうにも見える。
『黒斗〜!誕生日おめでとう!本当に生まれてきてくれてありがとう!』
「…あー、うん。おめでとう。そしてありがとう」
「ふは、なんか恥ずかしそうじゃん、黒斗。」
「改めて面と向かって言われて、言い返すのってなんか恥ずかしくないか?」
『面と向かってなんて…、画面越しじゃないか。そうだ、私たちのことをファンだと思えば可愛い笑顔を拝むことができるかな?』
「母さん…からかうのはやめてくれ…」
「お母さん、もっと言ってやってほしいです!黒斗ってば、卒業式の時みたいな笑顔全然見せないんですもん!」
「こら、蒼空…!いいだろ。前よりはだいぶ笑ってるんだから」
『ふふ、紆余曲折あったけれど…黒斗がまた笑顔を振りまける子になって安心したよ。それもこれもソラくんのお陰だね。この場を借りてお礼を言わせてくれ。本当にありがとう』
俺が蒼空を制止するように声を上げると、母さんはふふっと短く笑いながら蒼空に目を合わせて感謝の言葉を述べる。
「えっ、俺…?」
ギョッとしたように蒼空が目を丸めるのをまぁ無理はない。
俺の母さん、目良透は名前に負けず、まるで人を見透かすような目力を持っている。
ちなみにその名前と、独特な喋り方で、本当は男性説が事務所では囁かれているらしい。当の本人は面白がっているようだが。
『そうだな!蒼空くんには本当にWWだけじゃなく、目良家にとっても大きな存在だ!むしろもはや家族!It's Family!』
「いや、さすがにそれは言いすぎじゃ…なぁ?黒斗?」
父さんからも目いっぱいに褒められ、先程のいたずら顔はどこへやら…狼狽える蒼空が俺に助けを求める。
が、
「賞賛は素直に受け取っておくものだろ?」
『ぷっはは!蒼空って意外と真面目に褒められるの慣れてないの!?鳩が豆鉄砲食らった顔してんじゃん!』
「こら、綾人っ、ぷっ、はは…からかったら可哀想だろ?」
「こんのっ…急に矛先変わったからって兄弟揃って同じ笑い方しやがってぇ〜…!!」
「おーおー、降参降参」
その場に立ち上がった蒼空に両手を上げると、まぁ目の前に両親が映っている以上は〜、と肩を竦めて自分の椅子に腰を掛けなおす。
と、また微笑ましそうに笑った母さんが先程より声を上げて話し出す。
『まぁ、ソラくんを正式に家族にすることは今後の活動上できないが…、黒斗と兄弟のような、ライバルのような関係でずっといて欲しい。……あぁ、それから綾人とも』
『ちょっと…忘れてなかった?』
「いやいやっ、だから大袈裟ですって…!それに俺は、死んでも星宮…ですし?」
蒼空の顔が作り笑いに変わり、自分の苗字を口にする。
『んん?まさか?あの後味を占めてドルでもせがんできたか!!』
「父さん言い方っ。……蒼空、連絡きたのか?」
「いや、来てないけど…自分への戒め、だよ。俺は今も人格に障害があるし、卒業を機に…目良一家からの支援で縁を切ったけど、それでも…俺はあの母親の子供だから」
蒼空が自分の拳を強く握り、まるでもう一つの人格を抑え込んでいるように自分の拳を睨む。
何を考えているのか、観てしまえば簡単だ。だが、それは相棒として信じたいという気持ちを無下にしてしまう。
蒼空自身ですら悩んでいることを俺が簡単に覗いていいものではない。
「まぁ、蒼空が星宮なのは変えようがないな。だが俺は…お前のことを、双子の兄弟みたいに思ってる。俺や、綾人と同じ、優しい心の持ち主なんだろ?」
「……黒斗」
視線を上げ、俺と目を合わせる蒼空。
が、
「俺は優しいかもしれないけど黒斗と、特に綾人はどうかな〜?」
と頭の後ろで手を組みおどけ始める。
『ぬあぁぁー!ったく黒斗とイチャイチャするだけじゃなく、俺を貶すなぁぁ!!俺は!優しい心の!持ち主!』
「っははは!…やっぱり蒼空は最高だ。お前となら一生いれるな…!」
「ちょっと!咲さん!お母さん!今の聞きました!?そして見ました!?今の笑顔!」
『Of course!!ばっちりだよ!こっちまで照れくさくなっちゃうよねぇ〜!!』
「っ!?」
ハッとしてパソコンを見ると嬉しそうに笑う父さんと、笑顔のまま表情が動かない母さんが、目から驚くほどの涙を流していた。
『おっと!Honey!今タオルを持ってくるよ!』
ずま"な"い"。と若干嗚咽混じりに返事をする自分の母親に、感情表現が極端だな。と呆れる。
早速戻ってきた父さんに短くお礼を言うとまさかのバスタオルに顔を埋めた。
「バスタオル…」
『バスタオルかー』
蒼空と綾人の声が重なり気づかれないように笑う。この2人は本当に似てるなぁ、なんて双子の俺が言うことじゃないけど。
『ふぅ…、取り乱してしまって悪かったね。ソラが正式にうちの子になったことと、黒斗の笑顔が見れて感極まってしまった。今度ソラの歓迎会を開こう』
「え、歓迎会!?てか正式にってなに!?」
『もちろん、全員のオフを合わせるのはなかなか難しいけれどね。必ずや実現するよ。その時は事前に連絡を入れる。任せてくれ』
ふふ、とドヤ顔と共に古臭い電話のハンドサインをする母さん。
ちょっと…?と小声で俺に目配せをする蒼空だが、
「…お前の件のときも目の当たりにしたが、この人行動力が化け物だからな…やると言ったらやるし、それにお前のことももうソラ呼びだしな。もう完全に身内だぞ」
「あ、あぁ…そういえばお母さんって周り全員"くん"付けで呼ぶもんな…。せなたんとか、佐賀美せんせーも」
と、蒼空が思い出すように話していると、
『あぁ、泉くんか。無論今でも連絡を取り合っているんだろう?黒斗の大好きな人なのだから。』
『そうだぞ!綾人と違って黒斗は友人が少ないからなぁ…。いや、無理に作るよりも一番好きな人を大事にするっていうのも素晴らしいことだけども!』
と、懐かしさにうんうんと頷く両親とは裏腹に、俺は目を見開いてただ黙って聞くことしかできなかった。
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