彼が合宿に参加するとき
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-合宿-8日目-シャイニング事務所-
「って言った感じで、結構しっかり全員をまとめてましたよ。」
「案外…俺の息子やるでしょー?みんなから好かれる体質っていうのかな。それでいてみんなを平等に見てるから、距離を置かれやすい立場なんだよな。」
満足げに笑う咲を見て俺は何とも言えない気持ちになる。あくまでこの人の息子だし…うかつに同意もできない。かといって、否定してもお世辞なのは簡単にばれるだろうから気が進まない。
「で。シャイニーがここにアタシたちを呼んだ理由って何?」
今まで長々としていた雑談を打ち切り、林檎が社長と咲に向かって問いかける。確かに…なぜか事務所にあたりまえのようにいる咲も不思議だが、それを踏まえてここに俺たちが呼ばれた理由もわからない。
「ノンノーン、焦ってはいけません。YOUたちが思ったことを言っていたお陰でなんとなくぅ、Mr.黒斗の特徴がつかめまーした。」
「特徴…?」
「そーそー、俺も綾人もなんだかんだ黒斗とは一緒に暮らしてないからな。この3年のうちにどんな人間になっている…とかはこうして合宿してくれた2人が一番わかると思うのよ。」
3年のうちに…と言っても逆に俺たちは昔の黒斗を知らない。
ともあれ、何が気になったとか…それを言えばいいのであれば…
「あいつの目の事はどうしても不思議なんだが…あれは昔からか?」
「…あぁー、あの目ね。よく見えるようになったのは片目をなくしてからっぽいんだ。直接は話してくれないけど態度が変わったからよくわかる。」
咲が目を伏せて語ってくれたのは黒斗の昔話。ほとんど黒斗本人は忘れてしまっているらしい。始まりは3歳。咲の顔の広さで子供服の写真を撮ったのがデビューだという。もはや覚えてる覚えていないの領域ではないが、それが随分と好評だったらしく、年を重ねるごとに双子の仕事が増えていった。事務所は当初、母親が継ぐことが決まっていたところに所属していて、小学校2年の時、今黒斗が所属しているところに2人とも移動。黒斗と綾人はその時に瀬名泉に会ったらしい。綾人は泉を尊敬していたが黒斗はその頃泉ではなく1つ下の遊木真という奴がおどおどしていたのを見て、それからはしばらく目をかけていたらしい。
「じゃーあ、小さい頃はあんな性格じゃなかったってこと?もう少し、可愛い感じ?」
「うんうん、りんちゃんの言う通り。綾人も黒斗も2人ともとっても似てて、はしゃいでばっかりだったんだよ。」
「んじゃぁ綾人が小学校4年になるときに、この事務所に入って、それから黒斗は?」
「こちらの事務所に入ったとはいえMr.綾人の仕事にはMr.黒斗が不可欠でした。双子だからこそ美味しいというのがあったのでショウ」
「嶺二がなんかお兄さん的な存在で呼ばれて〜とか言ってたのはなんとなく覚えてる…な。あいつがまだ学生していた位か…」
「YES!あの頃すでにMr.黒斗は人間不信気味でしたネ」
そう言われたことで咲が苦笑いを浮かべる。自分の子供が人間不信だと言われたら確かにいい気分ではないだろう。
「んで、シャイニーの予想通り、黒斗くんはレイちゃんと仲良くなれたの?」
「もちろーん!仲良くというよりは、Mr.寿になついたという方が正しいでショウ!」
「なついた…?」
「そ、年齢的には綾人は兄と言えど双子だし、泉くんとは切磋琢磨する仲である同い年だし、真くんはむしろ守ってあげるって兄面してたし。甘えられる存在がいなかったからね。嶺二くんは良いお兄さんだったんだと思うよ。」
確かに…昔から気の利く嶺二の事だ。まだ10歳になる手前の双子を放っておけなかったんだろう。まぁ、お互いキッズからの芸歴だからと頼まれたってだけかもしれないが…
「中学になってからは本格的にアイドルみたいな活動が増えて、事務所が違うからって1年の限定で綾人と黒斗がユニットを組んだんだ。それがこの前のライブの時に披露した名前の。でもあの頃は自由だったし、そこまで売れる予定もなかった。そもそも事務所が違うから、シャイニーも力入れてなかったんでしょー。」
「Mr.咲はなんでもお見通しですネー。確かに売れっ子になる可能性はあってもMr.黒斗が別の事務所だった故に、力は入れませんでしたYO」
とは言え、さすが咲の息子なだけあって実力はあった。双子ユニットは瞬く間に人気になったけれど、条件は1年。その1年がくるとぱったりと活動を停止した。それぞれの事務所でまっとうに仕事をこなしていたある日、黒斗に事故が起きたらしい。それが、目を失った理由。
「黒斗はあまり思い出したくないからって他人に言いふらしたりしないけど。ここは大人の会だからね。俺は案外ペラペラしゃべっちゃうよ。」
「ちょっとぉ、黒斗くんがかわいそうじゃない?」
「知ってた方がいいと思って。綾人が黒斗に執着する理由もわかるし?」
そうして咲は、事故のことを詳しく説明してくれた。目を失った原因と綾人の執着心についても。親でもわからないのはその2人のそれぞれの力がなんなのかということだが。
咲はそれについて深くは考えず、うまいこと利用しなさいと言っただけらしい。まぁ咲らしいといえばらしい。
「それよりも、俺的には今の黒斗がアイドルとして、どうかなってことだな。嶺二くんに会ったことでいい影響があればいいんだけど。あとはあの子次第なんだよね。」
「咲ちゃんは何かしてあげないの?」
「うーん、親でありながら親らしいことは今までしてこなかったからね。母さんは良いけど父さんの言うことは聞きたくないって万年反抗期だから」
「そーれーにー。Mr.綾人アーンド黒斗は、上からの圧力が嫌いですからネ!たとえそれが、親であっても…」
「そうだね。黒斗は真くんを見てそう思ったし、綾人は泉くんを見てそう思ったらしい。泉くんはタフだから真くんみたいにならなかったけど、綾人はやっぱり良く思わなかったらしいね。上に立つ者は気を付けないとねぇ。シャイニー」
「NOOO!耳が痛いですネ!YOUも学院長として気を付けてくださーい」
「俺は逆に学院にいなさすぎなんだよなぁ…ちょっと顔出したら椚先生がいっつも怒鳴ってくるもん。」
「とにかく、俺たちはすでに合宿を抜けちまった身だ。今からどうするとか考えたってしょうがねぇだろ。」
ただの雑談もいいとこだ。
黒斗の実力は5日間みっちり見てきた。その能力もあったおかげなのか一癖あるあいつら4人を上手く誘導して、レッスンに参加させて、団体行動を取らせている。それが終わってからは1人で特別イベントの資料を睨んでは色々と確認してメモを取っていく。
更に、暇があれば曲作り。ホテルの従業員に挨拶まわり。一般客が来ないか細心の注意を常に払いながら全員を移動させたりと、常人には到底無理なスケジュールをこの二週間こなすのだろう。
「ねぇ、龍也。あやくん怖かった?」
「あ?いや…あいつは、なんか黒斗の奴隷みたいになってたな…」
「ど、奴隷…」
「なんでも言うこと聞いてて気持ち悪かったぞ。」
「そう…なの?うーん、あやくんがますますわからないわぁ…」
::It's complicated
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