彼が合宿に参加するとき
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-合宿-10日目-某所ホテル-
「もう後4日しかない。」
「だねぇ」
「イズミ、もう一回」
「はぁ?なんで」
「音ずれてたから。」
「ちょーうざい」
この俺が音ずれてるとかありえないし?そもそも楽譜見ながら歌ってるのに外れるわけないじゃん。そう思いながらも俺とあいくん2人で歌う部分を歌いなおす。もちろんあいくんも。
2人で読み合わせを始めたのはつい数十分前。今日は休みだとかなんだとかで自由に過ごして良いとかって話だったけど、俺もあいくんも特にどこかの部屋に訪問しに行ったりとか面倒なことはしないためベッドで寝転がってて、どちらからともなく読み合わせをする話になって今に至る。
「ここ…」
「何?」
「ここさぁ、俺の声じゃ出ないんだよねぇ。高すぎ。あいくんなら出るでしょ。変わってよ」
「確かに歌詞が一緒だし、物語に影響が出ることはないけど、」
「けど?なぁに」
「決めたのは黒斗。だから変えていいかは黒斗に聞かなきゃいけない。一応監督なんでしょ?」
別にそれくらいのことでわざわざ黒斗に会いに行く必要ある…?ないよねぇ。そんな静止の声を上げるより先にあいくんは部屋を出ようとカードキーを持つ。
「黒斗の部屋って50…」
「503号室。イズミって案外記憶力ないんだね。」
「はぁ?急には出てこないだけ!もう、ほんっとむかつく。」
悪態をつきながらも自分も台本を持ち後をついていく。なんで俺が後ろをついて歩かなきゃいけないの?ていうか今日はオフなんだからゆったりしたかったのに本格的な読み合わせになるなんて…
「黒斗…。ボク、美風藍です」
規則正しいノックの後にあいくんがそういうとしばらくしてドアが開かれる。現れたのは黒斗ではなくみやくんだった。
「ソラ…?黒斗は?」
「しーっ、入ってきてもいいけど。なんかあった?」
尋ねながら俺たちを招き入れるみやくんを横目に部屋を見渡すとベッドに横たわる黒斗の姿。そうだよねぇ?オフってそういうふうに過ごすものだよねぇ。
「寝てるの?せっかくミュージカルの事で話があったのに。」
「ん?俺が聞こうか…?」
「みやくんが?」
「ソラに言っても了承は得られない。黒斗はいつ起きるの?」
あいくんがそういうとみやくんは不服そうに眉間に皺を寄せるも黒斗を見てばつが悪そうに溜め息を吐いた。
「さっきまで台本読んで、そのあと資料見てた。周りにはオフだとか言ってたのに自分はみっちり仕事…。んで、さっきぶっ倒れた」
「はぁ?」
「イズミ声大きい。」
「っ…倒れたってどういう意味?」
「そのままの意味だよ。トイレいってその机に戻ろうとした途中で急に。俺も焦ったけど…。とりあえずそこに寝かせて、えと…」
「で?」
「あー、えっと…」
「何かあったの?」
どもるみやくんにすでにお見通しだという視線をあいくんと揃って向ける。降参。と両手を上げるみやくんはもう一度深く溜め息を吐いて周りには言わないように念を押して口を開く。
「熱が…あったんだよ。それは、あいつが意識戻ってから伝えて…それでみんなには言うなって。」
「熱って…何度?薬は?病院だっていかなきゃいけないかもしれないのに?」
「落ち着けって。そんな高くないし、それにあと4日、指導者がいない状態でレッスンなんて難しい。藍がいる前で言うのもなんだけどあの3人は俺やKnightsじゃ手に負えないだろ。あの2人が喧嘩し始めたりなんかしたら…」
「…確かに、ランマルとカミュの喧嘩には巻き込まれないようにするのが一番だからね。それを止めてた黒斗がいないとなると、難しいかも。あと4日…確実に喧嘩しない保証は0%に等しい。」
