彼が合宿に参加するとき
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-合宿14日目-都内某所-
我が儘を言えば、正直双子なんて嫌だ。
まぁ早い話、1歳でも2歳でも上が良かった。弟の甘えさせ方とか、頼らせ方とか、兄への憧れだって持たせたかった。現実はというと、精神年齢は確実に黒斗の方が上だし、甘えさせることなんてできずにむしろ俺が甘えてばかり。憧れなんてお互い持ってない。
いきなり脈絡もなくこういった考えがよぎるほど、同じホテルの下にいながら三日三晩黒斗に会えなかった俺の精神は正直結構やばい。あぁもう俺が双子じゃなかったら看病できたのかな。死にたい。
「で、シャイニング事務所と夢ノ咲で二台の車に分かれてさー、俺は親愛なる兄弟に会えなくてつらーいってなってるんだよ。なんで離されるの?意味わかんない。」
「貴様に非があるんだろう。」
車のシートにうがぁーと雄たけびを上げながら俺が凭れると隣にいたミューちゃんさんが俺の顔面に裏拳を見舞う。もちろん寸止めだったけど。
前の座席のにーやんはうぜぇ、とでも言いたげに俺を睨む、一体俺のどこに非があったと…?
「アヤト、いくら何でも病人に抱き着こうとしたのは常識がなってないというか、いい加減頭おかしいのかなって本気で悩んだ。」
「ちょっ!頭おかしくないし、俺が黒斗の風邪とかうつったら少しは黒斗が楽になるかと思って…!」
「てめぇ明日本番だろうが…」
にーやんに間髪入れずにそう指摘され返す言葉もない。確かに明日のミュージカルは成功させなきゃならない。そう考えればやるからには本気のにーやんが怒るのも無理ないけど、それでも家族の体調が心配なのは当たり前の事だろ。
とはいえ、舞台に立つ俺と、裏仕事をする黒斗と比べれば圧倒的に風邪をひいてても何とかなるのは黒斗の方だ。
「嶺ちゃん。」
みんなの視線が痛くて逃げようと嶺ちゃんに声をかける。そういえば今日はいつもよりハットを深くかぶってるしあまり高々と声を発してないな。
「嶺ちゃーん。昨日黒斗の熱、何度くらいだった?」
話題を丸々変えることはせずとも、それは誰しもが気になることのようで、俺への冷たい目線は外され答えを待つようにみんなの視線が嶺ちゃんの方へ移動する。ミューちゃんさんはちらっと見てすぐ手元の本に視線が戻ったけど。。
今回に至っては、黒斗の看病の提案から実際に行ったのはこっち側なのだから。
「…、ん?」
少しの間をあけて嶺ちゃんが応えたかと思うと、まさかの聞き返すような反応。いや、聞いてなかった?やっぱり今日の嶺ちゃんおかしい。
「えーっと…だから、黒斗の熱何度だった?」
「黒斗?あ、えっと、37.2くらい…だったかなぁー」
振り返り、顎に人差し指を当てて思い出す嶺ちゃんにふーんと返す。まじまじと見つめるとなぁにー?とおどけて返される。こういう時の嶺ちゃんは嘘をついているというのはわかってはいるけど何についてとか、なんでとか、そこまではわからない。
むしろ、いろんなことで嘘をつきすぎてるせいでこういった時の嶺ちゃんの事は半分諦めている。
考えたらきりがないから、負け。といった感じなのだ…。
「37.2っつーと、やっぱりまだ無理させるわけにはいかねぇよな。ぶり返したら今度こそ病院だろ」
「そうだね。幸い今日のホテルは事務所の融通利くところだから、黒斗も働かなくていいし。くれぐれもアヤトを黒斗に近づけないようにしないとね。」
「ちょ、それどういう意味!?」
みんなもともと何癖もある人なのはわかってるけど、俺の扱い酷いよね。まるで厄介者みたいな!黒斗のことは大切にしてるのに!
そもそも…俺が朝移動直前のロビーで黒斗に抱き着こうとしたのは、かすかに、だけど…黒斗が両手をわずかに広げてたから。いや、まぁもちろん俺が抱き着きたいって思ったことを見られててしょうがなく受け止める体勢を取っただけに過ぎないんだけど。さすがに広げなかったら俺だって抱き着かないし、でも広げたということはOKってことだから、別にあんなみんなで鬼の形相になって俺をひきはがそうとしなくたっていいのになぁ…
「そういえば黒斗、マスクしてたけど、笑ってたなー」
「貴様…また奴の事で独り言か?隣にいる俺の身にもなってみろ。」
じとりと小説から俺へと視線を移すミューちゃんさんに降参と言うように両手を上げる。しかしミューちゃんさんは嫌味も何も言わず俺を睨むだけ。
「…?」
思わず首を傾げるとふっと笑みを作る。うん、なんか嫌なことするのはわかった。俺にとって嫌なことしかしないんだろ。そういう方面では俺、学習するような悲しい性格してるからな。
「相変わらず似ていると思ってな。やはり眼帯がなければ瓜二つだな」
「え」
「貴様と黒斗の違いは眼帯の有無くらいだ。立っていれば身長の差も気付くが」
「俺と、黒斗が?…なんか、ミューちゃんさんが他人に興味…というかそういうこと言うの珍しい。」
「見分けるのが難しいからと観察していて気付いただけだ。くだらないなりすましもあったしな」
ははは、と空笑いして見せれば呆れたように溜め息を吐かれる。昔からなんでも一緒だったから確かにパッと見じゃわからないとかあるかも。後姿とか…といっても黒斗の髪は今少し長い。女装できるほどの長さはないし、昔の男の娘時代からしたら全然短いんだけど…まぁでもミューちゃんとか藍くんもかなり長い部類に入る。
どうしても…髪型だけでも違うと落ち着かない。
何が俺の怖いところかと言うとそのうち眼帯付けてしまうんじゃないかと思うほどのお揃い精神が怖い。それくらいお揃いじゃないと落ち着かないのだ。が、さすがにそうも言ってられないし、最近は黒斗がまた髪伸ばすとか何とか言ってるし、これを機に弟離れとか…
「できるわけないけど…ちなみにミューちゃんさんと藍くんって、なんで髪長いの?あ、嶺ちゃんも長いよね。標準がにーやんしかいない…じゃん」
「ランマルの髪型は標準じゃないと思うけど…」
それぞれの髪が長い理由…それがわかれば黒斗が髪伸ばそうとしてる理由もわかったりするのか…?
昔伸ばしてた時は…確か俺とユニット組んでて、ファンの為にも見分けがつきやすいように…で、もっと小さい頃男の娘の仕事も入ってたっていう話も聞いた。俺もその時の記憶はないけど…。
今また伸ばす理由は?蒼空と見分けってそれほど顔似てるわけじゃないし、男の娘の仕事でも…入ったとか?
「ボクの髪は生まれつきこの長さ。理由とかはボクにはわからないけど、この長さが馴染んでる。」
「僕ちんは…、もちろん昔はショートだった時もあったけど、なんでだろう。成り行きかなぁ…ドラマの役とかそういうので伸ばしてたらそれが定着した…見たいなだった気がする」
「俺の髪は特に伸ばしたいとか切りたいということもなかったからな。まぁ、今となってはファンのイメージもあってか、この長さをキープするようにはしているが…」
「はい、じゃぁ次はランラン」
「いや、俺は標準の長さだって言ってんだろ。語ることなんてねぇよ。それよか、綾人。アイツは藍くらいの長さありそうだが、お前てっきり同じ長さにって、アイツの髪切るかしそうだけどな」
聞かれる気がしていた質問に一度苦笑いを浮かべるとにーやんも嶺ちゃんも首を傾げる。
「眼帯ができないから…もうお揃いは控えようと思ってるから」
「アヤトが…眼帯…」
「まぁ…あれは確かに真似しようにも、ねぇ?」
「それで弟離れできるならいいんじゃねぇか?」
「え?弟離れはしないけど」
「しねぇのかよ!?」
::Twins are cute but...
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