「だからって。病人を立たせる気?あいくんは会って数日だからかもしれないけど、みやくんは相棒にそんな無茶させるつもりなの?」
じとりと睨めば逃げるように目を逸らされなおさらむかついてくる。
「そんなつもりはさすがにないけど、黒斗を看病するのにさらにもう1人抜けなきゃいけないのは確かだろ。こいつ、すぐ無茶するから。」
「じゃぁボクから提案。あの2人が喧嘩しないようにすれば問題は解決するよね。合宿は残り4日。厳密にいえば、4日目は本番に向けてここから会場の近くのホテルに移動するだけで1日を終える予定だよね。つまりレッスンをするのは3日。だから、明日はどちらかを看病させて、明後日もどちらかを看病させればいいんじゃない?」
「あー。なるほど。」
「あいくん…あの2人がまともに看病するの?俺はさすがにそこまで見極めることはできないけど、想像できないんだけどぉ。」
「…蘭たんさん今頃くしゃみしてるだろうなぁ」
「確かにそうだね。でもランマルはまだ希望が見えるよ。根は優しいってレイジもよく言ってる。カミュは…どうだろう。でもここに置いていけば嫌でもするんじゃないかな。」
「おいていくって…カミュさんぶちぎれない?この愚民めが!って俺もう言われたくないんだけど…」
みやくんは無駄に怒らせるようなことするから悪いんだと思うんだけど?
とはいえストッパーがいない中、2人が会わないようにするにはそうするしかない…
「で?3日目は?」
「妥当なのはレイジじゃない?イズミでもいいけど、君たち仲いいみたいだし。」
「せなたん、最近黒斗にご執心みたいだしやめておこう。」
「はぁ?ちょっとそれどういう意味。」
「だって恋人計画してからなんかおかしいじゃん!」
「一応俺あの時黒斗に好意持ってるってばれてて恋人計画してるんだからねぇ?少しくらい気が触れたっていいじゃん」
「思いっきり恋人面してたもんな。つか、正直そのままなると思ってたのに。振られたの…?」
「ちょーうざい。振られたんじゃないし。俺から断ったの!恋愛感情とかわからないうちは無理に俺の気持ちに応えなくていいって。待つからって!」
「おお、格好いいな。」
「へぇ、イズミって黒斗のこと好きなんだ。ボク好きって感情についてわからないことが多いからいい観察対象になるかも」
観察…?いや、人の事なんだと思ってんの。
「でも、レイジの方が気が利くと思うし、看病はレイジにしてもらおう。」
「俺じゃ気が利かないっていうの?あいくん俺の事見下しすぎ」
「一緒の部屋にいたらだいたい行動パターンがわかるし、人の為に何かしそうなタイプじゃないでしょ。」
「むかつく。」
「どちらにせよ、こういう時は大人に任せた方がいいってのは確かなんだし…、今回は嶺ちゃんと、蘭たんさんと、カミュさんに任せよう。今日、その話をしに行くから。」
「誰が?」
「俺、が…だけど」
「ソラだけじゃこれ以上ないほど心配だね」
「それには同意だねぇ。」
「えぇ!?何それどういう意味!お前らの方こそ俺の事見下しすぎだろ!」
「「声大きい」」
2人でぴしゃりと言い放てば、反論できないのかそそくさとカードキーをもって部屋を出ていくみやくん。それにつられてあいくんも部屋を後にする。俺の方をちらっと見て親指をぐっと立てるみやくん。
まるで気を遣ってあげましたとでも言いたげだったのはむかつくけど。それでも俺はそれに甘えて眠る黒斗の元に歩み寄った。
「熱出すなんて、いつぶり?ある意味やっと人間味出てきたねぇ。今まではどれだけ追い込んだって迷惑かけないようにって塞ぎ込んでたのに…。弱味を見せるなんて…ねぇ?」
起きてたらきっと怒られるねぇ。
なんて思いながら黒斗をそっと撫でてから俺も部屋を後にした。
::caught a cold.
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